新居
今回は迷わずに元俺の家にたどり着いた。
もう貰ったから、元ではなく俺の家かな? どっちでもいいか・・・。
家の前に来ると、家具の搬入が終わったのだろうか、人の姿が見えなかった。
玄関の方へ行くと建物の中でライアスが商人らしき男と話していた。
「ライアスさん、こんにちは」
「こんにちはアキラ殿。丁度良かった。今、家具の搬入が終わったところだ」
「あなたがアキラ様ですね。私はこの屋敷の管理を任されている『イエーガ』です。お見知りおきを」
「よろしくお願いします」
「では、イエーガ。アキラ殿達も来たことだし、案内を頼めるか?」
「畏まりました。どうぞ、こちらへ」
そう言ってイエーガが先頭で歩き出す。
俺は前世? 強くてニューゲーム前? に住んでいたから、別に必要ないのだがそんな事を説明するのも面倒だから、素直について行った。
「このエントランスホールの正面の扉がリビングとなっております。お客様がお見えの時は応接室としてもお使いになれます」
「ほぉ~・・・ なかなか立派だな」
「立派ですね~」
「豪華ですね~」
「なかなかいい物があるな」
部屋を覗くと高そうなソファやテーブルにシャンデリアなどが設置されていた。テレビのお金持ちの豪邸でしか見た事無いような家具が置いてあった。
なんだか豪華過ぎて、このリビングではくつろげない気がする・・・。
「次は館の右側のお部屋をご案内します」
そう言って、リビング前にある館の右側へ延びる廊下を歩く。
「この廊下の左側のお部屋は、奥から収納部屋と使用人室と書斎となっております。そして、右側にはダイニングルームがあり、奥はキッチンとなっております」
収納部屋には棚などが置いてあり、使用人部屋にはベッドが二つとタンスと棚があった。
書斎には本棚と机があったが、本は無かった。自分の好きな本を買ってくれという事なのだろう。マンガとかラノベとか薄い本とか置くかな・・・。いや・・・ 人に見られる危険があるから無難な本にしておこうか・・・。
クリスやアイシャが本を見て、蔑みの目で見られるのが怖いからな・・・。俺はそんな趣味は無いので、ご褒美にならないし・・・。
ダイニングはかなり広くなっていて、大きなテーブルが一つとその周りには椅子が並べられており、このテーブルセットも豪華な物だった。
テーブルの上には花が飾られており、壁には絵画も飾られていた。この内装を見て、ここは俺が住んでいた家では無く、完全に貴族が暮らす館の内装になっていたと気付いた。
キッチンには食器や鍋などが揃っているようだが、きっと高いのだろう・・・ 詳しくないからよく分からないけど・・・。
「なかなかいい感じではないかなアキラ殿?」
「そうですか? 何だか広すぎて落ち着かない気がするんですけど・・・」
「そうですね・・・ 私達は三人ですからね」
「どなたかをお招きしては、どうでしょうか?」
「それもそうだな・・・ って、よく考えたら大体は冒険に行ってるから、あんまりこの家に居ないんだよな~・・・」
「ま まあ、その事は後で考えて欲しいな・・・」
「そうですね・・・」
ゲームの世界と違って、今いる世界はリアルと同じ時間が経っている。なので移動に時間が掛かるからここを拠点にし辛いんだよな・・・。
「・・・・次の部屋をご案内してもよろしいでしょうか?」
「あ! すみません。お願いします」
その場の空気を察したイエーガは、少し遠慮気味に聞いてきた。
「続きまして、館の左側に向かいましょうか」
そう言ってエントランスホールから左側へ向かった。
「こちらの廊下の左側手前に、地下への階段があります。まずはそちらへ行きましょう」
地下への階段を降りて行くとダイニングと同じくらいの広さの部屋があった。壁際には収納BOXが置いてあった。パッと見では某クラフトゲームの倉庫のようだった。
「このBOXの中には、見た目以上の収納力がありますのでお使いください」
冒険者ギルドで貰える四次元袋の箱版だな!
「それと、この地下室はワインの保存にも向いていますので、お試しください」
「ワインセラーか・・・ それもいいな! そのうち買ってくるか!」
「私は、あまり飲めないですが・・・」
「私がお付き合いします」
「少しでもいいから、皆で楽しく飲もうか?」
「「はい!」」
これでワインを買う事が決まったようだ。
「それでは1階へ戻りましょうか」
1階へ戻って案内を再開した。
「この地下への階段の横がトイレとなっています。そして廊下の突き当たりを右へ行きますとお風呂場となっています。お風呂場の手前に2階への階段があります」
風呂を見に行くと旅館のような大きな湯船があって、のびのび入れそうだった。これなら三人どころかもっと大人数でも入れそうだ。
次は2階の説明で、メインのベッドルームが一番奥の右側にあり、他にゲストルームが6部屋もあった。
「ご案内は以上になります。基本的に改築以外は連絡の必要はありませんので、ガーデニングなどもご自由にお楽しみください」
「判りました。ありがとうございます」
イエーガは案内を終えて帰っていった。
「後はこの家の世話をする人を頼んでいるので、もうすぐ来るはずだが・・・」
「ライアス様、お呼びでしょうか?」
声が聞えた方を見ると、エントランスホールに二人のメイドがいつの間にか立っていた。
その内の一人には見覚えがあった。
「あれ? サーラさん?」
「いえ、私はサーラの双子の妹で『ルーシー』と言います。そして彼女が私のサポートをしてくれる『ミラ』です。よろしくお願いします、アキラ様、レイ様、アマネ様」
「よろしくお願いします」
それにしてもよく似ているな。並んでいても見分けが付かないんじゃないだろうか・・・・。




