宴のあと
空が白み始める時間に目が覚める。
昨日はなんだか、精神的に疲れてしまったので、部屋に案内されてすぐに眠りについた。
そういえばクラウスに、暗殺されに来てくれと呼び出されていたが、すっかり忘れていたな。もちろん覚えていても行かないが・・・。
一通りの身支度を整えて部屋を出る事にした。
今日は燕尾服では無くいつもの冒険者の恰好だ。
まだレイ達が起きているか分からないが、そこらへんにいるメイドさんに聞いたら教えてくれるだろう。
「アキラ様、おはようございます」
「おはようございます。レイとアマネはもう起きていますか?」
「はい。先ほどお目覚めになって、今はラウンジにて皆様とお話をされています。どうぞこちらへ」
メイドさんに案内されてラウンジへ向かう。
「こちらです」
「ありがとう」
メイドさんにお礼を言って中に入ると、レイとアマネとミラルダとマリアとクリスとアイシャとマコちゃんがいた。
「おはようございます」
「おはようございます、ご主人様!」
「主様、おはようございます」
「アキラさん、おはようございます」
「キュイ」
「おはようございます。アキラさん」
「アキラ殿、おはようございます」
「お兄ちゃん、おはようございます」
「ライアスさんは、まだお休み中ですか?」
「そうなのお兄ちゃん。昨日はお酒臭くて大変だったの」
「そうか・・・ それは大変だったね~」
マリアが素直な感想を言ってくれる。昨日は酔いつぶれていたからな~・・・・。
「それなら、もう一人は・・・」
「同じですね・・・」
「そうか・・・」
ライアスと一緒に酔いつぶれたクラウスの事を言おうとして、クリスの方を向いたら、状態は一緒のようだった。
「まあ、酔っぱらいの事は放って置いて、今日は何をするかな・・・」
「ライアスからの言伝がありますが、よろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「アキラ殿にプレゼントした家の家具が今日の午前中に搬入が完了する予定ですので、午後から一度見に行ってはどうかと言っていました」
「そうですね・・・ そうしますか。クリスとアイシャはどうするんだ?」
「私達は研究所に行って、四神の神殿の調査予定などを聞いてきます。まだ詳しい事は決まっていないと思いますが・・・」
「そういえば・・・、アイシャが言っていた『魔女の城』の探索はどうするんだ?」
「えっと・・・ その・・・」
「アイシャ? そんな事をアキラさんに頼んでいたのですか?」
「すみません・・・ アキラさん達となら探索ができると思い・・・」
「まあ、まあ、クリスは早く強くなってアイシャを安心させたいだろ? あそこなら強力な装備や新しい魔法もあるかもしれないから、行っておいて損は無いと思うぞ?」
「そう・・・ ですね! 早く安心してもらって、アイシャの婚活をしないとダメですからね♪」
「ク クリス様! アキラさん! そ そんなつもりでお願いした訳では無いですからね!」
「判ってる、判ってる、冗談だよ。本当はアイシャのクリスを心配する心に協力したいんだよ」
「あ・・・ アキラさん・・・ なんだか少し恥ずかしいです・・・」
アイシャは俺の言葉に顔を赤らめて少しうつむいている。クリスはそれを見てニヤニヤしていた。
「あっ! そういば、カーラが一緒に行きたいと言っていたんだが、聞いているか?」
「え! カーラさんが? いえ、何も聞いていませんが・・・」
「そうなのか? アイシャに聞いてみると言っていたのだが・・・」
「そうですか・・・、もしかしたら研究所で会うかもしれませんので、確認してみます。アキラさんは大丈夫なのですか?」
「俺は大丈夫だ。アイシャはいいのか?」
「私も大丈夫です」
「そうか、じゃあ聞いてみてくれ」
「わかりました」
そんな話をしていると、朝食の準備ができたと言われたので、皆で朝食を食べに行った。
朝食を食べる部屋にはクラウスとライアスがすでにいたが、二人とも心なしか顔色が青い気がした。
俺達は世間話をしながら食事をしていたが、体調のすぐれない二人はチビチビ食べては溜め息をつくときがあった。完全に二日酔い状態だな・・・。
この二人を見て改めて思う・・・ 酒は飲んでも、飲まれるな!
朝食を終えた俺達は、クリス達が研究所へ向かう時間に合わせて街へ出る事にした。
ライアスは午後に俺の家に顔を出すそうだ。本当に来れるのか?
クラウスは「気を付けてな・・・」と一言だけだった。まあ・・・ いいけど・・・。
「それでは行きましょうか?」
「そうだな」
俺達は馬車に乗って、研究所へ向かった。
研究所でクリス達を降ろすと、俺達は街へ送ってもらった。
冒険者ギルド前で降ろしてもらうと、適当に町をぶらつく事にした。
家に住むことになるので、雑貨屋などにも立ち寄ると、レイとアマネが楽しそうに「これ可愛い!」とか言っていた。まだ、何が必要か分からないから買う事は無いが、何が売っているかは見ておいて損は無いだろう。
途中でカーラが営む占い屋の前を通ったが、今日は閉店と立札が置いてあった。たぶん、研究所だろうか?
それからもう少しぶらついてから、早目の昼食を食べて、俺の新居へ向かう事にした。




