呼び出し
特に芸術に興味の無い俺でも分かる、趣のある調度品に彩られた部屋の席に俺達は座っていた。
俺の正面に座っているのは、この国の最高権力者である人でクリスの父だった・・・。
流石に今回は俺に非難を集中して来ないが、娘大好きな困った王様だ。
しかも何回か目が合っても、何も言って来ない・・・
何か言って欲しいが、言われたく無いし、全くこの状況は勘弁してくれ・・・。
ちなみに俺のいる側に座っているのは、俺とレイとアマネとカーラとリリアに、ギルド総長のケハナと研究所の所長レジオスと・・・ え~っと何て名前だったっけ? このおばさん?
まぁ いいか。
ちなみに、クリスとアイシャは王様側に座っていた。
まあ、他は何か見るからに大臣風の人たちだった。
恐らく・・・ モブだろう・・・。
そして話の内容は殆どリリアに関する事ばかりで、俺に話を振られる事が無い・・・。
俺・・・ 要る?
しかもここに連れて来られたのは強引だった。
冒険者ギルドから家に帰る途中に、ギルド総長が乗った馬車に「王様がお呼びです」と言って有無を言わさずに乗せられたのだった・・・。
俺が言ったのは「あっ ハイ・・・」だけだ・・・。
そんな事を思い出して時間を潰す程の余裕があるが、話をしているのは主に大臣風のおっさんとレジオスだった。
話始めはリリアの素性を確認する事から始まった。
どこの出身で今まで何をしていたのか?
リリア大橋を造ったのはリリアなのか?
そんな様な事を大臣風の一人・・・ え~っと、マレオだったかな?
その大臣①のマレオが問いかけて、リリアが答える。
その回答をレジオスがメモを取って、気になった事を更に質問する・・・。
の、繰り返し作業だった。
その内容は俺達が聞いた内容とほぼ同じだったが、流石に元魔王との出会いは言わない様に、事前に打ち合わせをしていたので話していない。
元とはいえ魔王と繋がりがあったら、怪しい事この上ないだろう・・・。
しかし、リリアの間延びした話し方のせいで、一つ一つの回答に凄く時間が掛かる・・・。
何せ橋の名前になる大昔の偉人と言っても問題無い程の有名人に、その当時の事を聞いているのだから仕方が無い・・・。
話し合い終わりなく続きそうになってきた時に、ケハナの横に座っていたおばさんが手を上げた。
「すみません・・・ 少しよろしいでしょうか?」
「ああ、サシェ構わない。話してくれ」
国王がおばさんの問いかけに答える。
あ~ このおばさんはサシェという名前だったな・・・。
よくよく考えたら自己紹介もサラッと流した感じで、この話し合いが始まった気がする・・・。
人の名前ってそんなにすぐに、覚えられないよ・・・ しかも、日本名じゃないし・・・。
「今までの内容でリリアさんが、あの橋を造った偉大な魔法使いという事が分かりました。そこで私が聞きたいのは一つだけです・・・」
「はい~ 何でしょうか~?」
「リリアさんは『マレオ・ルシファウス』という人物を知っていますか?」
「マレオ~ ルシファウスさん~ ですか~?」
「はい・・・ そうです・・・」
誰それ? リリアの話でそんな人の名前って聞いた事が無いが・・・。
その人の事を知らないとダメって事?
リリアも考えているが、思い当たる人物が居ないようだった。
しかし・・・ マレオっていうと、目の前にいる大臣と同じ名前だが・・・。
「ちょっと! サシェさん! 私が質問をすると言ったのに・・・」
「貴方達に任せていたら、いつになっても終わりません!」
「ぅ・・・」
サシェの質問を聞いてマレオが、抗議をするが一喝されて黙ってしまった。
弱いぞマレオ!
まぁ・・・ ちょっと迫力はあるけどな・・・。
マレオとのやり取りをサッサと切り上げて、サシェはリリアの方を向いて答えを待っていた。
リリアの方は思い当たる人を探しているようで、指を折りながら何かを数えていた。
そんなので分かるのか・・・?
「リリアさん・・・ 貴方はその人から、何かを受け取ったはずです」
「・・・・・・・・・・・・! あ~~~・・・ これですか?」
リリアは何か思い当たる事があったらしく、一つのアイテムを取り出した。
それは俺もよく知る、杖だった。
『壊龍の杖』元魔王が使用していた禍々しい杖。
リリアが何故か貰った物だった。
まだ、失踪してませんよ・・・。
ちょっと遅れてます。




