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第15話  雨中の戦い

優雅な船旅が一転します。

船上が戦場です・・・・・・。

 二日目の朝は、日が少し昇った時間に目が覚めた。

 隣にはまだレイが寝息を立てていた。昨日の夜に頑張ってしまったので仕方ないだろう・・・。

 レイの寝顔が可愛いかったので、ニヤニヤしながら眺めていたら、レイが目を覚ました。


「あ・・・。 おはようございます。ご主人様・・・」

「おはよう・・・」

「んっ・・・」

 レイが目を覚まして、フニャと可愛く笑ったので、我慢できずにキスをする。

 しばらくレイとの口づけを、楽しんだ後に朝食を食べに行った。


 午前中は昨日と同じで甲板で海を眺めて過ごした。

 今日もイルカの群れが船に併走して泳いでいた。

 昼食を食べた後に、操舵室へ行ってみる。


 コンコン!

「すいませ~ん! 入ってもいいですか?」

「どうぞ!」

 ノックをしてから中に入っていった。


「ようこそ! ドルフィン号の操舵室へ、私が船長のマゼットです」

「こんにちは。俺がアキラでこっちがレイです」

「こんにちは!」

「お~! あの凶暴なモンスターを退治した冒険者の方々でしたか。この船にはモンスター避けの魔石が付いているので安心してください。もしもの場合でも、護衛の冒険者を雇っているので大丈夫です。ゆっくりくつろいでいてください」

「そうさせてもらいます」

 挨拶の後は船長に船の説明を聞いて、雑談などをした。

 この船は元々違う名前だったが、航海の度に必ずイルカが寄ってくるらしい。そのため多くの人が、この船をドルフィン号と呼び始めたので、それを正式な名前に変更したということだ。確かに昨日も今日もイルカが寄って来ていた。


 ちなみに舵も触らせてもらった。

「面舵いっぱい! ヨーソロー!」なんて事はしていないが、やりたくなるな!


 しばらく話していると船の進行方向の空が暗くなっているのが見えた。

「ん? 雨は降らないはずだったんだが、おかしいな?」

「そうなんですか?」

「そうですね・・・。漁師たちの予想では1週間ぐらいは、晴れの日が続くと言っていたので、大丈夫だと思ったんですが・・・。たまには外す事もあるでしょう。ただ、雨が降ると少し速度を落とすので到着時間が遅くなります」

「天候の変化は仕方ないでしょう。それに俺達は別に急ぎの旅ではないので問題無いです」

「そう言ってもらえると、助かります。ただ、雨が降っている時は足元が滑るので危険ですから、甲板に出るのを控えてください」

「わかりました。そろそろ俺たちは戻りますね」

「はい、ごゆっくり船の旅をお楽しみください」

「ありがとう」

「ありがとうございます!」

 少し忙しくなりそうだったので、俺達はお礼を言って部屋へ戻ることにした。



 部屋に戻ってしばらくレイと話していると、窓の外が薄暗くなってきたので夕食を食べに行った。

 夕食を食べて部屋に戻ると、窓に雨がポツポツと当たっていた。

 天候の変化は雨だけで、波が高くなったり風が強くなったりは、無さそうなので船酔いの心配は大丈夫そうかな?

 夜が更けてきて寝る時間になったが、なんとなく気分が乗らなかったので、今日の夜はエッチをせずにキスだけして寝た。



 眠っていたのだが、嫌な空気を感じて俺とレイは目を覚ました。

 窓を見ると、まだ暗いが船の周りには光る玉が浮かんでいた。

『ライティング』だ。名前の通り、玉の周囲を明るく照らす魔法だ。

 そして、照らされた水面には、大きな魚のヒレのような物が所々に見えた。

『半漁人』『魚人』とがいるらしい。

 半漁人は人型で全身に鱗があり、手に持った銛で攻撃してくる敵だ。

 魚人は魚から手と足が生えていて、突進や尾びれを振ってくる。厄介な攻撃として口から水弾を飛ばしてくる事もある。

 ゲームでは2匹共、海岸近くで遭遇する敵なので陸上で戦う。だが、今回は船上での戦闘だ。もし、海に転落したら何もできずに、やられてしまう可能性もある。しかも、雨はまだ降っている・・・。足を滑らせて落水しないように注意しなければならない。


 俺とレイは装備を整え、甲板へ向かう。

 出口には船員が3人いて、外の様子を伺っていた。


「モンスターがいるのか?」

「はい、そうなんです。少し前から船の周りに集まってきているみたいで・・・。こんな事今まで無かったんですが、危ないので外には出な・・・・」

「敵が上がってきたぞー!」

「撃ち落とせー!」

 船員の話の途中で甲板から怒声が聞こえてきた。


「俺たちも手伝うぞ!」

「はい!」

「す すみません! お願いします!」

 船員の返事を聞く前に俺とレイは甲板に飛び出す。

 後ろの方で船員が叫んでいた。


 船の上は戦場になっていた。

 魔法使い四人が船に飛び上がってくるモンスターを撃ち落としているが、数が多いので何匹かは船に上がってくる。上がってきたモンスターは三人の戦士が叩く。そしてサポートとして僧侶二人が回復を担当する戦いだった。

 だが、魔法使いは上がってくるのを阻止できても、威力が弱く倒せていない。このままでは先にMPが尽きてしまうのは明らかだった。

 俺は前方にレイは後方に別れて、上がってきたモンスターを倒して行くことにした。

 新しい剣で攻撃力が上がっているので、一撃で倒して行くが他の冒険者はそうはいかない。

 俺は全員に能力アップの補助魔法をかけると、流石に一撃では倒せないが少し戦闘がしやすくなったようだ。

 船上の敵を倒しながら海を見るが、あまり見えない。俺はライティングを何度か唱えて、海を明るく照らした。能力の違いなのだろうか、他の玉より倍以上は明るい。遠くから見ると、イカ釣り漁船のようだろう。

 明るくなった水面を見るとまだ4、50匹はいそうだ。かなりの長期戦だな。

 俺は船上を見ながら戦っており、他の冒険者が少しダメージを受けた時に全体回復魔法『オールヒール』を掛けていた。



 30分ほど戦っていただろうか、敵の数が減ってきていた。

 俺とレイ以外の冒険者は、徐々に疲れの色が見え始めていた。魔法使いと僧侶はMPが尽きかけているようで、マジックポーションを飲んで回復している。

 安くは無い薬なんだが、この状況で出し惜しみをして、死んでしまったら意味がないからな。


 しばらくして敵が上がってこなくなった。海を見るとまだ少し居るようだが、船上に上がるのを諦めたのだろう。全員に安堵の表情が現れた。


 ドォーン!


 船に大きな衝撃があり、船足が急に遅くなった。

 突然の揺れで全員が床にしゃがみ込む。

 そして船べりから出てくる白い柱のような物体。


 俺の目には見えていた。それは足だ! しかも『クラーケン』だ!

 リアルでは伝説の怪物とされ、ダイオウイカがモデルだろうと言われているが、ゲームの中には確かに存在する。中級ダンジョン『海岸の洞窟』にいるボスモンスターだ。こんな序盤で出るヤツじゃない。出るとしても負けイベントになるぐらい強い。魔法を使うことは無いが、強力な自己再生能力と物理攻撃を持っている。生半可な攻撃では、すぐに回復するので倒すことができない。


 なんで、この前といい今日といいこんな強力なモンスターだ出るんだ! もしかしてライティングの明るさに寄ってきたか? イカだし・・・。

 そんなことを考えてる場合じゃないな。ほとんどの人が疲れていて、しかも一瞬、気が緩んだタイミングだ。下手をすれば死人だ出る可能性がある。


「気を付けろ! クラーケンだ!!」

「!?」

 全員が俺の方をむいて愕然としていた。


「む 無理だ・・・。勝てるわけない・・・」

「おわりだ・・・」

 なんて声が聞こえてくる。あれ? 正体を言ったのが、ダメだったのか? 気合を入れるつもりが逆効果だった?

 クソ! こいつら! 「諦めたらそこで試合終了」という名監督の言葉を、知らんのか!


「とりあえずクラーケンの足を斬れ! 船の速度が上がれば振り切れるかもしれないぞ!」

「わ わかった!」

「船長! 速度を限界まで上げてくれ!」

 走っている船に追いついたクラーケンだから、多分無理だとは思うが折れかけた気持ちを戻すのには有効だろう・・・。

クラーケンのモデルはダイオウイカとされています。

ダイオウイカ・・・ 釣ってみたいですね!

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