クリスの両親
「アキラ殿、お疲れさま」
「いえ、そんな事無いですよ」
皆がいるテーブルへ戻った時に、ライアスが言葉を掛けてくるが否定しておく、何故ならアイシャの両親との会話で疲れたと言ったらアイシャが申しわけないと謝罪をしてきそうだったからな・・・。
「アキラさん・・・ その・・・」
「ああ、特に何にも無いからアイシャは、気にするな。さっきのゴタゴタの謝罪があっただけだから・・・」
「そうですか・・・ すみません」
結局謝られてしまった・・・。仕方が無い、この件はこれで終わりだろう・・・。
俺が席に座ると、執事が新しい料理を運んで来てくれた。どうやらライアスが注文していたようだった。
「うん・・・ 美味しい! この牛フィレとフォアグラのトリュフソース掛けは絶品だ・・・」
俺は一番高級そうで、ガッツリくる肉料理を食べて舌鼓を打っていた。
「これも美味しい! 外はカリッとして中はフワトロでタコが入っていて・・・・。ってこれはたこ焼きだ!」
思わずツッコミを入れてしまったが、味はたこ焼きだが見た目は違っている物だった。ソースや薬味は中に入っていて、見た目ではたこ焼きに見えないほどキレイに作られていた。一般庶民の料理も宮廷料理になるとこんなに違うのかと素直に感心してしまった。
俺は料理を一通り食べて満足した。
皆の会話にそれとなく相槌を打ちながらの食事だった。
俺が食事を終えてまったりしていると、誰かが近付いてくる気配を感じた。
何者かを確認する前に、俺以外の全員が立ち上がり礼をしようとしていた。
「よい、よい 今は無礼講だ。そのまま続けてくれ」
立ち上がった全員が座り直した。 少し気まずい感じがしていた。フリだけでもしておくべきだったが、気心の知れたメンバーと一緒に席に着いて、空腹だった腹が満たされていたため、完全に気が抜けていた。まあ、無礼講と言っていたし大丈夫だろう・・・ たぶん・・・。
全員が座ったのを確認した王と王妃は空いている席に腰かけた。
「ここに来たのはアキラ殿と少し話がしたくてな・・・。少し邪魔をさせてもらう」
「はぁ・・・ なんでしょうか?」
「まずは自己紹介からだ。我がクリスティーナの父である『クラウス・ウェリアード』だ。そしてこっちが『メリッサ・ウェリアード』だ」
王の名前は知っていたが、王妃の名前は初めて聞いた気がするな・・・。もしかしたらゲームでも聞いたかもしれないが、特にクエストに絡んでこないから、忘れているだけかもしれないな。
まあ、そこはいいか・・・。俺達の事も言った方がいいだろう。
「おれ・・・。 私はアキラでこっちが・・・」
「ああ、アキラ殿達の事はよく知っているから大丈夫だ」
「はぁ・・・」
よく知っているとか、かなり怖いぞ・・・ 一体何を知っているんだ? 俺達の夜の生活か? コスプレ衣装を持っているとかか? この世界にプライバシーとかあるのか・・・?
「少し言葉が悪かったか? 知っているのはその強さと、おおよその人格だ。個人的な趣味は知らないから安心してほしい」
「・・・・・・・・・」
何か知っているような含みを持った言い回しだ。俺は無言で疑いの眼差しを向ける・・・。
「まあ、それはいいだろう・・・」
俺の視線をスルーして話を進めるが、アンタが言い出した事だ!
「先ほどのアイシャとの結婚の事は、半分冗談で半分は本気だ」
「お父様!」
「まあ、聞け」
クリスが抗議の声を上げるが、それを制して話を続ける。
「本気の半分には、アキラ殿をこの国に迎えたいと思ったからだ。我の直参となって欲しかったのだ。今からでもどうだ?」
「お断りします」
「そうか・・・。ならこの話は終わりだな」
えらいあっさり引き下がったな・・・ 何か他に企んでいないか? せっかく冒険が楽しいのに、今は定職に就きたく無いな・・・ ってこれは、リアルの生活に似ていないか? ゲームにハマって引きこもって、いざ就活を始めたら全滅とか・・・。やっぱり、ここは引き受けた方が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いや! 大丈夫だ! 今の俺は最強スペックだ(顔以外) 就職先は豊富にあるだろう。しかも、お金に困っていない。
まだ、イケる!
・・・・・はず。
「あともう一ついいか?」
「え、あっ、はい」
俺の葛藤は気付かれずに済んだようだが、何か危険な想像だったな・・・。
「アキラ殿は、クリスと手を繋いだり、やましい事をしていないだろうな?」
「は? ・・・・・・そ そんなやましい事って、ある訳無いでしょう!」
「お お父様! アキラさんはそんな人ではありません!」
何を言っているんだこのオヤジは! クリスもびっくりして否定してくれている。
「本当か・・・? この二人の美女を仲間にしているんだぞ。可愛いクリスも狙っていたのではないか? クリスはアキラ殿と結婚したいとか思っていないのか?」
「な・・・・ 何を言っているんですか、お父様! そ そんな事・・・ 思う訳ないですよ」
凄い親バカ発言をしたクラウスにクリスは反撃をしているが、その言葉の途中で俺の方をチラチラと見て顔を赤くしていると、俺の方まで顔が赤くなってきた。ヤバイ・・・ この仕草がカワイイ・・・。
「・・・・・・・・そうか。アキラ殿・・・・」
「はい?」
「今夜の月が沈む時間に、城の裏門に丸腰で来てくれないか?」
「いやです・・・」
「ならば、暗い夜道に気を付ける事だ」
一国の王がそんな堂々と暗殺宣言をしないでくれ・・・。
「クラウス、親バカぶりはそこらへんで止めておいてくれ・・・」
「何を言うかライアス! 親バカのお前に言われたくないわ! マリアがもし結婚相手を連れてきたらどうするのだ!」
「そんな奴は許さん!」
クラウスとライアスは二人で親バカ加減を言い合っている。二人は学友と言っていたので、昔からこんな関係だったのだろう。その証拠に、周りにいる他の貴族達は「またか・・・」といった表情を浮かべていた。
そんな様子をメリッサとミラルダが「この親バカ二人は・・・」と顔を見合わせて微笑んでいた。
そして、クラウスとライアスは言い合いから酒の飲み比べ勝負となり、二人が同時に酔いつぶれてこの宴は解散となった。
俺とレイとアマネの三人は、それぞれ別の部屋に案内されて寝る事になった。一緒でも良かったのだが、メイドさんに言うのが何だが恥ずかしかったので、二人に「おやすみ」と挨拶をして、自分の部屋に入って眠りについた。




