呪いの杖?
サシェはリリアが持っている禍々しい気配を纏った杖を、興味深そうに眺めている。
他の人達も同じ様な感じだが、大臣の一人なんかは、明らかに嫌悪感を持った表情をしている。
周囲に立っている騎士達は、すぐにでも飛び掛かってきそうな程、余裕が感じられない警戒感を出している。
「あっ!?」
「どうしたカーラ!?」
突然の声に緊張感が高まる・・・。
「いえ・・・ その壊龍の杖は、耐性の低い人は悪い影響を受けやすいので注意してください」
「え・・・ そうなの・・・?」
これ以上緊張が高まらないように、少し声のトーンを落としてカーラが告げる。
しかも、初情報だった・・・。
「ちなみに悪い影響って?」
「人によって違うのですが・・・ 強烈な不安感、嫌悪感、恐怖などの精神的な影響です」
「なるほど・・・ 通りで・・・」
そう言って周囲を見渡すと、そんな表情をしている人達がいる。
「身体的には真冬の山に居るような寒気に頭痛やめまいが多いです」
「それは・・・ ちょっと辛いな・・・」
確かに頭に手を当てている騎士も居る。
「更に・・・」
「まだあるのか?」
「はい・・・ これは軽傷ですが、持続性があります」
「それって大丈夫なのか?」
「大丈夫です。それは、くしゃみ、鼻水、目の痒みです」
「それって・・・ 花粉症じゃぁ・・・?」
「・・・? 花粉症ってなんですか?」
逆に聞き返されてしまう。
流石にファンタジー世界には、現代病の花粉症は通じないようだ・・・。
仕方が無いな・・・。
「それで・・・ 何とかできないのか?」
「それは魔法耐性を上げれば影響は無いですが・・・ すぐには難しいですね・・・」
「流石にすぐにはレベルアップとかは無理だし、補助魔法で上げても限界があるしな・・・」
「そうですね・・・ それなら壊龍の杖の機嫌を直せば良いと思うのですが・・・」
そう言って俺とカーラはリリアが持っている杖を見るが、既に青くなった瞳の周りがバチバチと放電している・・・
「あぁ~・・・ ちょっと無理そうだな・・・」
「はい・・・ 見世物の様に好奇な目で見られて機嫌が悪くなったようですし、多分無理ですね・・・」
「さて・・・ どうするかな・・・ !?」
そういえば・・・ 前に壊龍の杖と話した時に・・・。
「リリア! ちょっとその杖をギュッ! って抱きしめてもらっていいか?」
「・・・? いいですよ~」
『ギュッ~~~~!』
リリアは手に持った杖を胸の谷間に押し付けるように抱きしめた・・・。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・♪」
「♪ ♪ ♪」
「もう・・・ いいかな?」
周囲を見渡して空気が変わったのを感じてから、リリアに声を掛けた。
「は~い♪」
そう言ってリリアが杖を解放すると・・・。
瞳は元の赤い色に戻っていた、何となくニヤけている雰囲気が漂っている気がするが・・・。
やっぱり・・・ エロ杖か・・・。
少し皆が落ち着く時間を取ったが、特に影響のあった人達からは、嫌悪感を表した眼差しが向けられていた。
「ご主人様・・・」
「まあ・・・ 大丈夫だろう」
レイが場の空気を察して俺にそっと語りかけるが、俺は大した問題では無いという感じでリリアの方を向いて答える。
視線の先にいる当事者であるリリアは、実際に大した事では無さそうで『あら~ 皆さん大丈夫ですか~?』という表情をしている。
そりゃ~ 被害者には申し訳無いが仕方がない。
そっちからの提案で杖を出して、杖を見た時にに精神的なダメージを負ったが、こっちの責任ではないから大丈夫だ!
うん! その方向で押し切ろう!
一応呪い解除の魔法を、こっそり掛けておいたのは内緒だが・・・。
それよりも少し驚いたのは、国王であるクラウスが杖の影響を受けていなかった事だ。
騎士団長のカイトや何人かは大丈夫そうだったのは分かるが、能力的に高くなさそうなクラウスが影響を受けていないのは・・・。
そこは流石に王様だし、金の掛かった装備をしても当然だろう・・・。
そう結論付けておいた。
聞いても『国家機密だ!』とか言って、教えてくれなさそうだしな・・・。
またまた忙しくなってきました・・・。
なんとか頑張ります!




