第44話 新魔法の威力
来た時と同じ道を帰ります。
ルスンを出た俺達は順調に進んで行く。
来た時と同じように、寄ってくるモンスターを交代で倒していく。
ファイヤーカーが頭上を飛んでいるが、気にせずに進んで行く。
クリスも一回失敗をしているので、頭上を飛んでいるファイヤーカーを無視するようだ。
だが、草原の中ごろまで来ると、カラスの数が増え「カーカー」鳴いてうるさくなってきた・・・。
「あのカラス・・・ 倒すかな?」
「そうですね・・・ ちょっとうるさいですね・・・」
「よし! この龍波の杖を使ってみるか!」
「はい! お願いします!」
この草原の様にだだっ広い所で使うと効果が判りやすいだろう!
クリスも杖の効果が見たくてウズウズしているようだ。
『タイダルウェイブ』
杖を掲げて魔法を使うと、杖の先端から水で出来た龍が俺達の周りを回転しながら昇っていく。龍が通った跡には水の壁ができる。龍は雲の上まで昇ってから咆哮を上げながら降下してくる。龍が水の壁に当たると姿が消えて、水の壁から無数の龍が全方位に飛んで行き、それに合わせて巨大な水の壁から水が津波のように流れていく。
俺達の周りにいた敵全てが流されていく。もちろん水の壁が巨大なため、頭上を飛んでいたファイヤーカーも一緒に飲み込んでいった。
水の壁が消える頃には、敵の姿はどこにも無かった。
事の成り行きを見ていた、クリス達は絶句していた。
それはそうだろう・・・ ゲームで使った事がある俺も、実際に見るとかなりビビッてしまった。
敵以外には効果が無いと言っても、目の前に巨大な津波ができると怖くなってしまうものだ・・・。
しかも、MPの消費がハンパ無い。俺でも10回連続で使える程度だ。
クリスのMPなら1回使えるかどうかの消費量だろう。
まあ、こんな殲滅魔法を10回も連続で使うような状況は、殆ど無いから大丈夫だろう・・・。ゲーム終盤の超魔王との最終戦争をする時に、複数プレイヤーが協力してモンスターの大軍を撃退するイベントだけだ。今のイベント進行状況なら、当分先の話だろう・・・。
「なかなか凄い魔法だったな・・・」
「はい・・・ 流石ご主人様です!」
「主様・・・ お見事です・・・」
レイとアマネは驚きながらも、俺に賛辞を送ってくれた。
「・・・・・・・・。さ 流石・・・ アキラさんですね・・・」
アイシャは何とか言葉を絞り出したようだ。
「・・・・・・・・。あ あの魔法は・・・ もしかして? いえ・・・ でも・・・・」
「クリス? どうかしたのか?」
「は!? ア アキラさん・・・。すみません! え~と・・・ 私が聞いた事がある話なのですが・・・。 はるか昔にルスンが邪悪な魔物に包囲された事があるそうです。その時に神殿に祭られていた水龍が、魔物を浄化させる巨大な津波を起こして、町を救ったと伝承が残っているそうです。ただ、あの神殿には龍が居たと証明できる物が見つかって無いので、ただの作り話と思われていたのです・・・。ですが・・・ こんな魔法があると・・・ 龍では無く、強力な魔法使いが居たのでしょうか・・・・?」
「まあ・・・ そこらへんは俺には解らないかな~」
「あ! すみません! この事は王都に戻ってから、一度調査を依頼します。とりあえず、先へ進みましょう!」
クリスは何か難しい事を考えているようだが、俺は考古学は専門外だ。
こうゆうことは専門家に任せて、色々調べてもらおう。
実験が終わった俺達は先へ向かって歩き出した。
道中モンスターと全く遭遇しなくなっていた。もしかしたらここら辺のモンスターを一掃したのではないだろうか?
しばらく進むと、馬車が林の方から来るのが見えた。
向こうも俺達に気付いたみたいで、少し速度を上げて近付いてきた。
「なあ、アンタ達! さっき大きな津波が来なかったか? 林を出た所でモンスターに襲われていたんだが、津波が突然来てモンスターを全部飲み込んでいったんだ!」
「あ~・・・・・ それは・・・。俺の魔法ですね・・・」
「は!? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・魔法?」
「それよりも! モンスターが居なくなって良かったですね! ここから先もモンスターが、かなり少なくなっているので町まで早く着くと思いますよ! じゃあ気を付けて!」
「ああ・・・ ありがとう?」
この人に詳しく説明するのも面倒なので、混乱している内に話を打ち切って先へ進んだ。
しかし、津波が林まで到達していたとは、どんだけの効果範囲なんだろう?
確かにモンスター以外には害が無いが、効果範囲が大きすぎて余計な問題を起こしそうな気がするな・・・。
しばらく使うのを控えよう・・・。
それからもモンスターと遭遇する事無く林へ到着した。
超強い魔法が他の人に当たらない。というご都合主義設定を手に入れたアキラ一行です。
そもそもゲームとかで広範囲攻撃をしても、敵にしか当たらないとかどんだけ命中精度がいいんだ! と思っていた時期がありました。今では・・・ 「それもアリだよね♪」 になりました。完全に染まりました・・・。




