封印の準備
転移魔法という便利な移動手段を手に入れたので、魔瘴石の封印に向かう事にした。
準備はリリアがカーラとするので、残りのメンバーは終わるまで待つ事になった。
「クリス達はリリアと色々話したのか?」
「そうですね、リリアさんの冒険譚や子供の頃の話を聞きました」
「冒険譚?」
「はい、世界中の遺跡や神殿を回って、忘れられた魔法などを研究していたようです」
「へぇ~ 今のクリスみたいな感じだな」
「いえ! 私なんて比べられる程の事をしていません!」
「そうか? 今はまだ自分の周りだけの調査になっているが、いずれは世界中を見て回るんだろ?」
「・・・そうですね! 今はまだですけど、いつかは必ず! ですね」
クリスの答えにアイシャは嬉しそうに微笑んでいた。
「それで・・・ レイ達とは・・?」
「色々と話を聞きましたよ」
「そうか・・・?」
「はい、私達は仲間で友達ですから!」
「うん、そうだな!」
クリスとアイシャは真実を知っても、今までと変わらずに接しているようだった。
まあ彼女達の性格なら心配無いと思っていたが、100%の確信が無かったのも事実だった。少しでも疑った自分が恥ずかしくなってくるな・・・。
「色々と話せて良かったな」
「はい! 皆さんの昔の話や、アキラさんと出会った時の話と、魔武器の話に、力を回復させる方法なんかを・・・・」
「そうか・・・ 力の回復方法か~ って! それって!」
「あっ! いえ! 何でも無いです! アキラさんが凄い元気とか、そんな事は聞いてませんから!」
「!?」
「ちょっとクリス様!」
「クリス様! それは内緒です!」
「え!? あ・・・」
話していた内容がエッチな事になりそうな事に気が付いたクリスはパニックを起こして、更にマズイ内容を口走った。
その内容に焦るアイシャと真っ赤になっているレイとアマネが、クリスを中心にワタワタとしていた。
俺も自分の夜の内容をクリスが知っていると思うと、物凄く恥ずかしくなってきた。
「みなさ~ん 準備できましたよ~ って、何してるんですか~?」
「どうしたんですか? みんな顔が真っ赤ですよ?」
恥ずかし過ぎてパニックになっている所に、準備を終えたリリアとカーラが入ってきた。
「はは~ん・・・ マスター、エッチな事は夜まで我慢しないとダメですよ」
「俺!?」
「あれ? 違いました?」
カーラは俺を原因と思ったようだった。クリスが聞いているのなら、もちろんカーラやアイシャにリリアも聞いていたのだろう・・・。
そりゃあ、夜は頑張るけど、昼間はそんな事はしないよ! 紳士だから! ・・・多分。
って、そんな事じゃ無くて!
「いい! 俺が悪くていいから! 準備は終わったんだよな?」
「はい~ 終わりました~」
「じゃ、じゃあ封印の説明をしてくれ」
「大丈夫ですか~? みなさん~?」
顔がまだ赤いクリスとアイシャとレイとアマネは、声を出さずに大きく何度も頷いていた・・・。
それを見たリリアは、訝しげな顔をしながらも説明を始めた。
「方法は簡単ですよ~ 魔瘴石に溜まっている瘴気を祓って~ 封印魔法を使って~ 楔を打って~ 地面に埋めます~」
本当に簡単だな・・・。
「それだけか・・・?」
「はい~」
「それは方法が簡単と言うより、説明が簡単になってないか?」
「そうですか~?」
仕方無いな・・・。
「・・・え~っと、瘴気ってどうやって祓うんだ?」
「それは~ 魔瘴石に近付くと~ 防衛機能で~ モンスターがいっぱい出てきます~ それを倒してください~」
なるほど。
「封印魔法は?」
「私が使います~」
ほうほう。
「楔って?」
「封印を強化する~ 魔法を埋め込んだ水晶です~」
そうなのか。
「それを?」
「五角形になるように~ 地面に刺します~」
結構大事な事だ・・・。
「で、後は地面を掘るのか?」
人力で?
「いえいえ~ 転移魔法の応用で~ 地下に転送しますよ~」
それを言って!
「・・・・・・・・一杯説明が出てきたが?」
「あらあら~ 不思議ですね~」
大丈夫かなこの娘は・・・。
「一日程時間が掛かると言っていましたが、封印魔法に時間が掛かるのですか?」
いつも間にか正気に戻っていたクリスが、リリアに質問をした。
「いえいえ~ 魔法はすぐにできますよ~ 時間が掛かるのは~ モンスター退治です~」
「そんなにモンスターが出るのですか?」
結構大変そうだな・・・
「私が~ 一人で封印した時に~ それぐらい掛かりました~」
「一人で、ですか!?」
「はい~ 途中で眠たくなって~ 寝てましたから~」
「あ・・・ そうですか・・・」
あまりの答えにクリスは、呆れたような驚いたような表情で答えに詰まってしまった。
それにしても、戦闘中に寝るのか? 結界石を使ったらできるのか? なんだか凄い事をやってる気がするのだが、賞賛をする気にならないのは俺だけでは無いはずだ。絶対・・・。
「じゃあ・・・ 準備が終わったなら、出発するか・・・」
「「「「はい・・・」」」」
「は~い」
「キュイ!」
それぞれの思いがこもった返事で、魔瘴石のある森へ向かって行った。




