第26話 ライアスの屋敷へ
モンスター討伐の詳細報告をします。
「おお! アキラにレイじゃないか。お前たちも来たのか?」
「少し気になることがあったので、報告に来ました」
「そうなのか。じゃあ俺の話と一緒にモッドに聞いてもらうか」
「モッドさん?」
「ああ! ここのギルド長をしている、この男だ」
「初めましてアキラさん、ここのギルド長をしているモッドです。詳しい話は奥の部屋でよろしいですか?」
どうやらバルガスと一緒に部屋から出てきたおっさんがギルド長だったらしい。
「構いませんよ」
「では、こちらへ・・・。君はもう仕事へ戻ってくれ」
「はい 分かりました。アキラさんギルドカードをお返しします」
ここに来た理由をバルガスに伝えると、ギルド長モッドと一緒に聞くらしい。受付の女性からカードを返してもらい、奥の部屋へ入って行った。
「では、アキラさんの報告を先に聞かせてもらえますか?」
「わかりました。 俺達はこれまで3回強力なモンスターに遭遇しています。それも絶対に出現しない場所でした。ただ、モンスターが現れる前に天候が変化を確認しています。バザーで起きたのは『霧』、ドルフィン号で起きたのは『雨』で、この2つは普段でも起きるのですが、モンスターが現れる時には、まず起きない状況でした。そして顕著なのは、ミシリア大陸のマルトからライラへの街道で『雪』が降った事です。この場所で雪は降らないと一緒にいた冒険者が言っていました。そこに現れた強力なモンスター『スノーラビット』『クラーケン』『レッドクリスタルスコーピオン』を倒すと天候が回復していました。この3つからすると、急激な天候の変化、もしくは異常気象が起こる場所は注意が必要と思います」
「なるほど・・・。実は・・・、他の地域でも強力なモンスターが現れたと、報告が来ています。天候の変化があるのかどうか、そこまでの報告がきていないので、分かりませんが、警戒するための材料になるでしょう。これらの件はギルドの連絡網で各地に通達しておきます」
「そうですか、他の地域でもあるのですか・・・」
俺はちょっと安心した。もし何かのイベントが始まっていて、俺が居る場所だけ強力なモンスターの襲撃があると、俺が原因と疑われてしまう。下手をすると俺が黒幕と勘違いされて、討伐クエストができてしまう可能性がある。そうなったらシャレにならない。
「俺の方はさっき言った通りだ。アキラ達も知っているバザーを解散した経緯だな」
「そうですか、わかりました。これらの件は我々が各所に報告しておきます。アキラさんには冒険者として、何か依頼をする時があるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」
「はい、任せてください」
「それと今回のモンスター討伐の報酬が出ているので、帰りに受け取ってください」
「わかりました」
報告が終わった俺達とバルガスは部屋を出た。
受付で報酬を受け取ると200万Mもあった。
それと今回の討伐でギルドランクがAランクへ昇格した。
用事が終わりギルドの外へ出ると、ライアス達と一緒にいた執事が馬車を用意して待っていた。俺とレイとバルガスは馬車に乗ってライアスの屋敷へ向かった。
15分程走ると、ライアスの屋敷へ到着した。
屋敷と言ってもかなりの大きさだ。敷地の入口の門を通ってから館まで馬車で10分ほど掛かっている。全ての土地の広さは東京ドーム何個分?って感じに広い。この屋敷の規模なら相当な力を持った貴族のようだ。
到着して馬車を降りて館の玄関を見ると、かなり大きな木製の扉だった。重厚感があり高級そうな材質だった。
案内されて中へ入るとライアス達が出迎えてくれた。
「ようこそ我がハーミット家の屋敷へお出で下さいました。アキラ殿 レイ殿 バルガス殿 歓迎いたします」
「「は! はい!」」
「お邪魔する」
急にライアスに丁寧な言葉で歓迎されたので、俺とレイは驚いてどもってしまった。バルガスは慣れているのだろう、一言だけ返していた。そういえば、この男は貴族だったな・・・。
「ハハハ 済まない、済まない。急に畏まった挨拶で驚かせたようだな。これはこの屋敷に入る儀式みたいなものだ。今からはいつも通りで大丈夫だ」
「はあ・・・ バルガスさんは知ってたんですか?」
「ああ いつもの事だからな! お前達がどうするのか見たくて黙っていたんだ。ククク・・・・」
「あなたは、相変わらずですね」
バルガスの悪戯にタリムがヤレヤレとした顔をしていた。
「皆さんようこそお出でくださいました。歓迎しますわ」
「お兄ちゃん! お姉ちゃん! お爺ちゃん! いらっしゃい」
ミラルダとマリアの歓迎も受けた。
「挨拶も終わった事だし、ハーミット家の当主である父と母に会って欲しい」
「わかりました・・・」
「はい!」
「わかった」
ライアスに案内され屋敷を奥へ進む。
屋敷の内部は古さを感じさせるが、隅々まで手入れが行き届いているようで芸術品の深さのような感じがした。重要文化財みたいなものかな?
しばらく歩いて応接室のような場所に着いた。
コンコン
「ライアスです。お客様をお連れしました」
「入ってくれ」
部屋の中へ入ると、威厳のありそうな白髪のおじ様と優雅なマダムが出迎えてくれた。
「ようこそ我がハーミット家へ。私が当主のマリウス・ハーミットです。こっちが妻のエールナ・ハーミットです。アキラ殿 レイ殿 バルガス殿、歓迎いたします」
「ご招待いただき、ありがとうございます」
「ご招待ありがとうございます」
「招待に感謝します」
ライアスにしてやられたので、今回はちゃんと返事をしてやった。まあ、親父さん達はライアス程フランクな性格ではなさそうなので、この対応で間違いないと思うがな。
チラッとライアスとバルガスを見ると、なんだか少し悔しそうな顔をしていたので正解だったようだ。そう何度もやられる、俺ではないぞ!
「とまあ 堅苦しい挨拶はここまでにして、バルガス殿久しぶりだな!」
「そうですなマリウス様も、お元気そうでなによりです」
「元気が取り柄だからな! ハッハッハッハッハッ」
やっぱりライアスの親だったな。貴族の慣習というのもメンドクサイものだ・・・。
「こちらにおられる、アキラ殿とレイ殿には、ライアスとミラルダとマリアが2度も助けられたと聞いたが、本当にありがとう! ライアスはいずれこのハーミット家を継ぐ者であり、ミラルダはライアスの傍で支える女性であり、マリアはいずれこの家を継ぐ者になるだろう。という建前があるが、息子夫婦と可愛い孫を助けていただき感謝します!」
「私もマリウス様とエールナ様を、悲します事が無くて嬉しいです」
「そう言ってもらえると、ありがたい。あと儂達は様と呼ばんで大丈夫だ。ライアスの事も呼んでいないのだろう? バルガスのヤツも儂と二人で話す時は呼び捨てだしな」
「そうですか。ではマリウスさん、エールナさん今日はお世話になります」
「はい ゆっくりくつろいでください」
堅苦しい言葉使いをしなくて済むなら、気が楽でいい。俺の言葉にエールナが答えた。
「そうだ、もう少ししたら、夕食の準備が整うだろう。アキラ殿とレイ殿は部屋へ案内するか? それとも屋敷内を自由に見学してもらってもよいが、少し広いから迷う事になるかもしれんし・・・」
「お爺様! 私が案内します!」
「おお! マリア、任せても大丈夫か?」
「はい! 大丈夫です!」
「では、マリアに案内を任せよう。 鐘が鳴ったら広間へ連れて来てくれ」
「はい! 分かりました! では、行きましょう。お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
マリアは俺とレイの手を引いて部屋を出て行った。残っている人達はその様子を微笑ましく眺めていた。
ライアスの屋敷を探索しましょう!
何が出るかな♪ 何が出るかな♪ みたいな感じですかね!




