魔武器②
食事を終えて少しの間ゆっくりした空気が流れていた。
流石に城に保管されていた食材は、栽培されていたハーブや一部の野菜以外は使い物にならなかった。そのため俺達が持っていた食材を調理した。
豪勢な料理では無く、家庭料理程度だったが、質の良いハーブを使用していたので美味しくいただく事ができた。
ただ少しクセの強いハーブがあり、人によっては好き嫌いがはっきり分かれそうな味付けの料理もあった。
現にカーラには合わなかったようだった。
「うっ・・・ ちょっと私には無理そうです・・・」
「そうですか~? 美味しいのに~」
「では、私のも食べてください・・・」
「いただきます~♪」
なんてやり取りがあったぐらいだ。
まったりとした時間が過ぎて、また真面目な話をする事にした。
「え~っと・・・ どこまで話しをしたんでしたっけ?」
「確か・・・ カーラさん達が封印された所ですね」
「そうそう! そうでしたね。それで私は魔武器を使える人を待っていて、アキラさんと出会った訳です・・・ 後は皆さんも知っている通りです」
「え? それだけ?」
「え? 他に何か?」
真面目な話はあっさりと終わってしまった・・・。
随分と端折った気がするが・・・。
「いや・・・ 何で封印されていたのに、カーラが外に居たとか、リリアが何でガーディアンに取り込まれたとか・・・」
「ああ・・・ そこですか・・・。それはリリアに聞いた方が、良いかもしれませんね」
「それでは~ 私が話しますね~・・・」
それはそれはゆっくりと事情を話すリリアだった。それを聞いていた俺達は長い長い時間を過ごした・・・。
話を纏めると・・・。
『冒険者兼学者として旅をしていたリリアは、途轍もなく強力な武器が存在する事を発見していた。そして大地を巡る魔力の流れに法則性を発見して、魔力を辿ったらこの魔女の城に辿り着いた。
この城を研究していく内に、ここに何かがあるのは分かったが、資格の無いリリアは魔杖の所に行く事ができなかった。
そこで、ここで見つけた黒水晶を核とした魔力を蓄える装置を造って、溜まった魔力で強引に封印の間へ侵入した。そこで魔杖を見つけたが資格の無いリリアは、手に入れる事ができなかった。
新しく魔術を開発して強引に封印を解こうとガーディアンにアクセスした。方法は自分の魂の一部をガーディアンに同化させて、機能を乗っ取り封印を解こうとしたのだが、防衛装置に引っ掛かり逆に身体ごと取り込まれてしまった。
取り込まれたリリアの意識は、初めて魔杖に人格が存在する事を知った。そこでリリアはカーラから知識を得て、脱出する術を開発していたが中々成功しなかった。
繰り返す内に数百年経ち、完成した術を試した所、何故かカーラだけが封印の外へ出る事ができた。
強引に封印を解く事を諦めたカーラとリリアは、魔武器を使える資格を持った人を探し出すために占い用の水晶を造り、冒険者を導く事にした。
そして、占いを続けていく内に資格を持った人が現れる事が分かり、会う確率の一番高い場所を特定して王都へ移った。』
という事らしい。
う~ん長い・・・。
本人の話は間延びした話し方なので、もっと長い・・・。
「なるほど・・・ 経緯は大体分かったが、リリアはどうして魔杖が分かったんだ? 他の武器も分かったのか?」
「私が~ 分かったのは~ カーラさんだけですよ~」
「そうなのか?」
「それはリリアが魔杖を使った方の子孫ですし、使う魔力の質がそっくりなので感じられたようです」
「え!? 子孫?」
「みたいですね~」
「リリアは知っていたのか?」
「はい~ お祖父ちゃんが~ 自慢してました~」
「祖父ちゃんか・・・ って事は代々魔法使いの家系とかなのか?」
「神殿の~ 神官とかしてました~」
「今も?」
「さあ~ どうなんでしょうね~? お兄ちゃんは~ 漁師になりたいって~ 言ってましたよ~? 妹は~ お饅頭屋さんになりたいって~ 言ってましたから~ もう違うかもしれませんね~」
「漁師に饅頭屋か・・・ それだったら分からないかもな・・・」
格式の高い家に生まれると、一般人に成りたくなってくるのかな? 隣の芝生は青いって事か・・・
「それにしても饅頭屋か・・・ もしかして水龍の神殿前の饅頭屋だったりしてな」
「私の実家は~ 水龍様を祭っていた神殿でしたよ~」
「そうなのか・・・ まあ今は確かめる事はできないから、いつか調べてみるか」
「お願いします~」
調べて分かる事かどうか分からないが、クリスにも手伝ったもらうか・・・。
それにしても先祖が使った武器と違う所の神官になったのか? 何か理由があったのだろうか? カーラは封印された時の事を覚えていないようだし、リリアに聞いても家の事はあまり詳しく無さそうだから、調べようが無さそうだな・・・。
「あの~ 私もリリアさんに聞きたい事があるのですが?」
「はい~ 何でしょうか~?」
「えっと・・・ ルソット大陸とリステリア大陸を結ぶ橋を造ったのは、リリアさんですか?」
「橋ですか~? たしか~ お手伝いしましたよ~」
「やはりそうだったのですね!」
クリスは目をキラキラ輝かせてリリアを見ていた。
そういえばリリア大橋を渡っていた時に、クリスからそんな話を聞いた気がするが・・・。
それからもクリスはその時の様子を色々と質問していく内に、夜が更けていった・・・。




