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魔女の城③

残る場所は地下室と中庭なのだが、地下室は最後にして中庭に向かう事にする。

ただ、中庭に行く前に食堂に行って、あるアイテムを手に入れてから行かないと、かなり危険な事になる。

食堂に近付いてくると魔動コックが出現するようになってきた。魔動コックの武器は大きな包丁なので、攻撃速度はメイドと執事に比べれば遅い。ただ、HPと防御力が高いので攻撃は喰らわないが、こっちの攻撃回数が増えてしまう。

食堂に到着し、更に奥にある調理場へ向かう。そこでは確か固定エンカウントがあったはずだが・・・。


「あ・・・ いた」

「え? 何がですか?」

「ああ、中ボスだな」

「では倒しましょう」

食堂から調理場への扉を開けると中には、通常のコックより二回りほど大きく、武器は日本刀の鍔の無い刃物を持っていた。確か設定では、マグロを捌く包丁らしいが・・・ 日本刀だよな・・・ アレ・・・。

某有名泥棒三世の仲間の剣士が使用していた斬鉄剣のように見える。

そして、そのモンスターの名前は『魔動コック長(改)』となっていた。


「ん? (改)ってなんだ?」

「ご主人様、何か言いました?」

「いや、何でも無い」

「そうですか?」

予想通りモンスターが居たのだが、予定とは違う名前で思わず声に出てしまったようだ。

まあ、持っている武器は同じようだし能力が強化されている程度だろう・・・。


「よし、行くぞ!」

「「はい!」」

俺の号令に全員が部屋に入って戦闘に備える。

俺達の侵入に気付いたコック長は腰に差してあった包丁を2本構えた。日本刀だから2本・・・ いや、包丁だから! 包丁!


本来は1本の包丁だったはずだが、俺の見えない方にもう1本あったようだ。これだから(改)になっていたのだろう・・・。

そして、戦闘が始まると応援として魔動コックを4匹呼び出してきた。

調理場は結構な広さがあり、戦闘をするのに問題なさそうだ。それと何度か戦闘をして気付いたのだが、俺達とモンスターの魔法や攻撃が、城の壁や調度品などに当たっても壊れる事がなかった。特殊な魔法がかかっているのか、ご都合設定なのか判らないが、城が炎上する危険が無いので、割と気にせずに戦闘できるのがありがたい。


「俺がボスと戦うから、他を皆で頼む!」

「「分かりました!」」

コック長に向かって距離を詰めるが、コック長の横にいた2匹も俺を標的にしたようだった。コック長が2本の包丁を振り回して攻撃してくるタイミングで、魔動コックが魔法を使ってきた。


「アースケージ ×2」

魔法を使われる寸前に、魔動コック2匹を土の檻へ閉じ込める。


ドォーン! という音が檻の中で響いて檻が壊れるが、中から出てきたのは黒焦げになってかなりのダメージを負った魔動コックだった。どうやら、自分の放った魔法が密閉された檻の内部で破裂して自爆したようだった。


「アイスランス ×2」

クリスの放った魔法が動きの鈍った魔動コックに止めを刺す。

ナイスフォローだ!

クリスにアイコンタクトで礼を言うが、なんとなく伝わった気がする。


俺はコック長を倒すために視線を戻すと、コック長の包丁がクロスを描いていた。

『クロススラッシュ』だ!

二刀流のスキルでダメージが3倍になる。


俺は腰に差してある居合刀を握り、超神速の居合抜きをイメージして発動する。

コック長より後に使ったスキルだったが、俺の剣速の方が遥かに早く、コック長の腕を2本共切り落とす。そして一度納刀し再度、居合抜きを放ち核を破壊した。


俺がコック長を倒したとほぼ同時ぐらいに、残った魔動コックも倒したようだった。



「あれ?」

「どうかしました?」

「いや・・・ 包丁が残ったのだが・・・」

モンスターを全滅させて、消えていったが包丁2本が残されていた。

部位破壊の報酬? いやいやそんな設定は無かったはずだ。ゲームが違ってしまう・・・。


「え~っと・・・ 呪われては無さそうだが・・・ あ~・・・」

俺の手に握られている包丁は『備前びぜんマグロふね』だった。


「もう1本は・・・?」

こっちは『マグロ切安綱』だった。


「ネタ武器か? どっかで聞いた事があるような名前のようだが・・・」

「武器の名前が判るのですか?」

「え!? あ~! そう! ここに書いてあるからな!」

「あ! 本当ですね~ 『ビゼンマグロフネ』と『マグロキリヤスツナ』と少し読みにくいですが書いてありますね」

刀身の根元に書いてあったのを、偶然見つけて何とか誤魔化せたようだ。別にばれても良い気がするが、今更言う事でも無い気もする。


「その包丁は・・・ 確か・・・」

「カーラさん、何か心当たりが?」

「はい。確か今でも名刀と云われている『備前長船びぜんおさふね』と『童子切安綱どうじきりやすつな』ですが、それを作った名工二人が大層な寿司好きで、流しの寿司職人の握ったマグロ寿司の美味しさに衝撃を受けて、名刀に匹敵する包丁を作ってプレゼントしたそうです。そしてしばらく経ってから、その職人と包丁の居所は分からなくなったと云われています」

「なるほど・・・」

名刀を作った名工が作った包丁か・・・ いくら寿司が好きで、マグロが美味いからって、そんな事で包丁を作るのか? その時は迷工めいこうだったんじゃ・・・。

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