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待合室で

 城の中へ案内されて入ると、エントランスホールには、煌びやかな装飾を施された調度品が数多く置いてある。

 場内見学ツアーがあるぐらいだし、こういう目立つ所には、パッと見て良さそうな物を置くのだろう。

 芸術があまり分からない人でも、大きな城に置いてあって、キラキラと光っていれば「高そうだな・・・」と思うしな。

 流石にレプリカとか、ケチな事はしてないと思うが・・・。

 一応、王様の城だし・・・。


 サーラに案内されて城の奥へと進んで行く。


「アキラさん達は、この部屋で少しお待ちください」

「わかった」

「クリスティーナ様とアイシャ様はお着替えをしてください」

「わかりました」

「それでは、準備が整いましたら、お迎えに上がります」

 サーラはそう言うとクリスとアイシャを連れて部屋を出て行った。

 部屋の中にはメイドさんが二人いて、俺達の世話をしてくれるようだ。


「おかえりなさい、ご主人様♪」とか言ってくれたらな~~ ってそれはメイド喫茶だ!

 しかも良く考えたら、レイは既に俺をご主人様と呼んでいるから、新鮮味が全然無かったな。

 じゃあ、どんな呼び方が・・・・・・。


「皆様、お飲み物は何がよろしいでしょうか?」

「こ コーヒーをお願いします・・・」

 妄想中に話し掛けられて、少し驚いてしまった・・・。

 イカン イカン落ち着け、今はそんな場合じゃないぞ!


「私はミルクティーをお願いします」

「私は緑茶をお願いします」

 レイとアマネは俺の動揺を察知した感じも見せずに、注文をしていた。


「かしこまりました」

 メイドさんも特に何もなく返事をしている。

 大丈夫だったか? いや! もしかしたら、心の中で「な~に、今の? プププ」とか思ってたりしてな・・・。っと妄想は止めておこう、また同じ事をしてはイケナイからな。

 俺達が注文するとメイドの一人が飲み物の準備をして、もう一人がお菓子を準備していた。

 そして、出された飲み物を飲んで、落ち着きを取り戻していると、扉の方から声が聞えてきた。


 コンコン


 メイドの一人が扉を開けて、外の人物を確認していた。


「アキラ様。ライアス様、ミラルダ様、マリア様がお見えです」

「え? ライアスさん達が・・・」

「アキラ殿にレイ殿にアマネ殿、城に来るのはもう少し遅くなると思ったが、意外と速かったな?」

「そうですね、そのつもりだったんですが、サーラが迎えに来たので・・・」

「なるほど・・・ せっかちな奴だな・・・」

「え?」

「いや、何でもない。こっちの話だ」

「?? それより、ミラルダさんとマリアもお元気そうでなによりです。それで、こっちにいるのが新しく仲間になったアマネです」

「ミラルダ様、マリア様、初めまして、アマネと申します」

「はい、よろしくお願いします、アマネさん。それにしてもアキラさんは隅に置けませんね。こんな可愛いばかりを仲間にして(ニッコリ)」

「え・・・ いや・・・ その・・・」

 もしかして俺は今、非難されてるの? その笑顔の意味が知りたいが、聞く勇気を持てない・・・


「まあまあ、アキラ殿はまだ若いからな!」

 ライアスがフォローを入れてくれたようだが、オヤジのよくあるジョークっぽいぞ、それは・・・。


「まぁ・・・。そ そういえば、マリアは学校に行くんだよな?」

「はい! あと一週間で入学式です!」

「そうか! 友達が一杯できるといいな!」

「楽しみです!」

 俺の見事? な話題のすり替えによって、マリアの嬉しそうな笑顔の雰囲気で、何とか難を逃れたようだ。


「それとね! 私、もうすぐお姉ちゃんになるの!」

「へぇ~・・・ ん? お姉ちゃん? って事は・・・!! ライアスさん、ミラルダさん、おめでとうございます!」

「「おめでとうございます!」」

 マリアの言葉の意味が分かった俺とレイとアマネは二人にお祝いの言葉をかけた。


「ありがとう・・・」

「ありがとうございます・・・」

 二人は照れていて、少し恥ずかしそうにしていた。


「まだ赤ちゃんが産まれるまで、半年以上は先だから、アキラ殿達に言うのは早いかなと思ったんだが、マリアがどうしても自分で言いたいと言ってな・・・」

「まあまあ、マリアもそれほど嬉しかったのよ」

「はい! クリスお姉ちゃんやアイシャお姉ちゃんみたいに、勉強や剣術を頑張って、アキラお兄ちゃんぐらい強くなって、皆を守ります!」

「おおー! パチパチパチ・・・」

 マリアの見事な宣言に思わず拍手をしてしまった。


「だから、お兄ちゃん。私が強くなったら、一緒に冒険してね!」

「それは・・・、ライアスさんの許可が出てからだな・・・」

 流石にそれは、俺の一存では決めれないだろう・・・

 ライアスさんの方を見ると困った顔をして、何か考えているようだ・・・。


「まずは、学校を卒業してからだな! そこで一杯勉強して、一生付き合いができる友達を沢山作って、クリスとアイシャがOKを出したら、俺も許可をしよう・・・」

 なにやら苦渋の決断をしている顔をしながら、ライアスは話している。

 しかも、クリスとアイシャ任せにしている所もあるし、まあ可愛い娘を旅に出すのはかなりの決断がせまられるだろうな・・・。

 まだ、かなり先の話だが・・・。


「・・・・アキラ殿、頼みがある。これからの旅でマリア用の装備を整えてくれ。お金はいくら掛かってもいい・・・」

 俺の傍に来たライアスは小声で、頼みごとをしてきた。心配なのはわかるが・・・。


「お金は要りませんよ、ダンジョンで取ってくるだけですから」

「すまない!」

 ガシッ!

 ライアスの固い握手が、俺の手を握り潰しそうになっている・・・。

 痛いです・・・。


 ミラルダは俺とライアスのやり取りを見て、ため息をつきながら「全く親バカなんだから・・・」という顔をしていた。

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