魔女の城①
「カ、カーラさん? なな、何を言っているのですか? 責任を取ってとは?」
「新しい就職先を紹介してもらうだけですよ!」
アイシャの明らかに動揺した質問にカーラはしれっと返事をする。
「まあ、そっちの方向で責任を取って、私を養ってくれてもいいですよ♪」
「ソッチもコッチもありません! 就職先なら研究所で働けばいいのではないですか!?」
「あ~ それもそうですね♪ うっかりしてました」
「しっかりしてください・・・」
「それにしても・・・ アイシャさんはカワイイですね♪」
「!?」
怒って顔が少し赤みが掛かっていたアイシャだったが、カーラに指摘されると真っ赤になって手で顔を覆っていた。そして、その様子を見ていたクリスは、アイシャの微笑ましい姿を見てニヤニヤしている・・・。
「カーラさん、アイシャも落ち着いてくれ・・・。カーラさんの就職先は、ここを攻略してから考えよう」
このままだと、城の結婚騒ぎの再来となりそうなので、ここで制止しておいた方が良いだろう。
「もう・・・ アキラさんは、冷めてますね」
「俺に関係無い話ならいいんですが、最近同じような事で疲れましたからね・・・」
「私もそれを見たかったですね~」
「勘弁してください・・・」
もしかしてカーラが見たいから、アイシャを煽ったのか?
「アイシャ大丈夫か?」
「は はい大丈夫です!」
何とか顔色も少し落ち着いてきたようだな。
もう少し休憩してから、出発するか。
「とりあえず、ここでは役に立ちそうなアイテムと装備と魔法植物を取って行こうと思う。ただ、ここのモンスターはかなり強敵だから、注意してくれ」
ここに出現するモンスターは少し変わっていて、魔女が造ったと言われている、魔力を動力にして動いている人形タイプだ。魔力を使っているので、全てのモンスターが魔法を使えて、しかも武器も使いこなす万能型になっている。出現するのは『魔動メイド』『魔動執事』『魔動庭師』『魔動コック』『魔動犬』の5種類となっている。
魔動メイドは、女性タイプで武器は銀のナイフを投げてくる。まるでどこかの瀟洒なメイドのようだ。時間操作はできないが、上級の氷魔法を使ってくる。
魔動執事は、男性タイプで武器は銀のレイピアを持っており、上級雷魔法で攻撃してくる。あくまで人形の執事で某黒い執事では無い。
魔動庭師は、男性タイプで武器は大きな鋏を持っている。まるで某ゲームのシ○ーマンのようだ。上級の土魔法を使う。
魔動コックは、男性タイプで武器は肉切り包丁を持っている。ホラーの定番か? 魔法は上級火魔法を使う。
魔動犬は素早い動きと鋭い牙で攻撃してくる。魔法は状態強化で自分だけでは無く、周囲のモンスターも強化する。某ゾンビゲームのように、窓から入って来て驚かす事はしない。
ここに出現するのは全て人形なので、体内にある核を壊さない限り、倒す事ができない。人形なので痛みが無く、攻撃を当てても怯まないので、一気に勝負を着けなければならない。
「それじゃあ、行こうか!」
「「はい!」」
出現するモンスターの情報などを全員に伝えて出発する。
現在は門をくぐった所にいるから、城の中に入って宝のある部屋へ向かう。
城の入口となる大きな扉を開けて、エントランスホールに入る。
王都ハルツェニアの王城と遜色ないほどの見事な内装で、埃などは無くきちんと手入れが行き届いているようだった。恐らくメイドと執事が手入れをしているのだろう。
エントランスホールを中央付近まで進むと、前方の通路に転送魔法陣が現れる。
転送されて来たのは、魔動メイド3体と魔動執事2体だった。
ここはゲームでも固定エンカウントだったので、もしかしたらと思ったが、そこは変わっていないようだった。
ただ、出現したメイドと執事はすぐに襲って来ずに、俺達を一瞥した後に優雅に一礼をし、武器を構えた。そんな演出はゲームでは無かったので、面を喰らって反応が遅れてしまったが、俺達も戦闘態勢を取った。俺達の体勢が整ったのを確認すると、メイド2体がナイフを投げる。残る1体が魔法を使う。執事2体は魔法を使うようだった。しかし俺達を待っていたように見えたが、人形にしては紳士的な対応だった気がする・・・ 気のせいかな?
戦闘では飛んできたナイフを俺とアマネが切り落として、接近戦へ持ち込むために近付く。魔法攻撃はレイに魔剣を渡してあるので、クリスとアイシャとカーラに直撃させないように護衛を頼んでいる。クリスとアイシャには最初の内は戦闘に参加させない。モンスターとの力量差が分からないまま戦って死んでしまっては、目も当てられない事になってしまう。そのため俺とアマネが二人の役割を再現して、戦えそうなら戦闘に参加してもらう。無理そうなら俺達三人でモンスターを倒していくようにする。
俺が魔法でメイドと執事を牽制するが、痛みも感じないから殆ど牽制になっていない。ファイアランスを3本をメイドに向けて放つ。2体には左胸に命中し穴を空け、1体は頭を吹き飛ばした。胸に当たった2体はその場に崩れ落ちるが、頭を吹き飛ばされたメイドはナイフを俺に投げつけてきた。かなりホラー感がする光景だ・・・。
すぐに次のファイアランスを放ってホラー人形を倒して、アマネのフォローに回る。
アマネは執事の魔法を躱して、剣で執事の左胸を貫いていた。1体をを倒して残る1体も同じ要領で倒してしまった。
この戦い方は二人には少しキツイかもしれないが、何となく戦い方を分かってもらえただろうか・・・。
「まあ、こんな感じだが、大丈夫そうか?」
「たぶん・・・ 大丈夫だと思います」
「お任せください。クリス様は私が守ります」
「お二人の勇姿を見ています!」
いや・・・ カーラには聞いていないのだが・・・
「レイとアマネにフォローに回ってもらうか・・・ 俺も危なくならないように気を付けるよ」
「すみません。お願いします」
慎重にゆっくりと慣らしながら進む事にした。レベルが上がれば大丈夫だろう・・・。ってレベルが上がるって、この世界ではどうなっているのだろう? ファンファーレでも鳴るのか? 謎だ・・・。




