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第27話  晩餐会

マリアの案内で館を探検中!

 俺とレイはマリアに屋敷を案内されている。

 さながら美術館を思わせるような廊下をマリアが説明をしながら歩いて行く。

 作者の名前はあまり覚えていないが、作品を見ると心が奪われるような感じがする。

 昔に親が連れて行ってくれた頃を思い出す。当時は芸術なんて興味が無かったが、美術館で本物の作品を見た時に目が離せなくなった事があった。作品に込められた思いや魂なのだろう。その当時は魅了される感情が理解できなくて、なんだか怖くなってしまい美術館に行かなくなってしまった。

 今は分かるのかと言われれば、そんなに分からないだろう。でも、何か人を引き付ける物には製作者の強い思いが入っているのだろう。という事は何となく分かる。だが、何だこれは? みたいな作品も置いてある。感性の違いだろうか、全く惹かれ無い作品も何個かあった。芸術は難しいな・・・。


 しばらく廊下を歩いて曲がり角を曲がると、何だかよく分からない石像の前で女性が二人話していた。


「この石像こそ、2000年前に起きた『神の使者と魔神の戦い』があった証明です! 見てくださいこの石像が焼き斬られている所を!」

「でもこのような石像でしたら、フレイムソードでも焼き斬れますよ?」

「いえ、この石は特殊な魔法が掛かっているようで、並みの攻撃では傷が付かないんです! しかも、その魔法は現在は失われているので・・・・・・・」

 近付いて行くと、小柄な少女がもう一人の女性に熱く語っていた。


「クリスお姉さま・・・。相変わらずですね」

「あ マリア・・・。すみません、少し熱くなってしまいまして。このような歴史的に価値のある物を見るとつい・・・」

 クリスと呼ばれた少女は少し恥ずかしそうに謝っていた。


「そちらの方は、お客さまですか? これはお恥ずかしい所をお見せしました。私はクリスと申します。一応学者をやっています。それでこっちにいるのが、私の護衛をしてくれている冒険者のアイシャです」

「俺は冒険者のアキラでこっちは仲間のレイです」

 お互いに自己紹介をしたが、クリスは貴族ではないのだろうか? 話し方や雰囲気にどことなく気品を感じるが、学者と言っているし、護衛も傍の女性しかいない。

 クリスは濃い青色の髪でショートヘアで眼鏡を掛けている。美少女と言ってもいいだろう。15,6才くらいでスタイルはちょっとロリ系かな? 服装は上級魔導師のローブを着ている。

 アイシャも冒険者にしては立ち居振る舞いが凛としてあまりにも恰好いい。貴族お抱えの冒険者だからなのだろうか?

 アイシャは茶髪でポニーテールだ。この人は美女だな。20才くらいで、スタイルはモデル並みだ。服装はファンタジーでは定番のミスリル一式を身に着けている。


「アキラお兄ちゃんとレイお姉ちゃんは、私たち三人をモンスターから助けてくれたの!」

「そうなのですか! マリア達三人が旅をしていたと聞いていましたが、そんなに大変な旅だったとは・・・。マリア達は私にとっても家族と同じですから、私からもアキラさんとレイさんにお礼を申し上げます」

「いやいや、たまたま居合わせただけだから・・・」

 クリスは深々とお辞儀をして、アイシャもそれに続いた。


カーン カーン カーン


 そんな事を話していると、鐘の音が聞こえてきた。

 すると、どこからともなくメイドが現れて、大広間への案内を申し出た。

 マリアとクリスとアイシャはメイドに続いて歩き出すが、レイはさっきの石像を眺めていた。


「レイどうしたんだ?」

「確か昔にこのような石像を私が斬ったような気がしたので・・・」

「え!? そうなのか? 2000年前って話だぞ・・・」

「はい・・・」

「クリスさ~ん! ここに斬った張本人がいますよ~!」って言いたくなるが、流石にやめておこう。ただ、レイはどっちの陣営に居たんだろう? 魔剣だし魔神だろうか? 聞いてみたいが何か石像を見る目がいつもと違って、悲しい色をしていた。今回は止めておこう・・・。



 メイドに案内されて俺達は広間に到着した。

 中に入ると大きなテーブルの上に数々の料理が並べられていた。食べる人数より明らかに多い。俺は料理を食べきるのをすぐに諦めた。こんなに食べたら腹が破裂してしまうだろう・・・。


「おお!アキラ殿とクリスが一緒とは、お互いに自己紹介は済んでいるのか?」

「はい、先ほど済ませました」

「そうか、それは何よりだ。では皆席に着いてくれ。・・・それでは、今日のこの出会いに、乾杯!」

 マリウスの号令と共に食事が始まった。フランスやイタリアなどの欧風料理が並べられており、トリュフらしき物もあったが、実物を食べた事無い俺は本物かどうか分からない。どれもこれも美味くて相変わらず食べ過ぎてしまった。

 食事中も俺の活躍をライアスやバルガスが話しているが、本人の居ない所でして欲しい。俺は褒められるのに慣れていないので、恥ずかしくてしょうがない。

 クリスの事も話題になった。マリウス達の遠い親戚で実家は王都にあって、兄が一人居て、その兄が家を継ぐようだ。なのでクリスは兄の手伝いができるように、色々勉強するために学者となったらしい。

 うん! クリスはいい子だ! シスコンの兄だったら可愛くて仕方がないだろう。

 しかも、マリウスの親戚ということは、貴族の可能性がかなり高いようだな。



「ところでアキラ殿とレイ殿は、この後どうするか決まっているのか?」

「そうですね・・・。南にあるルスンに行こうと思います」

「ほう・・・ そうか・・・」

 目的地を告げると少し考え込んで、クリスの方を見ていた。

 クリスの方は何か頷いているようだ。

 何を企んでいるんだ? この二人は・・・。


「実はクリスもルスンに行く途中に、ここに寄ってもらったのだ。目的地が一緒なら連れて行ってもらえないか?」

「私からもお願いします。学者としてルスンの遺跡に興味がありまして。向かっている途中なのです」

 そういう事か・・・ 護衛を雇ってもいいが、実力が分からないし素性も信用できるか分からないなら、俺を使った方が良いという事か。まあ、特に断る理由も無いし問題ないだろう。


「わかりました。ただ、明日は旅の準備をするので、明後日の夜明けに出発をしたいと思います」

「大丈夫です。では明後日の夜明けに出発ですね。よろしくお願いします」

「あと、明日は町の宿に泊まろうかと思います。なので冒険者ギルド前で集まりましょう」

「そうなのか? 明日も我が家に泊まっていけば良いのでは?」

「いえ、俺も冒険者なので、町で少しでも情報を集めたいので宿に泊まります」

「そうか・・・ それはそうだな。では宿の手配をしておこう」

「いえ、宿も俺が選びますから大丈夫です」

「そう・・・か・・・」

 マリウスはしぶしぶ納得していた。

 俺が気を使わずにゆっくりしたいから、宿くらい選ばせて欲しいもんだ。

 食事が終わり俺達は部屋へ案内される。豪華な部屋になっていて、天蓋のついたベッドなんて初めて見た。しばらくレイと話していると、風呂の準備ができたとメイドが呼びに来たので入りに行く。

 風呂は男湯と女湯に分かれており、銭湯のようだった。流石に壁には富士山の絵は無いが、豪華な風呂の象徴であるライオンの口からお湯が出ていた。

 ライアスやマリウスが入って来る事が無く、貸切状態で広い風呂を堪能した。

 風呂から上がるとレイとマリアが手を繋いで歩いていた。一緒に入っていたのだろう。


「あ! アキラお兄ちゃん! 今日はレイお姉ちゃんと一緒に寝ていい?」

「ああ 別に構わないよ」

「やった! じゃあお姉ちゃん行こう!」

 二人は手を繋いで俺と反対側へ歩いて行く。


 俺は部屋に戻り、一人で広いベッドに横になる。

 さ 寂しくなんか、ないから!! リアルではいつも一人で寝てたし!

 なんて、冗談半分、本気半分の妄想をしていると・・・。

 あ~~~~、なんか涙が出そうだ・・・。

 本当に悲しくなってきたので、さっさと寝る事にした。

 そして、少し寂しい夜が明ける。

可愛いクリスと綺麗なアイシャが仲間になって、次の冒険へ旅立ちます。

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