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第21話  バザーの夜

お酒は気の合った人と飲むと、おいしいですね!

 俺達が宿へ戻ると、ライアス夫婦とバルガス夫婦と執事二人が談笑をしていた。

 準備が済んで、時間が空いたのだろう。

 俺が送ったプレゼントの髪飾りを付けている、レイとマリアを見て全員が褒めていた。特に二人が本当の姉妹みたいだと言われた時は二人とも顔を見合わせて、照れながら微笑んでいた。お互いに心では、姉妹みたいに思っていたのだろう。


 部屋に荷物を置いたら、夕食を食べると言っていたので、すぐに食堂へ向かう。

 今日の泊り客は俺達だけらしいので、バルガス夫婦と執事二人も同じテーブルに付いて食事をするようだ。

 俺には二十歳を超えているという事で酒が出てきた。リアルではそれほど強いわけではないので、少しだけにした方がいいだろう。レイは酒が飲めないと言って断っていた。見た目はまだ未成年に見えそうだしな・・・。


「では! 俺たちの再会とアキラ殿とレイ殿との出会いに乾杯!」

「かんぱ~い!」

 出された料理は、昨日泊まった宿ほど高級感は無いが、お袋の味というか安心できて、凄く美味かった。

 お酒も少しずつ飲んでいたのだが、ライアスとバルガスのペースが速くどんどん注がれて飲まされた。

 ただ、現実と違って潰れる事無く、気持ちいいほろ酔い状態が続く。

 食事が一段落ついた頃に、バルガスが昨日の襲撃について聞いてきた。


「それにしてもよく、海上のクラーケンを倒せたな。あいつは海に出ると回復力が格段に上昇するから、並みの強さじゃ倒せないと聞いたが・・・」

「まあ、一緒に戦っていた魔法使いの杖を借りて、魔法で一気に攻めたんで何とかなりましたね~・・・」

 借りてとは言ったが、実際には強引に奪ったのだがな。それとクラーケンが海に出るとパワーアップするなんて話は聞いたことないぞ!


「魔法で? アキラは魔法剣士なのか?」

「まあ、そうですね・・・。サンダーストームで15本の足を壊して、サンダーランスで2本の触腕を壊した後に、本体をサンダーバレットで蜂の巣にして倒しましたね~・・・」

「ちょっと待て!? 17本足のクラーケンだと! クラーケンは足が1本増えるとだいたい1割強くなると聞いたが・・・、17本って事は通常より7割強いって事だぞ!」

 なるほど! だからあのクラーケンは強かったのか普通のクラーケンの70%増しの強さとは、漫画とかで限界を超えて戦う人たちが120%の力で体を壊すのに、クラーケンは足を増やすだけで170%の力になるとは、・・・・・卑怯だな。


「まあ、なんとか倒しましたからね~・・・」

「さっきの話し方では、あっさり倒した気がするのだが・・・」

「いやいや レイにも手伝ってもらったので、俺一人の力じゃないですよ~・・・」

「レイは何をしていたんだ?」

「全部の足の攻撃から、冒険者の皆さんを守ってました!」

「お前たち二人は規格外の強さのようだな・・・」

 クラーケンの戦いを聞いてきたバルガスが、俺達の強さに呆れているようだ。

 もしかして・・・ 酒の勢いで余計な事まで喋ってしまったか? あまり強さの事を言わない方がよさそうだな。もう手遅れだけど・・・。


 その後も、話は尽きる事無く続いていった。バルガスとライアスの出会いや、ライアスとミラルダが幼馴染みだった事や、執事二人がライアスの子供の頃から世話をしており、昔から今と変わらず手を焼いていたなど、途中でマリアが眠たそうにしていたので、ミラルダとマリアが抜けたが、話は夜が更けるまで続いた。


 そして、お開きとなりそれぞれが部屋へ戻って行く。

 俺は酒が入っているのと壁が薄い事もあり、今日はレイとの行為を控えておく事にした。

 俺とレイの営みはまだ、マリアの教育に悪いからな。聞えたらライアス達と顔を合わせづらいしな・・・。



 夜中の4時ごろに嫌な空気を感じて目が覚める・・・。酒も飲んでいるし、眠りについてから1時間ほどしか経っていないが、頭が冴えていくのがわかる。隣ではレイも俺と同じものを感じて目が覚めたようだ。

 窓の外を見るとまだ暗く、うっすら霧が出ていた。

 俺とレイは身支度を整えて部屋から出ようとすると、ドアの向こうに気配を感じた。


 コンコン

「アキラにレイ起きているか?」

 バルガスの声だった、俺はドアを開けた。


「おお! 嫌な空気を感じたんで、二人を起こしに来たんだが、身支度が終わっているとは流石だな!」

「それよりもここに居る全員を起こした方が良さそうです。この前のクラーケンと同じ感じがします。・・・それと、この場所で霧はよく出るのですか?」

「霧? ああ 出る事は出るが、今の時期は珍しいな」

「そうですか・・・」

「何かあるのか?」

「いえ、俺の気のせいかもしれないので、今は何も言えません・・・。とりあえず全員を起こしてください。俺達は外を見まわってきます」

「分かった! 任せておけ! 他の冒険者にも声をかけておく!」

「お願いします!」

「行こうレイ!」

「はい!」

 今までに強力なモンスターが出現した時に、天候の変化があった・・・。今回の霧はただの霧だろうか・・・。



「レイ モンスターがもし襲撃してきたら、守る範囲が大きい俺達が不利だ。俺の魔法でも、このバザーの全てをカバーできない。そうなると分かれて敵を倒す必要が出てくる。だから、魔剣を渡しておく。レイの判断で全力の炎を使って、なるべく数を減らすようにしてくれ」

「わかりました! それと、ご主人様・・・ この霧もクラーケンが現れた時と同じと思うのですか?」

「いや、まだ確定では無いが、可能性として考えておいた方がいいだろうな・・・。対応が遅れれば、余計な犠牲が増えるかもしれない。もし、手に負えないモンスターが出た時は空に炎を打ち上げてくれ、すぐに助けに行く!」

「わかりました! 全力を尽くします!」

 俺はレイに魔剣を渡して宿を出る。

 二人で閉まっているバザー前の道を東へ向かって歩いているが特に異常は無い。

 バザーの端にきて荒野の方を見るが特にモンスターは見当たらない。

 相変わらず薄い霧が出ているだけだ・・・。


「なあ! あんた達! モンスターが来るって本当か?」

 俺とレイが荒野の方を見ていると、寝ている所を起こされたと思われる冒険者が話しかけてきた。


「いや 来るかどうかは分からない。だが嫌な感じがするんだ」

「そうなのか? 俺は鈍いんで何も感じないぜ?」

「まあ、気のせいならそれでいいさ。後で笑い話で済むからな」

「それはそうだな!」

「まあ、・・・・・・いや 何でもない」

「? じゃあ俺は向こうを見てくる、またな!」

 俺は危なく去って行く冒険者に、死亡フラグを立てる所だった。『まあ、モンスターが来なかったら明日、酒でもおごってやるよ』『そうか! 楽しみにしている!』となって戦闘が終わると、すでに冷たくなっている冒険者を見つける。そして墓に酒を掛けて『うまいか・・・』なんて事になって欲しくないからな・・・。

 本当にこうなるか分からんが、気分的に良い方を選ぼう。

死亡フラグは立ててはいけません!

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