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マコちゃんの家探し

 アキラ達と別れたクリスとアイシャとマコちゃんは、レジオスと一緒に研究所の中に入って行った。


「クリスさん、お帰りなさい。何かいい成果がありま・・・・・・ 何ですかその可愛い子は! 新しいペットですか! どこで見つけたんですか!」

「え!? ちょ ちょっと落ち着いてください!」

「は!? す すみません・・・ あまりの衝撃で・・・。そ それでその子は何なんですか?」

「え~と・・・ 迷子の聖獣ですね」

「聖獣? 聖獣って・・・、アレですか?」

 クリスに話しかけてきた研究員は天井を指差して上を向く。

 天井には4匹の獣が描かれていた。

 描かれているのは『朱雀』『青竜』『白虎』『玄武』の四神と呼ばれる聖獣だった。

 遥か昔には聖獣と呼ばれる獣が沢山いて、各地の神殿に祭られていたらしい。


「そうですね・・・ 魔王の手下から助けたので、この子の故郷を探して帰してあげたいな。と思いまして・・・」

「分かりました。協力します!」

「え!? いえいえ・・・ 貴方の研究もあるのでは?」

「大丈夫です! 何とかなります!」

「はぁ・・・ では、お願いします」

「了解です!」

 なんだか強引に『研究員Aが仲間になった!』といった感じで、クリス達の後ろに付いてきた。


 すれ違う研究員と挨拶をしながら資料室へ向かうが、マコちゃんを見た全員が、どんどん仲間になって列を長くしていく。

 仕舞には事情も知らない研究員も、面白がって列に加わってくる始末だった。


「クリス様・・・ 協力してくれる方が多いのは良いのですが・・・ この人数は少し多いのでは・・・?」

「そうですな~ この人数では資料室に入っても、身動きがとれませんな~」

「キュイ!」

「やっぱりそうですよね~・・・ 私もそう思っていたのですが、誰も言わなかったので・・・」

 三人と一匹は善意の申し出を、断るタイミングを逃していた事を挽回するために、広間に集まって詳しく事情説明をして、人選をする事にした。



「かくかくしかじか・・・・・・・と言う訳です。なので、聖獣の研究をされている方と、資料室に詳しい方に、ご協力をお願いしたいのです」

 説明をしても研究者達は「自分が自分が」と言ってなかなか決まらなかったので、レジオス権限で5名に絞り込んだ。

 聖獣研究者の三人『マリ』『ルーク』『サト』と、資料室の室長補佐の『クラン』と、古代言語研究者の『シルト』の五人に決定した。

 最初に仲間になった研究員Aは、残念ながら落選してしまった。「私が最初に手伝う!って言ったのに・・・」と落ち込んでいた彼女に、マコちゃんがスリスリとしたら、「ありがとう! いつでも手伝うからね!」と笑顔で言ったので、どうやら機嫌が直ったようだ。

 ほっとしたクリス達は、いつの間にか調査メンバーに入っていたレジオスと共に資料室へ向かった。


「え~と・・・ レジオス先生は、お忙しいのでは?」

「私の今日の予定は特に無いので、手伝いますよ」

「そうですか・・・」

 調べ物は所長の仕事では無いのだが、流石に目の前にいる聖獣が気になって仕方が無いのだろう。『年を取っても探究心に衰えは無いのだな』と思う調査メンバーだった。



 資料室に入った八人と一匹は、気になる資料を片っ端から読んでいく。マコちゃんはクリスの肩に乗って、一緒に資料を眺めている。


「クリスさん、マコちゃんをずっと肩に乗せていて大丈夫ですか?」

「え? あ~ 全然大丈夫ですよ。この子は乗っているのでは無く、触っているだけですから」

「そうなのですか? それなら大丈夫ですね」

 調べ物をしている間中ずっと、クリスの肩に乗っていたマコちゃんだったので、マリは心配になったようで声を掛けてきた。


「それにしても、角が生えた小さいクジラの聖獣って中々見つかりませんね~。角が無い大きなクジラの聖獣の話はあったのですが・・・」

「「え!? そ それです!」」

 クリスとアイシャは二人して大きな声を上げた。


「すみません! この子の本当の大きさを言ってませんでした!」

「「え!?」」

 クリスとアイシャを除く全員が今度は大きな声で驚いていた。

 クリスはマコちゃんを助けた経緯を話しただけで、小さいサイズに慣れていた二人は、元の大きさなどを伝える事をすっかり忘れていた。

 正しい情報を伝えると、次々と資料が見つかりあっという間に、資料が机に積み上がっていった。


「すみません・・・ 私のミスで・・・」

「いや、気にしないでください。それにしても、この子は凄いですね! 他の聖獣の角と同化して、サイズまで変えれるなんて!」

「そうですね! マコちゃん! 後で大きくなった姿を見せて!」

「キュイ!」

 クリスが謝っていたが、他の研究者は気にする事無く、マコちゃんに話しかけている。

 ルークは目を子供の様にキラキラさせているし、クランは大きくなってと言っているし、マコちゃんはそれにOKと言うように胸を張って返事をしている。


「クリスさん。ここにいる人達は自分が知りたい事が分かるなら、少しの間違いぐらい気にしませんよ」

「・・・はい。そうですね」

 レジオスに言われてクリスは安心したようで、机の資料を読み始めた。他の研究者も落ち着いたらしく、資料に目を通していく。


 資料に書かれていた内容によると、今いるリステリア大陸の西側にある『ラフェルカ大陸』に神殿があったらしい。

 だが現在は大陸の殆どが、砂漠となっていて昔の遺跡などは砂の下に埋まっている。たまに発掘される所はダンジョンとなっていて、モンスターが大量に湧いている。非常に過酷な場所となっている。


「マコちゃん・・・ キミの家は砂に埋まっているようなんだけど・・・」

「キュ~イ!」

 タン!


 クリスが言いにくそうにマコちゃんに話しかけるが、マコちゃんは心配するなと言わんばかりに、壁に掛けてある地図の一点を角で指した。


「四神の神殿?」

「キュイ!」

「そこに行きたいのですか?」

「キュイ!」

 マコちゃんはクリスの問いに元気よく答えている。

 四神の神殿は王都の東側にある湖にある神殿で、王都の東端にあたる。なのでモンスターは湧く事無く、観光スポットとして有名になっている。

 本来は四神のどれかが祭られていたらしいが、何度となく調査したが分からないままとなっている。


「分かりました。明日アキラさん達と合流してから行ってみましょうか?」

「キュイ!」

 クリスの提案に満足したのか、マコちゃんは喜んでいるようだ。


 そして、夕方までに調べ物が終わってしまったクリス達は、研究者達を集めて中庭でマコちゃんの本当の姿を見る会を開催したのだった・・・。盛り上がった人たちはそのまま、宴へと突入し食べて飲んでの夜更かしコースとなってしまった。


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