第35話 ルスンの日常へ
事件の後始末をしていきます。
「それで、クリスとアイシャはどうするんだ?」
「私はこの館で、仕事がありますので、ここに騎士団の皆と泊まります。アキラさんとレイさんはどうします?」
「俺達は宿に戻るよ。クリスは?」
「私の仕事はありませんので、宿に戻ります」
「お一人でですか!?」
「あー・・・ だったらレイと一緒の部屋でいいんじゃないか? 野宿でも一緒に見張りをしていたし大丈夫だろ?」
「そうですね それだったら心配いりませんね」
これでアイシャの心配は無いだろう。ただ、副団長が「クリスティーナ様が野宿で見張り・・・」なんて呟いているが、後の事はアイシャに任せよう。
俺とレイとクリスの三人は水の宿へ戻って行った。
宿に着くと女将さんが慌てて俺達の元に走ってきた。
「お客様すみません! 先ほど王国騎士団の方が来られて、今まで通りの宿代で大丈夫になったと通達がありましたので、昨日と今日の代金を返金いたします。明日の出発時にお渡しするので、お忘れないように受け取ってから出発してください。
「あ! そうなんですか。わかりました」
俺達は事情を知っているのだが、知らない振りをしておいた。メンドクサイしな。
三人で夕食を食べてそれぞれ部屋に戻って行く。
もちろん俺は一人で、レイがクリスの部屋に行った。
大丈夫! 今日は寂しくないよ! 隣の部屋にいるからね!
そして、外が明るくなってきた時間に目を覚ました。
俺は目が覚めて身支度を整える。
レイとクリスは起きているだろうか?
寝ているのを起こすのも悪いかな・・・ と思い、もう少ししてから朝食に誘いに行こうと思っていたが、扉をノックする音が聞こえた。
「ご主人様、朝ご飯を食べに行きませんか?」
「分かった! すぐ行く!」
タイミングよく来てくれて助かった。
俺はすぐに、扉を開けてレイとクリスの三人で朝食を食べに行った。
朝食を食べ終わって、紅茶を飲んで一息ついていた。
「クリスはこれからどうするんだ?」
「私ですか? そうですね今日は、新しい領主が来るので任命式に参加ですかね~。アキラさんとレイさんも参加します?」
「いや そんな堅苦しい行事は遠慮しておくよ」
「そうですよね~ 私も嫌なんですけど、これも仕事の内ですから」
「任命式が終わったら、王都へ帰るのか?」
「いえ、しばらくはここの遺跡を調査しますよ」
「調査は建前じゃなかったのか?」
「いえいえ 元々調査に向かっていたんですが、マリウス様の館に立ち寄ったら、この町で何か問題が起きていると聞いたもので、ついでに調査してみますと言ったんです」
「あ! そうなのか! 俺は学者は仮の姿かと思っていた!」
「最近では学者がメインになってますね。でも、アキラさんとレイさんと一緒に旅をして楽しかったので、ここの調査が終わったら他の遺跡を巡る旅に出るのも、良いかもしれないですね!」
「・・・それは家族と相談して決めた方がいいぞ。一応、王女だしな・・・」
「そうですね! このルスンの事もお父様に報告しないといけないので、一度王都に帰ります」
「そうだな、その方が良いだろう」
「では、一緒に行きましょう! アキラさんとレイさんに助けていただいた、お礼もしないとダメですからね!」
「いや、そんなに気にしなくていいぞ。お礼も要らないし・・・」
「では この後は何か予定があるのですか?」
「この後は、水龍の神殿に行くだけだな・・・」
「それでしたら、王都に少し寄って行かれても大丈夫ですよね? レイさん!」
「え!? あっ! はい! ・・・あ」
「レイさんは王都に来ていただけるのですね! ありがとうございます!」
「わかりました! 俺も行きます!」
「はい! ありがとうございます!」
完全にクリスの誘導にはまってしまったな。普段は聞き役になっているレイに突然答えを求めて、肯定を引き出して、俺の逃げ道を無くしてきた。なかなかしたたかな性格をしているな・・・。
まあ、どのみち王都のある大陸に行って、魔武器を探さないといけないので特に問題は無いからいいけどな。
「クリス様 そろそろ式典の準備が整います」
「もうそんな時間ですか・・・ わかりました。行きましょう」
俺とクリスの会話が終わったタイミングで、サーラが話しかけてきた。
いつの間にいたんだ? 神出鬼没だな、流石くノ一!
「では、アキラさん レイさん神殿の攻略が終わりましたら、昨日の屋敷に来てください」
「わかった。またな!」
「はい!」
クリスはサーラと一緒に出て行った。
「俺達も行くか!」
「はい!」
俺達も宿を出る。もちろん宿泊代の差額は受け取ってからだ!
昨日のケーキ屋に饅頭の事を、聞きに行こうと道を歩いて行く。
「おーい! そこの二人待ってくれ!」
「ん?」
冒険者風の男が俺達に向かって走ってきた。
「すまないが あんた達は、アキラとレイか?」
「ああ そうだが何か?」
「いやぁ、探したよ! ギルド長がアンタ達にお礼を言いたいから、探して欲しいって言ってたんだ。何でも今回の貴族の横暴を止めたって聞いたからな! 俺達も感謝してるぜ!」
「そうなのか・・・ じゃあギルドに行ってくる。ありがとうな!」
そういえば副ギルド長も今回の事件の首謀者だったから、ギルド長としても何か言いたい事があるのだろう。とりあえず、ギルドへ向かうか。
色々な所が通常の生活へ戻って行きます。
同じ事の繰り返しの日常ばかりでは飽きてくるかもしれませんが、合間合間で気分転換をすると、また違った日常になるかもしれませんね。




