王都の占い師
この世界最大の街である王都ハルツェニアに到着した。
この街は3つの区画に分かれていて、中央に王族が住む城があり、城壁を隔てた外に貴族が住む区画がある。その外側に一般市民が暮らす区画がある。
区画分けがされているが、一般と貴族区画の出入りは犯罪者でなければ自由にできる。城へは事前に予約をすれば見学ツアーに参加できる。見学だけあって、王族には会えないのだが、たまにイベントが発生して王子らしき人物と遭遇する事がある。らしき・・・ というのは、王子がちゃんと登場しないので、確認できていない。謎の人物となっている。
国王とは、魔王とのイベントが進むと謁見できる。貢献度が上がっていくと、支援物資が増えていき、最終ランクでは、SR武器が入手できる、無課金者にとって大事なイベントになっている。
「ようやく王都に到着したな」
「そうですね。アキラさん、これからマコちゃんの事で、研究所に行きたいのですが大丈夫ですか?」
「ああ、俺は構わないぞ。レイとアマネもいいよな?」
「はい! マコちゃんのためですから!」
二人はマコちゃんのためなら、イエスしか返事をしないだろう・・・。
アイシャの方を見ると、腕を組んで頷いていたので、聞くまでもないだろう。
「では、馬車で移動しましょうか」
クリスはそう言って、タクシーを止めるように手を上げて、馬車を一台停車させた。
この街は大きいので大体の移動は、街の中専用のタクシー馬車を使う。料金は一律で一人50Mとなっているので長距離を乗ると得をして、短中距離なら損をするシステムになっている。
今いる場所から研究所までは距離が離れているので、利用しても損はしないだろう。まあ、俺の財布事情で50Mは安いので、短距離でどんどん乗っても殆ど影響しないだろう。
「王立研究所までお願いします」
「はい、わかりました。どうぞ、乗ってください」
俺達は五人と一匹分の料金を支払ってタクシーに乗り込んだ。
乗る前に御者の兄ちゃんが、マコちゃんを見て驚いていたが、料金を支払うと何も言わずに頷いていた。変わったペットだと思ったのだろう・・・。
王立研究所は貴族区画の城に近い場所に建っている。
区画の間には関所があり、身分のチェックを行っている。
タクシーに乗ってしばらく走っていると関所に到着した。
若い兵士が馬車の扉を開けて訪ねてきた。
「どこまで行くのですか?」
「王立研究所です」
「これは!? 研究者の方ですね・・・。他の方は護衛の冒険者ですね・・・。はい、大丈夫です」
クリスが目的地を告げる時に、学生証のような物を兵士に見せていた。それを見ただけで兵士は納得してしまった。見ただけで分かるのか? 偽造とかあったらどうするのだろうか・・・。
それよりも、この兵士はクリスやアイシャの顔を知らないのだろうか? 自分の所の王女と騎士団長なのだが・・・。
やっぱりこの世界の下っ端も、よけいな事を気にせず仕事をこなすだけかな・・・。
と思っていたが、俺達の乗った馬車が発車する時に、敬礼をして見送っていた。
王女と気付いていたが、忍びの旅なので黙っているとは、あの若さでプロだな・・・。俺の兵士に対する評価は上限一杯まで上がっていた。
「到着しました」
「ありがとう」
研究所に到着したので、お礼を言って馬車から降りた。
研究所は古城を利用しているようで、趣があってなかなかいい感じだ。
学者風の格好をした人達が、何人か出入りしている。
その中でいかにも博士といった格好の老人が俺達に気が付いて近付いてきた。
「これはクリスさん、アイシャさんおかえりなさい。アキラさん、レイさん、アマネさんですな。初めまして、私はこの研究所の所長をしておるレジオス・エピナートです。よろしくお願いします」
「レジオスさん、よろしくお願いします」
「ところで、このクジラ? はペットですかな?」
「いえ、この子は真光クジラで、聖獣です」
「聖獣! 何故そのような者が一緒におるのかな?」
「魔王の部下のバリビュートがこの子を魔獣に変えて襲ってきたので、追い払ってから聖獣に戻したんですが、この子を元居た神殿に帰そうと思って、その場所をここに調べに来たんです」
「なるほど・・・、そんな事があったとは・・・」
レジオスは何か考え込んでいるようだ。
「レジオス先生、どうかしたのですか?」
「あ、すみません。彼女が言っておった『聖なる獣が現れる時、世界に変革が訪れる』という言葉を思い出しましてな」
「彼女とは、カーラさんですか?」
「そうですな」
「クリス、カーラとは誰なんだ?」
「ああ、すみません。カーラさんは元々この街にやって来た占い師なのですが、良く当たると評判で一度行ってみたら、凄い博識だったのでここの特別研究員として来てもらっています。実はルスンへの調査も『何か特別な出会いがありそう』と言ってカーラさんが進めてくれたんです」
「へぇ~ 良く当たる占い師か・・・。そういえば、レイもソーン村で占いをやっていたよな?」
「私は恰好だけでしたけど・・・」
「そうなの?」
「適当でした!」
レイが開き直って答えた。
まあ、実際にもそういう人はいるから、それとなく当たるぐらいが丁度いいかもな・・・。
良く当たると占いに依存して、その人をダメにする可能性もあるからな




