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第45話  アイシャとクリス

タイダルウェイブってスゲー! の後です。

 林に入ると、モンスターがいるようだ。

 魔法の範囲はどうなっているのだろう?

 まあ、その内調べてみるか・・・。

 林の中ではトレントやベアウルフが時々襲ってくるが、サクサク倒して進んで行く。

 サーベルキャットは相変わらず現れない。


 更に進んで、前回通った時に子猫?を助けた場所に来た。

 そこには、『サーベルキャット』と『サーベルキャット(子)』の2匹がいた。

 前回助けた子猫だろうか? 襲ってくる様子も無いし、俺達を待っているようだった。


「みんな手を出さないようにな・・・」

 俺の一言に全員が頷いた。

 俺達が敵対しないと気付いてか、子猫が俺の元へ近付いて来た。

 親猫?はその様子をジッと見ている。何かあればすぐにでも飛び掛かってきそうだな。


「ニャア!」

 俺の足元にやって来た子猫は、足にスリスリしながら鳴いている。

 優しく撫でてやると、顔を摺り寄せてくる。完全に猫だ。


「そういえば、水龍饅頭って3日ぐらいは持つよな?」

「1週間は大丈夫だと思いますよ」

「そうか、ありがとう」

 俺の疑問にクリスが答えてくれたので、袋に残っていた饅頭を1個取り出した。

 子猫の前に出すと、咥えて親猫の元へ持って行った。


「あまり人間の前に出ない方が良いぞ。俺達みたいな良い人ばかりじゃないからな」

「ニャア!」

 俺がそう言うと、親猫が鳴いて答えた。

 言葉が分かったのだろうか?


「じゃあな!」

「ニャア!」

 俺が別れを言うと、返事をして子猫と林へ帰って行った。

 やはり言葉を理解しているようだな。


「何だか凄い光景ですね・・・」

「そうですね・・・」

「そうなのか?」

「はい・・・ モンスターと友好関係を築くという話は、聞いた事がありませんから・・・」

「まあ、そうだろうな~ 俺も聞いた無いしな・・・」

 クリスとアイシャは何か不思議な物を見た顔をしている。

 レイとアマネは「流石ご主人様です!」といった顔だ。

 子猫と別れた俺達は順調に進んで、予定より早く林を抜けた。



 林を抜けて草原を3分の1程進んだ所で、夕方になってきたので野宿の準備を始める。

 今回の結界石は俺のを2個使って、安全地帯を確保した。

 全員でテントの設営や、夕食の準備をして食べ始めた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

 食事のあとにはお茶を飲みながら、まったりと過ごした。

 そして、早めに就寝をする。

 見張りは交代で行う事になる。

 順番は前回と同じで俺とアイシャ、クリスとレイとアマネだ。

 このメンバー分けをするのに、クリスがレイとアマネと一緒に見張りをすると押してきた。別に不満は無いので俺はOKを出したが、気のせいかもしれないが、アイシャは何か少し焦っていた感じだった。

 クリスは寝る時に少し寂しいからと言って、レイとアマネのテントに一緒に入って行って寝ている。

 少し狭いんじゃないか? と思ったが、購入する時に大人5人ぐらいが入って寝れるサイズを買ったので、たぶん大丈夫だろう。


 たき火に並んで座っている俺とアイシャは昼間の出来事の、林に居た子猫の話などをしていた。

 今日の出来事をあらかた話終わると、沈黙が続いた・・・。

 アイシャは何か考えている感じで、薪を棒で突っつきながらボーっとしている。


「アキラさん・・・・」

「んぇ!?」

 沈黙の緊張で突然話しかけられて、変な声を上げてしまった。


「アキラさんはどうしてそんなに強いのでしょうか?・・・・」

 どうやら俺の変な声には気付いていないようだ。もしかして気を使って流しただけか?


「どうしてと言ってもな~・・・・・・・・」

 前回も聞かれたが、正直に答える訳にもいかないので考えていると・・・。


「アキラさんはなぜ冒険を始めたのですか?」

 次の質問が飛んできた・・・


「なぜと言われてもな~・・・・」

 また答えに困る質問だ。いきなりこの世界に連れてこられて冒険者になったとは言えないし、ゲームを始めたきっかけは暇なニートだったからとも言えない・・・・


「私がクリス様と出会ったのは・・・・」

 アイシャは自分の身の上話を始めた。

 俺の事をきっかけにして、自分の事を聞いて欲しかったのかな?


「私が5才、クリス様が2才の時でした。幼かった私は貴族とか王女が、何を意味しているのか解っていませんでした」

「子供だから仕方が無いよな・・・」

「はい・・・。だから私はクリス様を紹介された時は、可愛い妹ができたと思いました。それからは毎日のように一緒に遊んでいたので、私達の事を知らない人からは、本当の姉妹に間違われる事もありました。・・・・2年程経ってから、私は学校に行く事になり寮生活が始まりました。クリス様は寂しがっていましたが、長い休みには必ず遊びに来ると、約束をして納得してもらいました。その時にはクリス様が王女であると聞かされていて、私はどう接しようと迷っていたのですが、クリス様がまだ私の事を姉と慕ってくれていたので、私はクリス様が理解するまでは、姉として接しようと決めていました」

 子供の頃の話をしているアイシャは、楽しそうに笑顔で話している。昔の良い思い出なのだろう。


「ですが・・・・・。私が10才になった頃に、クリス様の命を狙った事件が起こりました・・・・」

「命を・・・・ 狙った!」

「はい・・・・・・・。当時の大臣が地方の町で私腹を肥やしていたのですが、国王様に罰せられて貴族の位をはく奪されたのです。その事を逆恨みしてクリス様を狙ったそうです。当時は女性の騎士が居なかったので、女性の兵士やメイドが護衛をしていました。なので腕の立つ刺客が襲ってきた時には、簡単にクリス様に接近されました。騒ぎに気付いた騎士が駆けつけて難を逃れましたが、本当に危なかったと聞いています・・・・・・。その知らせを聞いた私は、急いで駆け付けてクリス様の元へ向かいました。クリス様はお休み中だったので、事件の事は気付いていませんでしたが、自分の世話をしてくれた人達が何人か居なくなっていたので悲しそうでした」

「その人達は・・・・」

「・・・・・・・彼女達が命がけて時間を稼いでくれたおかげで、クリス様が助かりました・・・・・。クリス様には彼女達は実家に帰ったと伝えていたのですが、異常な雰囲気にその言葉が嘘だと解っていたのかもしれません・・・・。私が駆け付けた時にクリス様は、何も言わずに私に抱き着いて泣いていました・・・。その時に私は決めたのです・・・。私の胸で泣いているこの子を、大切な妹を、私が敬愛する王女様を傍で守り続けようと!」

 アイシャはその時の決意が思い出されたのだろう。たき火を眺める、その瞳が強い力を持っていた・・・・。


「それからは、周囲の反対を押し切って、騎士になるための鍛錬や勉強をクリス様の傍でしました。そして、15才になった時に、騎士となりその後、クリス様直属となるワルキューレ騎士団を造りました。騎士団の中には、クリス様を守った女性達の娘や親族が数人います・・・・」

「彼女達はクリスを恨んだりはしていないのか・・・・・?」

「無くなった方たちは国葬を行い、貴族と同じ墓地に埋葬されました。そして、事件の真相を知ったクリス様は彼女達の家を訪ねて、守ってもらったお礼と、今後このような事が起こらない国を造ると宣言されました。それから亡くなった方の墓前に膝をついて、涙を流して1時間ほど祈りを捧げていました。その姿を見た彼女達は、自ら騎士団へ志願してくれたのです・・・」

「そうなのか・・・・ すまなかったな・・・」

「いえ・・・・。クリス様は今でも、彼女達が亡くなった日には必ず祈りを捧げています。祈りが終わると、その目には強い決意が現れています。その姿を見ている私達は、この方のする事を助け、全力で守ろうと誓いを立てているのです・・・」

 アイシャ胸に手を当てて誓いを確認するかのように、目をつぶって力強く話を締めくくった。

ツライ事を力に変えれる人は強いです。

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