第36話 水龍饅頭
ギルド長の呼び出しって何でしょう?
ギルドに到着して中に入ると、多くの冒険者がいた。
全員の視線がこっちを向く。
「アイツらがそうなのか?」「どこかの貴族の・・・・・」「なかなかの面構えだ・・・・」などと、ぼそぼそと喋る声が聞こえる。
正直言って居心地が悪い。
「すみません! アキラですけど」
「はい! アキラさんですね。ギルドカードを確認します」
「はい どうぞ」
「・・・はい 確認しました。奥の部屋へどうぞ」
昨日、冒険者に詰め寄られていた受付の女性が、奥の部屋へ案内してくれた。
コンコン
「アキラさんがお見えになりました」
「入ってくれ」
「どうぞ」
俺とレイはギルド長の待っていた部屋に入った。
「お待ちしていました。アキラさん レイさん。どうぞ座ってください」
「はい」
「私はここのギルド長をしているドーガです。今回の件は本当にありがとうございます。昨日の夕方に騎士団の方が来られて、事の詳細を説明してもらい、副ギルド長であるエーチゴが関わっていたと聞いた時には、正直あいつをぶん殴ってやりたくなりました・・・・」
そう言ってドーガは拳を固く握りしめていた・・・。
まあ、気持ちは分からんでもないな。
「私はアイツに他のギルドへの救助要請を頼んでいたのですが、あまりの遅さに聞いても、まだ返事が来ないと言って嘘を付いていました。実は要請を送っていなかったようです。あまりにも返事がこないのでおかしいと思って、少し問い詰めようと思っていたのですが、先に捕まってしまったので残念です」
問い詰める事が残念という事は、自分でやりたかったのだろうか?
昨日の様子を見ていたら、拳での尋問をやりかねないだろう・・・。
「それは残念でしたね・・・」
「いえいえ! 捕まって良かったので特に不満は無いですよ・・・。 それよりも! 騎士団の方に伺ったのは、アキラさんとレイさんがたっぷりと懲らしめてくれたと聞いたのです! ありがとうございます」
「俺も困っていたので丁度良かったんですよ。それに一緒に旅をしていた二人が先に真相を掴んだので、俺の手柄じゃないです」
「ああ! 二人とも騎士団員で異変の噂の調査に来ていたらしいですね。この町に住む者として、恥ずかしい限りです」
クリスとアイシャの事を聞かされて無い可能性があったので、それとなくボカシて言ったが、それで正解だったみたいだ。
それにしても騎士団員か・・・ 王女と騎士団長が直々に来るとは、流石に思わないよな・・・。
「まあ、外から来た人の方が動きやすい事があるので、仕方が無いと思いますよ」
「そう言ってもらえると、助かります。そこで、アキラさんとレイさんにお礼と言っては何ですが、水龍の神殿の探索を優先して行えるようにしたいと思います」
「そんな事できるんですか?」
「そうですね。他の冒険者も今回は仕方が無いと言っていたので大丈夫です。それに、お金を払って入っていた冒険者は一人も居ないので、他の人を気にして冒険をしなくて楽だと思います。ただ、あまり長い間冒険者を止めるとまた不満が出るので、今日の内に入ってください。明日からは他の冒険者が入ります」
「それはそうですよね。毎日のように文句を言いに来たぐらいだし・・・。では、今から準備して神殿へ向かいます」
「はい わかりました。気を付けて頑張ってください」
俺とレイはドーガの話を聞いてからギルドを出た。
俺達だけの冒険は気が楽だな。しかも、隠し部屋にある杖も簡単に取れそうだし、魔剣の事も周りを気にせずに、探索できそうだ。
だが、最近誰も入っていないって事は、モンスターが湧いているんじゃないか? 先に入って片付けてくれって事か? まあ俺達の敵ではないから別にいいのだが・・・。
少し疑問が残るが、準備と言っても特にする事は無い。
水龍饅頭を買いに行くだけだ。そう思いギルドを後にした。
「すいません! 水龍饅頭ありますか?」
「はい! いらっしゃいませ! 今日の朝から販売してますよ・・・。もしかして アキラさんですか?」
「・・・? そうですけど?」
「ああ! この度はおかげさまで、饅頭作りが再開できました。ありがとうございます」
「いや、俺も饅頭が欲しかったので、役に立てて良かったです」
「そうなのですか? では、これを持って行ってください!
そう言って店員から渡された袋の中には、水龍饅頭が30個入っていた。
饅頭は肉まんぐらいの結構大きいサイズなので、そんなにはいらないのだが、断るのも気が引けるな・・・。
そうだ! 後でクリス達に持って行くか。
そう思い、神殿で使うのと食べる用の饅頭をバラで10個を袋に入れて、残りを纏めて袋に入れておいた。
神殿に向かうと、簡易的な門があった所に騎士団の二人が立っていた。
「これはアキラ様 レイ様 おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます!」
「神殿へ向かうのですか?」
「そうだな 今日中に入った方が良さそうだからな」
「それでは、お気を付けて!」
「あ! そういえば!」
「???」
「この水龍饅頭をクリスとアイシャに渡してくれ、さっきそこの店で貰いすぎたんで後で持って行こうと思ったんだが、探索に時間が掛かると味が落ちるかもしれないしな」
「水龍饅頭ですか・・・ そんなにすぐに悪くなる物では無いはずなので大丈夫だと思いますが、もうすぐ交代の時間なので、その時にお渡しします」
「ありがとう」
饅頭を渡して俺とレイは水龍の神殿へ向かって行く。
饅頭を食べながら・・・
もぐもぐ・・・・
なかなか美味いな。
水龍饅頭は超美味しい、あんまんのイメージです。
あったかい物も冷たい物も美味しい饅頭です。




