決闘・・・?
「なあ・・・ レイ。何で俺はここにいるんだ?」
「アイシャ様を懸けて、騎士団長のカイト様と勝負をするためです」
「え!? 勝負? なんで?」
「・・・・・男と男の勝負です!」
「そうなの?」
「はい!」
なんだか状況をいまいち掴めていないが、俺と騎士団長が勝負をするらしい・・・・。
騎士団長!? ちょっと待て! ん~~~~~~~~~~~~~・・・。そうだ、思い出してきた・・・・。
衝撃発言の後に思考が停止していたが、目に映っていた状況や、なんとなく聞えていた声で頭を整理していく・・・・・・。
なんてこった・・・。
大体の流れは分かったが、何とかしてこの状況を変える事ができないか考える・・・。
「アキラさん・・・ あの・・・・」
「あ・・・ アイシャ・・・」
「すみません・・・ 何だかおかしな事になって・・・」
「いや・・・ アイシャはどうしたい?」
「え・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「私の答えは決まっています」
「そうか・・・」
「はい。ですが、騎士の勝負は決闘と同じですので、手を抜かないようにお願いします」
「わかった」
「勝負が決まったら、後は私に任せてください」
「全て任せるよ」
「ありがとうございます」
アイシャはあの日のたき火を見ていた表情と同じ顔をしていたので、答えはそうなのだろう・・・。
俺との話が終わると、バルサとカイトがいる方へ歩いて行った。
バルサはアイシャに問い詰めているようだが、アイシャは落ち着きを取り戻したようで、冷静に対応しているようだった。
「アキラさん! 今もいい雰囲気でしたね!」
「こら クリス! まったく、今回は厄介な事をしたな・・・」
「ですが、アイシャは・・・・」
「それは本人が決める事だ」
「それではいつまで経っても、お嫁に行けないかもしれないですよ?」
「だったらクリスが早く立派になるか、クリスだけを守ってくれる人を見つけて、安心させるかだな」
「それこそ無理ですよ・・・」
「そもそも結婚はあんな場所で、無理矢理押し付けるもんじゃないだろう?」
「・・・・はい。すみませんでした」
「わかってくれたらいいが、アイシャが自分で決着を付けるようだから、フォローをしてやってくれ」
「わかりました」
「じゃあ 頼んだぞ」
「はい。・・・あと一ついいですか?」
「なんだ?」
「もし、アイシャが行き遅れたら、責任取ってくださいね♪」
「な!?」
「フフフ それでは頑張ってくださいね」
今回の事は何とかなりそうだが、クリスはとんでもないセリフを残して、アイシャの方へ歩いて行った。
そこまで責任持てないぞ・・・。
「アキラ殿、なかなか面白い事になっているな」
「ライアスさん・・・ 俺は面白く無いですよ・・・」
「まあ、この決着が付いたら、うまく収まるさ」
「それはアイシャがうまくやるって事ですか?」
「いや、王妃がそろそろ止めてくれるそうだ」
「王妃が?」
「彼女はクラウスと俺の学友でな、クラウスの事は良く分かっているさ。今回はクリスの勘違いに悪乗りしたようなものだ」
「なんて迷惑な事だ・・・」
「あいつは昔から人望があって、悪ふざけも好きな奴だからな~」
「はぁ・・・ じゃあ、勝負に行きますか・・・」
「くれぐれも、殺さないようにな!」
「そんな事しませんよ! それよりも、クリスの誤解にやられたな~・・・」
「・・・・あながち誤解じゃなさそうだけどな」
「え? 何か言いました?」
「いや、何でもない頑張ってくれ」
「分かりました」
ライアスとの話が終わると、勝負を始めると呼びに来たので、練武場の中央へ向かう。
俺が向かっている時に、ライアスとレイとアマネが何か話しているようだった。
多分「君たちも大変だね」とか言っているのだろう。
「それでは我が、決闘の見届け人となる。まずは剣を渡してくれ」
クラウス王の言葉により一振りの剣が渡された。
「鞘から抜いて確かめてくれ」
鞘から抜くと刀身は木で作られていた。持ち手の部分は本物の素材だが、刃の部分だけ木のようだ。
流石に本当の決闘では無いので、死人が出てはマズイからな。ただ、木剣でも思いっきり殴られると骨折ぐらいはするだろう。性格が悪い奴ならワザとボコボコにやられるかもしれない・・・。
「問題ありません」
カイトがそう答えるが、木剣に良いか悪いかなんてあるのだろうか? 俺にはよく分からないな・・・。
「問題ありません」
軽く剣を振ってからカイトと同じように答える。一応強度の確認だな。勝負が始まって剣を振ったらすぐに折れました! なんて細工がしてあったら問題だからな・・・。
「よろしい・・・ それでは一本勝負を行う。相手が「まいった」と言えば勝利となる。そして、勝者にはアイシャと結婚してもらう」
「は!?」「え!?」
俺とカイトの驚いた声が同時に発せられた。
いきなり勝者と結婚とは、話が飛び過ぎだ! 何を考えているのだ、このオッサンは!
「クラウス様・・・」
王妃の冷たい視線がクラウスを射抜く。
「ん・・・ ゴホッ ゴホッ・・・。え~ 勝者には・・・・・・・・・・ あれ? 何があるんだ? まあいい、とりあえず勝負だ!」
「「・・・」」
「私はアキラ殿にアイシャとの結婚を、考え直して欲しいだけだ」
「俺は結婚をする気は無い。アイシャの将来は彼女自身が決める物だと思っている」
「その通りだ・・・・ ん? なら何で勝負をするのだ?」
「知らん。クラウス王とクリスティーナ王女に聞いてくれ・・・」
「王・・・」
「ち 力試しだ! カイトも超一流の冒険者の実力を知っておくべきだろう・・・」
「ハッ! わかりました」
何だか強引な理由にカイトは納得したようだった。単純だな・・・。
そうなると俺には何もメリットが無いよな・・・。
「アキラ殿、真剣勝負でお願いします!」
「わかりました」
カイトは随分とやる気がみなぎっているようだった。俺はアイシャに手を抜くなと言われているので全力で相手をしよう。もちろん技は使わない、使ったら木剣の意味が無くなるからな・・・。
「それでは両者は剣を構えて前へ・・・」
練武場の中央に5メートルほどの距離を空けて、俺とカイトが剣を前に構えて見合っている。
「・・・・・・・・・・・始め!」
クラウスの掛け声と同時に二人が動く!
スッ・・・
ビュッ
サッ
カーン
「ま まいった・・・」
コーン! ガシャ・・・
一瞬の内の激しい攻防で勝負が付いた・・・。




