第19話 謎が一つ解けた・・・
初めて馬車に乗ります。
朝になり食事を食べて外に出ると馬車が2台止まっていた。
ライアス達と俺達に分かれて乗ると思っていたら、執事達が別に乗るらしい・・・ という事はライアス一家と俺とレイが1台に乗るみたいだ。なんか色々と聞かれそうだな。
馬車は移動速度がそこそこ早いので、モンスターの遭遇率がかなり減る。なのでお金を持っている人達が利用する事が多い。だが、全くモンスターに出会わないわけではないので、御者と別に魔法使いが乗っている。モンスターが近付いてきたら魔法を撃って、相手が怯んでいる所を駆け抜けるようにしている。基本的にモンスターが大勢で現れる事が少ないので、この方法で助かるが極稀にモンスターの集団に襲われて全滅する馬車もある。そのため貴族は冒険者を雇って護衛に付ける事が多い。
まあ、今回は俺達が一緒に乗っているから必要ないだろう。
目的地のメルキアまでは馬車で大体8時間程かかる。途中で『アントス荒野』という荒れ果てた場所を通らなければならない。荒野と言っても道はあるし、途中にはオアシスのような場所もある。そこには旅人や商人達が集まりバザーのような物が毎日開かれている。そこで一旦休憩をして先に進むのが一般的になっている。
そして、馬車に乗って少し走った時にライアスが話しかけてきた。
「アキラ殿 レイ殿、突然ですまないが、アントス荒野の休憩地で今日は一泊したいと思う。大丈夫だろうか?」
「まあ、俺は問題無いですよ」
「はい 私も大丈夫です」
おいおい! 流石に馬車に乗ってから断れないだろう・・・。
「そうか! それはありがたい! 実はそこには俺の師匠が住んでいるんだ。昨日の話もしたいし、アキラ殿とレイ殿を紹介したいのだ」
「師匠ですか?」
「あぁ・・・。 ちょっと言いにくいのだが、俺は13歳の時に貴族の暮らしが嫌になって家出をしたんだ。そして夢だった冒険者になるために、その師匠に弟子入りしたんだ。それから2年程旅をして一人でも冒険ができそうになってきたから、ギルドで登録をしたんだが、俺の捜索が出されていてあっさり家に連れ戻されてしまったんだ。まあその後、何度も家に来てくれて交流が続いているが、あの2年間で貴族以外の暮らしや苦労が少しわかった気がしたんだ」
「それは貴重な体験ですね」
「そうだな。それから俺は自分に何ができるかを考えた。そこで俺は貴族の立場を最大限に使って改革をしようって決めて行動を始めたんだ」
「改革ですか?」
「ああ! 最近やっと実を結んできてな、主に流通の強化だ。強い武器などは大きな町なんかに集中してしまって、地方では手に入りにくい。そうなると町を守る自警団や冒険者が弱い装備で戦わなければならない。それと、ミシリア大陸では魔術ギルドが無いだろう? だが、魔法使いは戦術の幅を広げる役割が大きい。だから魔術ギルドをマルトに造ってもらったのだ」
「それで最近店の品揃えが良くなってきたのと、マルトに魔術ギルドができたんですね」
なるほど! 一つの大きな謎が解けた。ライアスが色々と動いていたのか。なかなかのやり手だな。
「そうなんだ。魔術ギルドの状況をマルトまで行って見てきた帰りに、あのクラーケンだからな・・・。ミラルダとマリアに世の中を見せたくて一緒に行ったのだが、あの時ほど後悔したことは無い。改めて、ありがとう!」
「いえいえ、お礼はもう十分ですから、気にしないでください」
「そうですよ。アキラ殿もこう言ってくれているので、しつこいと嫌われますよ」
「そうです! 父さま!」
そうそう二人の言う通りですよ! 俺も心の中で同意した。
「それに! あなたは後悔したと言っていましたが、旅に出た以上、無事に帰れる保証はないのです。その覚悟をして私とマリアは同行しています。もし途中で死んでしまっても、あなたと共に行動を起こしてきた人たちが後を継いでくれるでしょう。だから、あなたはどんどん進めば大丈夫なのです。進む道が正しければ皆が助けてくれます。もし間違っていたら皆が戻してくれます」
「そうです! 父さま! 間違っていたら私が叩いてでも戻します!」
「ミラルダ! マリア!」
ガシッ!
俺の目の前で三人の親子が強く抱き合っている。
なんて立派で熱い家族なんだ。こんな人が政治家になれば・・・ いやいやこの世界では政治家か?貴族だし・・・。
俺とレイはしばらく呆然として三人を見ていた。
ライアス達三人が座りなおして、俺とレイが回復した時に丁度アントス荒野に入る所だった。
荒野を馬車で疾走すると、乗り心地が悪そうですね・・・。




