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帰宅

 魔法を唱えた瞬間に足元が消えて宙に浮いている感覚になる。

 昨日経験したが、流石にまだ慣れない・・・。

 ただ、経験した事によって心構えはできている。

 浮いている感覚の中でも、足を地面に着いている事を意識して力を入れていた。


 そして、目の前に俺のイメージ通りの家が現れる。

 その瞬間に地面に立っているという感覚が足から伝わってきた。

 今回はバランスを崩す事無く無事に転移できた。

 もちろんクリスとアイシャも大丈夫だった。

 ただ、地面を確認した後に、小さく安堵の溜め息をしていたので、少し緊張をしていたようだった。


 全員が転移した事を確認すると、周囲を見渡した。

 人の居ない事を確かめると、カーラが杖から分離する。

 流石に、この行為を他の人に見られる訳にはいかないからな・・・。


 再度周囲を見渡してから、玄関の方へ向かった。

 俺が扉の前に立ち、取手を掴もうとした瞬間だった・・・。


 ガチャ・・・ スゥー


「おかえりなさいませ。ご無事でなりよりです。」

「・・・ただいま」

「「「ただいまです・・・」」」

 ミラが扉を開けて、ルーシーは玄関の正面で出迎えてくれた。

 しかも、これ以上は無いという程のベストタイミングだった。

 もしかして・・・ 見てた? っていうぐらいだった。

 ただ、見られていたという感覚が無かったから、見てはいないと思うが・・・。

 俺だってこの世界に来てからは能力がカンストしているから、気配を何となく感じる事ができるようになってきた。

 まだ何となくだから、怪しいけどな・・・。

 まあ俺だけじゃ無くて全員が固まっているから、誰も気づいていなかったのだろう・・・。


「お帰りになられてすぐに申し訳ありませんが、皆様のお帰りが遅いので国王陛下が捜索隊を派遣される準備をしておりまして、本日が出発の予定でしたが・・・」

「え!? そうなんですか?」

「はい。この王都周辺に緊急クエストとしてAランク以上の冒険者を招集したようです」

「Aランク以上・・・」

 Aランク以上という事は、大体200時間以上プレイしている人達か・・・。

 もしくは俺のような課金プレイヤーだな。


「確か王都の入口に集まっていますので、先に帰還の報告をされる方が宜しいかと・・・」

「あ~・・・ そうだな! そうしよう」

「・・・そうですね! お父様に無事であると連絡をしないといけませんね!」

「では! クリス様! すぐに城へ向かいましょう!」

 本来ならば、王都へ入るには入口を通るので、そこで帰還の報告ができるのだが、今回は転移魔法で一気に家に帰ってきたため、捜索隊は準備を整えて出発してしまうだろう。

 しかも転移魔法は禁止されている魔法なので、公にできな俺達は焦ってしまい、声が上ずってしまった。

 クリスとアイシャは、急いでルーシーが手配した馬車に乗り込んで城へ向かった。

 俺達はギルドに緊急クエストの中止を言いに向かった。

 ただ、ギルドへ向かう馬車に乗る直前にルーシーから・・・


「お早く使用の許可を取ってください。でないと反逆罪になりますので・・・」

 と、耳元で囁かれてしまった・・・。

 その瞬間に冷や汗が吹き出した。

 ヤベェ・・・ 全部バレてる・・・。

 その後俺はギルドへ到着するまで、冷や汗は引かなかった・・・。

 怖いよ、くノ一・・・。


 そうして俺達は帰還の報告が無事に終わって、なんとか捜索隊の出発前に緊急クエストの中止をする事ができた。

 クエストの中止に残念な表情をしている冒険者も多数いたが、俺達が山小屋で会ったベテランそうな冒険者は無事を喜んでくれた。

 俺らの事を喜んでくれてありがたいが、彼等も無事に王都へ着いた事が分かりホッとした。

 その後に少しだけ、山小屋の先で何があったかを、掻い摘んで話して別れた。

 話の内容は余計な誤解を生まないように、多少脚色した部分ももちろんあった。


 俺には次の憂鬱なイベントが待っていた。

 クリスの父親である国王との謁見だった・・・。


 はぁ~・・・ 行きたくねぇ~・・・。


少し落ち着いたと思ったら、まだでした・・・

今回は少し短いです。

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