第33話 ルスンの状況
街の状況を調べます。
朝食を食べた俺達は町へ情報を集めに出て行った。
少し町を歩くと、やはりおかしかった。
色々な店の商品が軒並み値上がりしている。しかも大体5割ほどだ。他の宿屋も水の宿と同じく3倍になっていた。
「これは冒険者ギルドで聞いた方が良さそうだな」
「はい!」
「そうですね!」
「その方が良いと思います」
ギルドなら何が起きているか教えてくれるだろう。
ギルドに入ると中には多くの冒険者がいた。
不機嫌そうな顔で話しているのが殆どだ。
受付の女性に詰め寄る冒険者もいた。
「いったいどうなっているんだ! この町の物は全部高くなって! しかも、神殿に入るのに金まで取りやがって!」
「すみません! ギルド長が交渉に行ってますので、もう少し待ってください!」
「チッ・・・ 昨日もそう言っていたじゃないか!」
「すみません!」
この怒っている男は毎日文句を言いに来ているのだろう。受付の女性も大変だな・・・。
しかし、いったい誰と何の交渉をしているのだ?
「なあ アンタいったい何が起きているんだ?」
「あぁ・・・ この町に来たばかりか?」
「そうだ 昨日この町に着いて宿に泊ったんだが、高くてな・・・」
「そうだろうな・・・ 俺もそんなに詳しくは無いんだが、最近この町を治めていた貴族が変わったらしくて、そいつが税金を上げてこうなっているらしいぞ」
「税金?」
「ああ なんか金に汚いヤツらしい・・・」
「なるほど・・・ ありがとう。何となく分かった」
近くにいた冒険者に話を聞くと、新しく来た貴族が悪いらしいな。しかも、神殿に入るのにも金取るとはどこのアトラクションだよ。
バン!
勢いよく扉が開いて、二人の男が入ってきた。
「クソッ! あのバカ貴族め! 何を考えているんだ!」
「ギルド長! 少し落ち着いてください・・・」
「これが落ち着けるか!!」
勢いよく扉を開けて入ってきた、ギルド長と言われたがっしりとした男は、かなり怒っているようだ。激おこプンプ(ry だな・・・。
「すまない! もう少しだけ待ってくれ! 俺が何とかしてみせる!」
ギルド長は冒険者達にそう言って頭を下げる。
それを見ていた冒険者達は「まあ、そう言うなら・・・」とか言っていた。
ギルド長はもう一度頭を下げて奥の部屋に入っていった。扉が閉まる寸前に「アイツの討伐依頼でも出してやるか!」なんて声が聞こえた気がしたが・・・。
流石に貴族の討伐はダメだろう・・・。
「何となく状況が分かってきたな・・・。もうしばらく続きそうだし、ちょっと神殿の方も見に行くか」
「はい!」
「そうですね・・・」
「はい・・・」
このままギルドに居ても何も変わらないので、一度神殿を見に行くことにした。入場料が掛かるって話だし、いくら掛かるのか見に行ってもいいだろう。
町の神殿側の出口には簡易的な門が造られていて、その前には兵士が三人立っていた。
「すみません 神殿に行きたいのですが?」
「冒険者か?」
「そうです」
「一人1000Mだ」
何か態度が悪い兵士だな・・・
「何でお金が要るようになったんですか?」
「そんな事はお前たちに関係ない!」
「誰の指示なんですか?」
「うるさい奴だな! 決めるのはこの町の代表である『アークダイ』様だ!」
アークダイ?そいつが新しく来た貴族の名前か・・・・。
何か悪そうな名前だな・・・。
「すいません。私は王立研究所のクリスと言います。神殿の調査をしたいのですがダメでしょうか?」
「王立研究所? そんな人が来るとは聞いて無い! そもそも・・・・ こんな子供がそんな所に入れるわけがないだろう! 嘘を付くな!」
お前・・・ クリスの体系を見て子供と言っただろう・・・ 確かにロリ系だ・・が?
ん!?
俺の横にいたアイシャから凄い殺気を感じる!
ヤバイ・・・殺るきだ!
「す すいません。今日は一旦帰ります! お邪魔しました!」
俺はアイシャが剣を抜く寸前に、アイシャの前に飛び出して、体の後ろに回した右手でアイシャの剣を抑える。アイシャからは抗議の声が聞こえるが無視をして兵士に話しかけた。
「そうか 次はグダグダ言わずに金を払えよ!」
この野郎! 命の恩人に何て事を言うんだ! まあ、今回は見逃してやる!
「じゃあ、みんな戻ろう!」
「はい!」
「はい 行きましょうアイシャ」
「な!」
怒り心頭のアイシャを俺とクリスがなだめながら、来た道を戻って少し門から離れた所にあった、店に入った。
「アキラさん! 何で止めたんですか!」
「いや・・・ いきなり斬ったらダメだろ?」
「あんな無礼な男は斬っても問題無いです!」
「まあまあ・・・ アイシャ落ち着いてください」
「クリス様まで! 貴方を侮辱したのですよ! おう・・」
「アイシャ! ・・・落ち着いてください」
「は はい! すみません・・・」
怒り心頭のアイシャをクリスの一言が止めた・・・。アイシャが何か不味い事を言いそうになったようだな・・・ やっぱり何か隠しているようだ。
「とりあえず 気分転換に何か甘い物でも食べるか?」
「はい!」
「そうですね」
「はい・・・」
「すみません! 注文いいですか?」
「は~い! どうぞ!」
「え~と 水龍饅頭を人数分と・・・」
「すみません! 水龍饅頭は今作れないんですよ!」
「え!? 無いの?」
「はい・・・ 材料の一つの水を毎日神殿から汲んでくるのですが、お金が要るようになってから行けなくなったんですよ・・・」
「そうなんですか? 他の水ではダメなんですか?」
「他の水を使うと、美味しく無いんです。昔の偉い人が決めた所で採れた材料を使わないと、味が悪くなるので今は作れないんです」
「そうか・・・ それはまずいな~」
「ご主人様 何か問題でも?」
「ん? あ~ 水龍の神殿にお供えでもしようかと思ってたんだが、ちょっと無理だなって思って」
「そうですか? 他の物ではダメなのですか?」
「水龍饅頭しかダメなんだ」
「そう?・・・ですか」
実はダンジョンの攻略で饅頭が必要になるので、どうしても欲しいのだが、この町の問題を解決するしかなさそうだな・・・。
貴族の暗殺でもするか? 殺っても皆が黙っていてくれそうだし・・・。
「え~と こちらのフルーツケーキが、今おススメになってます」
「じゃあ それを人数分とコーヒーも人数分ください」
「わかりました、少しお待ちください」
しばらくして出されたケーキはフルーツの甘みを活かした美味しいケーキだった。流石おススメの一品だ。レイとクリスとアイシャの三人の女の子も美味しそうに食べていた。物騒な妄想をしていた俺も、甘い物を食べて少し落ち着いた。
いくらムカついたからといっても、手を出したらダメです。




