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魔杖カドゥケウス③

「クリス・・・ アイシャ・・・ 今から俺達は全力で攻撃に転じるから、二人は全力で防御をして欲しい」

「分かりました!」

「任せてください!」

「キュイ!」

「ありがとう・・・」


「レイ、アマネ頼む」

 俺の一言で二人は剣に手を触れて光に包まれた・・・。

 (あか)(あお)の美しい光は広間を覆いつくし幻想的な空間と化した。

 光が収まると、レイとアマネの姿は無く、俺の手に炎の揺らめきの様な、紅い刀身をした『魔剣(まけん)レーヴァテイン』と、まるで清流の様な清らかさを表し、透き通った刀身をした『神刀(しんとう)アマノムラクモノツルギ』が握られていた。


「アキラさん・・・ その武器は・・・? 二人は・・・」

「・・・あとで話すよ」

「・・・はい」

 クリスとアイシャは呆然としているが、カーラは満足そうな笑みを浮かべていた。


「攻撃がくるぞ!」

「「は はい!」」

 気が逸れていたクリスとアイシャに、気合を入れるために強めに声を掛ける。

 二人はハッとして身構える。

 その直後に、無数の炎や氷の槍が飛んできた。

 俺は右手に持った魔剣レーヴァテインを振り、全て撃ち落とす。

 その後も間髪を入れずに、次々と魔法が飛んでくる。

 全体攻撃魔法は自分に飛んでくる物しか解除できないので、クリスとアイシャには耐えてもらうしかない。ただ、マコちゃんの防御結界が割と強力なようで、全て防御できているようだった。


『ご主人様、きます!』

 レイの声が頭に響く、目の前には先ほどの嫌な思いをさせられた黒い球体が出現していた。

 確かに嫌な思い出だったが、まさかトラウマになっていたとは思わなかった。

 まあ確かにしばらくは夢に見る事があったが、かなり脚色されていた気がする・・・ 多分それが魔法の効果なのだろう。

 ショックで正常な判断力を無くして、幻覚と気付かせずに現実世界の動きを封じる・・・ 恐ろしい魔法だな・・・。


 俺は魔法が完成される前に、魔剣で一閃して解除する。

 もちろん、一応目線は下げておく事を忘れない・・・。


 嫌な魔法を斬り抜けて魔女に接近して行くと、俺の前には巨大な竜巻が現れた。

 これは先ほどの『カオストルネード』だった。

 弱い魔法では埒が明かないと、殲滅魔法を使ってきたようだが、俺は竜巻の淵へと速度を緩めずに突き進む。

 手に持った魔剣を一閃すると巨大な竜巻は霧散して消えていった。

 そして、次の魔法が来る前に魔剣レーヴァテインの全力の収束された全てを焼き尽くす炎を放つ。


 ポヒュ・・・・


 あっさりと防御障壁に遮られてしまった。

 カーラはほぼ(・・)完全と言っていたが、これを防ぐなら完全(・・)だろ・・・。

 だが、接近してレーヴァテインの刃で斬り付ければ勝機はある。

 魔女に更に接近するが、魔法の攻撃も苛烈を極める。

 正に魔法の弾幕だった・・・。

 全てを防げる訳ではないので、多少のダメージを覚悟で進む。

 が、とても痛い・・・。


 痛みを我慢しながら進み、弾幕を抜ける・・・。

 魔女は戦士では無いので俺の動きには付いてこれない・・・。

 最初に魔剣レーヴァテインを振り下ろす!


 バリィィィィィン・・・・


 ギィン!


 炎を纏わない紅く揺らめく刃を振り下ろして、魔法障壁を破壊するが物理障壁は破壊できなかった。

 間髪を入れずに、清流の様に透き通った刃に目に見えぬ程の水流を纏わせて、切れ味を極限まで高めた神刀アマノムラクモノツルギを振り下ろす・・・。


 キィィィン・・・・


 物理障壁にぶつかった刃は、ほとんど抵抗無く切り裂いた。

 魔女の身体ごと・・・。


『見事だ・・・』


 魔女の声が聞こえ、元の場所で石像に戻っていた。

 そして、俺の目の前には1本の杖が浮かんでいた。

魔杖(まじょう)カドゥケウス』だった・・・。

 ただ、元の豪華な装飾を施された物では無く、紫色の魔石が嵌め込まれた珍しい杖といった姿をしていた。

 戦闘が終わり、魔剣と神刀と同化していたレイとアマネが分離する。

 俺は二人の分離を確認した後に、二人に魔剣と神刀を渡し、目の前にある杖を持つ。



 パチパチパチパチ・・・・・


 拍手の音が響く・・・

 もちろんしているのは・・・


「流石アキラさんですね♪ 私の見込んだ方です♪」

「カーラさん・・・ いや、カドゥケウスって言った方がいいのか?」

「お好きな方でよろしいですよ♪ 貴方は私のマスターになったのですから♪」

「やっぱり、そういう事だったんだな?」

「その通りです♪ それでは失礼して・・・」

 カーラはそう言って俺が持っていた杖に触れる・・・

 すると、紫紺の光が部屋を包み輝く・・・。

 光が収まった後には、漆の様な深い黒色の杖に紫紺の宝玉が嵌り、金色の装飾が施された神秘的でさえある杖になった。

 そして、俺の手には『魔杖(まじょう)カドゥケウス』が確かに握られていた。


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