メイドさん
「よく来てくれたルーシーにミラ。今日からよろしく頼む」
「はい。ライアス様」
「アキラ殿。彼女達はこの国でも一流のメイドだ。冒険に行っている間の管理は任せておいて問題ない」
「そのようですね・・・ 彼女達の雰囲気が違いますからね」
「お褒めにあずかり光栄です。私達二人とも家事スキルは全て習得しておりまして、ミラは栽培スキルの半分ほどで私は全て習得しております」
「へぇ~ それは凄いな~ その若さでスキルマスターか・・・」
「それはアキラ殿も同じではないか?」
「あぁ~~・・・ それもそうですね・・・」
俺のはリアルマネーの力なのだが・・・ 彼女達は実力なのだろう・・・ 何だか眩しくて直視できないよ!
「ん? 栽培スキルを習得しているという事は、魔法植物とかも栽培できるんだよな?」
「はい。マンドラゴラの栽培も可能です」
「おぉ~ それは、助かるな。材料を揃えたら、お願いしようかな」
「はい。お任せください」
魔法植物の定番であるマンドラゴラは、引き抜いた時に恐ろしい叫び声をあげる植物で、その声を聞いた人を絶命させてしまう凶悪な植物だ。だが、この世界ではそこまでの凶悪さは無く、叫びを聞いた人を気絶させる程度になっている。しかし、街中で栽培するにしては迷惑極まりない植物なのは変わり無い。そこで、マンドラゴラ栽培スキルが必要になってくる。引き抜く前に特殊な薬品を掛けるとマンドラゴラが眠った状態で、引き抜く事ができる。目覚めの薬品を掛けるまで眠った状態なので、そのまま加工に使用できる。
その特殊な薬品を調合できるのが、栽培スキルを習得した使用人となっている。
ゲームのプレイヤーは栽培スキルを習得できず、雇用した使用人を教育して習得させるか、スキル持ちを雇う必要がある。ただ、使用人の教育にも雇用にもかなりのお金が掛かり、毎月の給料も払わなければならない。なのでゲーム後半ぐらいにならないとお金が不足して路頭に迷う事になってしまう。
マンドラゴラは上級の各魔法薬の素材になるので生産が安定すると、戦闘に有利になる。しかも、高値で売却できるので金銭面でも活躍できる。ただ、栽培するにはマンドラゴラを手に入れて株分けをして増やさないといけないため、どこかで調達しなければならないが、次回攻略予定の魔女の城には魔法植物の畑があるのでそこで入手するのが手っ取り早い。
「アキラ様、お客様がお見えです」
「え?」
ルーシーとミラと話していると、玄関の方に誰かが立っていた。
「アキラさん、お引っ越しお疲れ様です」
「お引っ越し、おめでとうございます」
「キュイ!」
「あぁ、よく来たな。調査の予定は決まったのか?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、それは良かったな」
「クリス様、アイシャ様ようこそお越しいただきました」
「ルーシーさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。ここでお話するのも良いのですが、お茶を煎れてまいりますのでリビングでお待ちください」
「それもそうだな・・・ ここは玄関だしな・・・」
「・・・・お姉さま、ミラのお手伝いをお願いしてもよろしいですか?」
「え!?」
ルーシーがクリス達の後ろへ声を掛けると、サーラがスッ・・・ と現れた。
でた! くノ一。しかも、ルーシーはサーラが居るのが分かっていたようだったが、もしかしてこの娘もくノ一なのか?
「流石、最強のメイドですね!」
クリスの言葉にライアスとアイシャが頷き、サーラは満面の笑みを浮かべていた。妹が褒められて嬉しいのかな?
「アキラさん、お手伝いさせていただきます」
「ああ、頼むよ」
サーラはミラと共にキッチンへ向かい、ルーシーがリビングへと案内してくれた。まあ、案内と言ってもすぐそこの部屋なのだが・・・。
リビングに入って少しすると、サーラとミラがお茶を煎れてくれた。
しかし、サーラとルーシーが並ぶと、どっちがどっちか殆ど分からない・・・。
「それで、調査の予定はどうなったんだ?」
「今日から準備を整えて、一週間後に始めます。なので、魔女の城には明日か明後日には、出発したいのですが・・・ よろしいですか?」
「俺は別に大丈夫だが、クリス達の準備が要るんじゃないか?」
「私達も大丈夫です。いつでも旅に出れる準備はしてありますから」
いつでも旅って・・・ 確か王女だったよな? 大丈夫かこの国は・・・。
しかし、王子も今旅に出ているらしいし、旅好き一家なのか?
「カーラさんも今日会いましたが、いつでも良いそうです」
「そうか、じゃあ明日の正午に出発するか。時間もあまり無いし、少し遠いから馬車の手配をした方が良さそうだな」
「そうですね、今回は馬車の方が良さそうですね」
「では、私が手配をしてきます」
「ああ、頼むよ」
ミラは馬車の手配のために外へ出て行った。
「ん~・・・ 明日出発だったら、今日はここへ泊っていったらどうだろうか?」
「それは良いですね。ご主人様!」
「そうですね!」
俺の提案にレイとアマネが賛同してくれる。
「アキラさん、良いんですか?」
「ああ、全然大丈夫だ。この家は広いから人が多い方が賑やかでいいだろう。ライアスさんもミラルダさんとマリアと一緒にどうですか?」
「そうさせてもらうか。では、二人を呼んでくるとするか。また夕方にお邪魔させてもらうよ」
そう言ってライアスは外へ出て行った。
「カーラさんも呼んだ方が良さそうだな」
「そうですね。まだ研究所に居るはずですので、呼びに行ってきましょうか?」
「いえ、クリス様。私が行ってきます」
クリスが呼びに行くのをアイシャが止める。まあ、流石に王女を使いっ走りにできないからな。
チリリーン・・・
玄関から来客を告げる呼び鈴の音が鳴った。
誰だろう?
「すみません、ここはアキラさんのお宅ですか?」
「はい、そうです」
対応に出ていたルーシーが誰かと話しているようだった。
「アキラ様、カーラ様がいらっしゃいました」
「え? カーラさんが? ・・・通してくれ」
「はい」
リビングに入ってきたのは確かにカーラだった。占いをしていた時と同じ魔法使い風の恰好をしていた。
「カーラさん、丁度良かった。今から呼びに行こうとしていたんですよ」
「やはりそうでしたか! そんな気がしたんですよ!」
「それも占いで?」
「いえ、アキラさんの家が近くと聞いていたので、少し挨拶をしようと入ったのですが、良いタイミングでしたね」
・・・・・それっぽいフリをして、ただ寄っただけとは・・・ 本当に占い師か?
「え~と、明日の正午に魔女の城へ向かう事になったから、今日はここに泊まっていってはどうかと思って・・・」
「え! いいんですか?」
「いいですよ。明日の準備を整えてから、夕方にもう一度きてください」
「いえ、このままで大丈夫です。いつでも旅に出る準備はしてありますから」
おぅ・・・ どこかで聞いたセリフだな・・・。そういうのが流行りなのか?
「アキラさん、私達は明日の装備を城へ取りに行きますので、また夕方にお邪魔させてもらいます」
「ああ、忘れ物が無いようにな」
「子供では無いので大丈夫ですよ」
クリスが笑いながら返事をして、アイシャと共に部屋を出て行った。サーラも居なくなったから一緒に行ったのだろう・・・。一応、護衛っぽいしな。
「カーラさんはここでゆっくりくつろいでくれ」
「えっと、少しお庭を見させてもらっていいですか?」
「庭? 別に良いけど。何も無いと思いますが・・・」
「いえ、色々と面白そうなのが生えてましたから。それでは失礼します」
そう言ってカーラも出て行った。
「アキラ様、私も夕食の準備をしますので失礼します。何か御用があればお申し付けください」
「あっ はい」
ルーシーも出て行った。部屋の外でミラと話していたので、彼女も戻ってきたようだ。
「何だか自分の家と言われても、この豪華な感じは落ち着かないな・・・」
「そうですね・・・」
「はい・・・」
俺とレイとアマネの三人になって、思わずつぶやいてしまったが、二人も同じ感想だった。
それはそうだろう、別に金持ちの生活をするつもりが無い人間が、貴族のように暮らせと言われても無理だろう・・・・。それにこの生活に慣れると、後々苦労しそうな気がする。
落ち着かない三人は時間を潰すために、家の中を見て回ったり、庭に出てカーラの様子を見たりしていた。
カーラはただの雑草にしか見えない草を見て「なるほど・・・」とかつぶやいていた。
そうしていると、クリス達がやって来て夕食の時間になったので食事を取った。
料理はどれも美味しく皆が舌鼓を打っていた。ライアスは昨日酔いつぶれていたので、ミラルダから禁酒を言い渡されていたが、それは仕方が無い。俺は料理に合わせて少しだけにしておいた。
食事が終わり、夜が深まってくるとそれぞれが、自分の部屋へと向かった。全員が部屋に行った後に、俺達三人が寝室へ行く。
そして、この家で初めての、夜の行為を楽しんだ。




