第13話 港町ライラ
強くてニューゲームって、こんな感じですかね~?
「あんたら! 凄い強いじゃないか!」
「すまない! 助かった!」
「ありがとうございます!」
・・・
・・
冒険者や商隊の人たちが俺とレイの所に寄ってきて感謝の言葉をかける。
「いやいや、ちょっと待ってくれ。感謝の言葉はありがたいが、まだモンスターの出てくる林の中だ。話は林を抜けた所でしてくれ!」
「それはそうだな・・・。そうしよう。馬車の状態を確認してくれ! それと、すまないが君たちは左右に分かれて護衛をしてくれないだろうか? さっきみたいなモンスターが出ると、君たちしか対応ができないようだ」
俺の提案に商隊のリーダーが納得した。更に護衛のフォーメーションの提案をしてきた。
別に断る理由は無いので素直に受け入れた。
俺が左側でレイが右側だ。戦闘を見ていた方に居るのが、他の冒険者は安心するだろう。
馬車の点検を進めているが、どうやら魔法を受けた馬車も、穴が少し開いているが問題無く進めるようだ。
そのあとはモンスターが出る事無く林を抜けた。
周囲が見渡せる小高い丘で休憩を取ることにした。
そうなるとやっぱり・・・。俺とレイの周りにワラワラと集まってきた。
みんなが感謝の言葉と強さの質問を言ってくる。
まあそうなるだろうな・・・。
「まあまあ、みんな落ち着いてくれ。俺たちは世界を冒険していたけど、ギルドに入ったのは最近なんだ。だからFランクなんだ」
「そうなのか? だったらなんでそんな装備なんだ?」
チィ! そこに気が付くか! 俺の考えた言い訳が通じないのか!
「あー それは・・・。カジノで借金をして売ってしまったのさ!」
「そ そうなのか? ギャンブルは程々にしないとな・・・」
ヤケクソ気味な言い訳をしたら、なんか少し評価が下がったみたいな気がする。
仕方ないじゃないか。俺は課金しまくって最強ですとか、レイは伝説の魔剣ですとか正直に言えないだろ! この場合!
レイの方にも色々質問されるが、俺が誤魔化しながら答えてレイが同意する形になっていた。
しばらく休憩して港町へ出発する。
俺は質問責めで休憩した気がしないのだが・・・。
港町へ着く間にモンスターが現れたが、俺とレイは戦闘をすることがなかった。
他の冒険者たちが、「こんな敵にあんたたちの手を、煩わせるわけにはいかない!」と言って戦っていたのだ。まあ、スノーラビット戦では役に立てなかった事を悔いているのだろう。だが、そんな気持ちがあれば、強くなる余地はあるだろう。何事も向上心というのは必要なのだから。リアル世界のニートが何を言っているのだ! と言われそうだが・・・。
しばらく歩くと港町が見えてきた。
町の入口に近付くいてくると、多くの人が集まっているのが見える。
そして、町に入ると住民が歓迎してくれた。
そのままの足で冒険者ギルドへ行った。
「はい。これでクエストは完了になります。皆さんありがとうございました。特にアキラさんとレイさんには、いくら感謝をしても足りないぐらいです。それでは皆さん、お気を付けて冒険を続けてください!」
商隊のリーダーがそう言って商会へ行った。
残った冒険者はギルド報酬を受け取るだけだ。
「なあ、アキラさんレイさん」
「ん!?」
急に『さん』付けで呼ばれてびっくりした。
「今回の報酬は二人で受け取ってくれ。俺たちは何も役に立っていないから、受け取る資格がない。これは全員で話し合った結果だ」
俺はてっきり報酬は山分けと思っていたのだが、自分たちは要らないと言うとは。冒険者に誇りを持っているのだろう。
「いや、このクエストは俺たち全員の仕事だっただろう? たまたま今回は敵が強かった。そしてたまたまアンタたちが力不足だった。でも、生き延びたということは、これから強くなれるということだ。今回の報酬は強くなるために使って欲しい。そして、強くなったら今回みたいな事態になった時に皆を救えるようになってもらいたい」
と俺は言ったが心のなかで、「クサッ!」と思っていた。リアルでこんな事を言うと「何言ってるんだwwwww」とか草が生えそうだ・・・。
だがここは異世界だった。
俺の目の前で殆どの冒険者が涙を流していた。特に戦士勢が泣き過ぎっていうぐらい泣いていた。熱血タイプなのだろう。
俺たちはギルドで報酬を受け取った。
『モンスターの正体 700M』『商隊の護衛 8000M』『モンスター討伐 10000M』を貰ったが特別報酬として50000Mも貰った。本来ならこの大陸で倒せる人がいないランクのモンスターを倒した事による報酬のようだ。
なんだか一気に金持ちになった気がするな。昨日までは船賃を心配していたのだが・・・。
とりあえず金が入ったので、船着き場へ行って乗船手続きをする。
「すいません。船に乗りたいのですが」
「はいよ! ギルドに登録してるかい?」
なかなか元気なお姉さんが対応してきた。
「はい。ギルドカードです」
「ちょっと待ってね・・・。ああ! あの商隊を護衛してきたアキラさんだね?」
「はい。そうですが・・・」
「あんたたちは、商会からお金を貰ってるからタダでいいよ! この町の恩人だしね!」
「そうなんですか?」
「それはもちろんさ! 明日の日の出頃に出発するから、出発前に宿に迎えを寄越すよ」
「そんなことまでしたもらわなくても・・・」
「いいから! いいから! 英雄はどっしり構えていな! ちなみにどの宿に泊まってもタダになるからね!」
なんだか俺たちの評価がどんどん上がっている気がするが、正直勘弁してもらいたい。俺はひっそりと暮らしたい人間なのだ!
だが、俺の願いも空しくどこに行っても英雄扱いだ。しかも、壊れた剣と盾を買いに行ったら、店主が最上級の剣と盾をタダにすると言い出したのだ。だが俺の神経は流石にそんな物をタダで貰うほど図太くない。
なので店主と話し合い、剣と盾と鎧を2セットで3万Mで買い物をした。ちなみに通常価格だと5万Mになる。帰り際に店主は「全部タダでもいいのに」とか言っていた。どんだけ気前がいいのだ。儲けは考えていないのだろうか?
俺たちは『フランベルジュ』『アイアンシールド』『シルバーアーマー』を2つずつ手に入れた。
買い物を終えた俺たちは宿を取ろうと目の前にあった所に入った。
「あんたはアキラさん達だね?」
「はい そうですけど・・・?」
「うちの宿より、商会横の宿がこの町で、一番良い宿だからそっちに泊まってくれないかい?」
「ああ はい・・・」
どうやら適当な所で泊まるのはダメらしい。
勘弁してください・・・。
仕方なく言われた宿屋へ行く。
「いらっしゃいませ! アキラさんとレイさんですか?」
「はい そうです」
「では こちらへどうぞ!」
俺がそう言うと何の確認も無しで部屋へ案内される。
詐欺師が俺たちを騙って来たらどうするのだろう?と考えるが流石に俺たちの人相とかは知れ渡っているだろう。
案内されたのは最上階の広い部屋だった。高級旅館の部屋といった感じだ。
食事も部屋まで運んでくれて食べた。しかも、凄い量が次から次へと出てきて腹がパンパンだった。俺は出された食事は必ず食べる人間だったが、この日を境にその考えを改めようかと本気で悩むほど食べてしまった。
腹一杯で動けない内に、レイがどうやって敵と戦っていたのか聞いてみた。
ウサギが距離をとっている時はアイスランスを使ってきたので、全て剣で斬って解除していた。魔法解除のスキルがあるからこその戦い方だ。
次に間合いを詰めてから剣に炎を纏わせて斬りつけたが、剣自体が弱いため一撃で倒せなかった。ウサギが両腕を振り下ろしてきたので一旦後ろに下がったら、ウサギが逃走を始めた。
レイは剣の炎を飛ばしてウサギにぶつけると、ウサギが燃え上がって動きが止まる。レイは近付いて剣で2回斬りつけて倒した。
ということらしい。剣の炎は飛ばせるのか・・・。 便利だな。
しばらく話して腹が落ち着いてきた頃に二人で風呂に入る。備え付けの風呂は露天風呂になっていた。満天の星空の下で男と女がいればすることは一つだろう。だが、外に声がダダ漏れなので、声を押し殺しての行為だったが、そのシチュエーションに余計興奮してしまった。
今日も夜が明ける前に目を覚ます。早起きはツライが船に乗り遅れたら大変だから仕方が無い。
部屋に運ばれてきた朝食を食べて、身支度を済ませてしばらくしたら、港から迎えの人が来ていると宿の人が告げに来た。
次は船に乗って、次の大陸へ向かいます。




