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橋の上の戦い

「サンダーバレット」


 バババババババババ・・・・・


 右のクラーケンの足に向かって雷の弾を無数に放つ。

 節約なんて言ってられない。

 1本の足は100発程で倒せるようだ。

 一気に1500発を撃ち込んで全ての足を倒す。

 そして、頭を出したら更に2000発程撃ち込んでクラーケンを絶命させた。

 かなりのオーバーキルだが、今はスピードが大事だ。

 倒すのに掛かった時間は3分ぐらいだろう。


「え!? アナタは本当に人間なの!」

 バリビュートが何か言っているが俺は無視してアマネの方へ向かう。

 レイ達の方を見るが、既に半分の足を倒しているので問題なさそうだ。


「アマネ、クジラを元の聖獣に戻せるかやってみる。俺が合図をしたら角を切断してくれ。それまでは攻撃を当てない様にしてくれ」

「分かりました」

 クジラの攻撃を躱しながら、小声で最小限の内容をアマネに伝える。


 作戦をアマネに伝えていると、レイ達は足を全て倒したようだ。クラーケンの頭が水から出てきていた。

 いつの間にかバリビュートがクラーケンの背後に隠れるように回っていた。

 そして、ローブから槍のような物を取り出し、クラーケンの方へ向かって構える。


 俺のいた位置から何とか動きが見えていた。クラーケンの後ろから三人の内誰かを狙っているようだ。もちろん、クラーケンを貫いて当てるのだろう・・・。


「レイ! クラーケンの後ろだ! 叩き落とせ!」

「!?」

 俺が叫ぶと同時にバリビュートが槍を投げる!

 槍は簡単にクラーケンを貫通してクリスの方へ向かって行った・・・・。


「クリス様!」

「ア アイシャ・・・!?」

 アイシャが咄嗟にクリスを突き飛ばしたが、体勢が崩れたアイシャに直撃コースだ!


 ボシュ・・・


「レイ! 良くやった!」

 レイがアイシャと槍の間に入り込んで収束した炎を放って槍をただの鉄の塊へと変えた。

 その炎はそのままクラーケンに止めの一撃となり、クラーケンが消えていく。

 そして、槍を放ったバリビュートに炎が掠ったようで、ローブが燃えていた。


「アツーイ! アツイじゃない! 一体何者なのアンタ達は! どうして今のが防げるのよ!」

 バリビュートは手で燃えているローブをパタパタしながら怒っている。

 今がチャンスか?


「アイスケージ」

 俺が魔法を唱えるとバリビュートを氷が覆い固めて閉じ込めた。


「ちょっと! 出しなさい! フン! こんな魔法何て・・・・・ あれ? 解けないじゃない! もう一回・・・」

 俺が全力で作った氷の檻だそう簡単に壊せないだろう・・・。


「今だアマネ!」

「はい!」

 アマネは俺の合図で剣に水を纏わせる。最初は水が剣の表面を流れているのが分かったが、その速度がどんどん早くなり全く見えなくなった。早く動いているであろう水は鏡のように煌めいていた。


「は!」

 アマネが気合を入れて角に振り下ろす。


 スン・・・・・


 コン カラララン・・・


 ほとんど音も無く切り落とされた角は、地面に転がる音が響いていた。


「よし! 今だ! タイダルウェイブ」


 杖を掲げて魔法を使うと、杖の先端から水で出来た龍が俺達の周りを回転しながら昇っていく。龍が通った跡には水の壁ができる。龍は雲の上まで昇ってから咆哮を上げながら降下してくる。龍が水の壁に当たるが姿は消えずに、クジラに向かって降りて行き、クジラの身体に吸い込まれていく。するとクジラの身体が白く光り輝く。


 光が収まった後には、白い身体の『一角真光いっかくまこうクジラ』が橋の上に横たわっていた。

 津波が起こるはずの水の壁もいつの間にか消えていて、浄化のためだけの魔法となった。

 こんな効果もあったのか、知らなかったな・・・。



「私のクジラちゃんを元に戻すなんて・・・ ひどいわ・・・。もういい! 実家に帰らせてもらいます!」

 いつの間にか檻から抜け出したバリビュートが、夫婦喧嘩の奥さんのセリフを吐いて、海の中へ飛び込んで行った・・・。


「終わったのですか?」

「し~・・・」

 俺が口に手を当てて静かにしてとジェスチャーをすると・・・。


「な~んてね!」

 消えた海とは反対側からバリビュートが飛び出してきて槍を構えている。

 俺は既に迎撃態勢を整えて迎え撃つ!


「え!? ちょっ! まっ・・・・・」

 何か言いたそうだが、そんな事は気にしないで魔法を放つ。


「サンダーバレット」

 ババババ・・・ガガガガガ・・・・

 ボン!

 数発は当たったが、途中から防がれたようだ。しかも何かを爆発させて距離を取った。


「覚えてなさ~い!」

 そう言いながら声が遠ざかって行く。流石に逃げて行ったようだ。

 やっぱり予想通りに不意打ちを狙っていたようだ。ダメージをそれなりに与えたし、もう大丈夫だろう。ここで倒したかったが、仕方が無いだろう・・・。


「今度こそ大丈夫のようだな・・・」

「流石アキラさんです!」

 皆が寄って来て褒めてくれている。



「お~い無事か!」

「ん? あ! バルガスさん!」

 声のする方を見るとバルガスさんと、最初にいた冒険者達と他に数十人が走って来ていた。

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