第10話 異変の兆し
大きな街へ到着します。
レイのステータスが高い事は分かった。
あとは持っているスキルだが、『剣聖』『魔法解除』『炎付加』『剣化』『共鳴』の5つだった。前の3つは以前聞いたものだ。『剣化』は魔剣になるためのスキルだろうが、それってスキルなのか? まあいいか。『共鳴』は他の魔武器がある場所が分かるって言っていたから、その事だろう。あとは・・・。
「なあレイ 炎付加のスキルを見せてもらっていいか?」
「はい。ただ、この剣だと最弱の火しか出せませんけど・・・」
「大丈夫だ 問題無い。次の敵で見せてくれ」
「はい わかりました!」
と話していると、俺たちにレッドスライムが近寄ってきた。
「いきます!」
レイが気合を入れると刀身に炎が現れた!そのままレッドスライムに斬りかかる。
ジュワボボボ・・・
レッドスライムが炎に包まれ消えていく。別に赤いからといって火属性を持っているわけでは無い。ただ赤いだけのスライムだ。
おお! これが終の秘剣か! いやいや・・・。
まるで『フレイムソード』だな。フレイムソードは素材を集めて作ることもできるし、中盤のダンジョンにも落ちている比較的手に入りやすい武器だ。ただ、どんな武器でも火属性になるのは有利だろう。獣系の敵なんかは種類が多いし、大体は火が弱点なのだ。
「凄いスキルだな!」
「ありがとうございます! ただ・・・。少し剣が歪んでしまったかもしれません」
「そうか? ちょっと見せてくれ」
「はい。どうぞ」
俺は剣を受け取る。見た感じでは、何も変化が見られない。道具名もショートソードのままだし大丈夫なのだろう。
「多分、大丈夫だと思うが。なんなら俺の剣を使うか?」
「いえ! 大丈夫です! ご主人様が大丈夫と仰るなら大丈夫です!」
なんだその理由は!? 俺が大丈夫だから大丈夫って・・・。剣の事なんて殆どわからないぞ!
「そういえばレイは魔剣を使う事はできるのか?」
「はい、できます。魔剣を使えば最大の炎を纏わせられます」
「そうなのか? それも一回見せてくれ」
「はい わかりました!」
俺は袋から魔剣を取り出し、レイに渡す。
またまたレッドスライムが都合よく近づいてきた。
「あいつで頼む!」
「はい!」
レイが気合を入れる。刀身に先ほどと同じ赤い炎が現れるが、すぐに色が青色に、そして白色へ変化した。更に揺らめいていた炎が収束され一筋の光の線になった。その状態でレッドスライムへ斬りかかる。
ジュッ!
おお! これは! 文字通り一瞬で蒸発して消えた! 剣が纏っている炎の熱量が凄いのだ。たしかに普通の剣でこれをやったら、剣が溶けてしまうだろう。
「これはもっと凄いな! これを防げるヤツなんていないんじゃないか?」
「いえ、そんな事ありません。昔の戦いでは何回か無効化される事がありましたから」
「そうなの?」
「はい」
この炎を無効化とはどんだけ強いんだ? そんなヤツとは戦いたくないな・・・。
「よし!俺とレイの実力ならこの地方の戦いは楽勝だろう。先に進むか!」
「はい!」
この調子なら、中級ダンジョンまではこのままの装備でもサクサクいけそうだ。
俺たちはマルトへ向かってどんどん進む。
マルトに近付くと新しいモンスターが現れる。
『グリーンスライム』と『ブルースライム』だ。レッドよりは強いのだが、俺たちの強さの前では何も変わらない。全て一撃で倒していく。
特に問題無く、マルトへ到着した。
マルトは大きな町だ。この大陸の商会本部があるし、何人かの貴族も住んでいる。小さいながらもカジノやオークション会場なんかもあったりする。まあ、ゲーム初期のカジノやオークションなので大したアイテムなどは無い。なので行くだけ無駄だろう。
予定より早く到着したので、日暮れまでは少し時間があるから先に町を散策するかな。
「まだ日暮れまで時間もあるし商会本部に寄っていくか?」
「そうですね。早い内に商会長さんに挨拶をしておいた方がいいですね!」
人通りの多いメインストリート沿いに商会本部がある。3階建ての大きな建物だった。隣にある平屋の冒険者ギルドと比べると大きさの違いがよく分かる。中には10数人いるようだが、なにやらバタバタしていて忙しそうだ。
入って正面にあるカウンター越しに受付の女性に話しかける。
「すみません。商会長さんとお話をしたいのですが?」
「失礼ですが、お名前をお願いします」
「レーヴといいます」
「レーヴ様でございますね。お話は伺っております。こちらへどうぞ」
そう言って俺たちを案内する。伺っていると言っていたのだが、どうやって伝わったのだろう? 今日の朝にリーン村で旅に出ると言ったばかりなのにな。伝書鳩でも飛ばしたのか? それとも通信魔法があるのか? ゲームをしていた時にはそんな設定はなかったはずだが・・・。
そんなことを考えていると、3階にある商会長室の前に着いた。
コンコン
「レーヴ様がお見えになりました」
「わかった。入ってくれ」
「どうぞ」
俺たちが中に入ると、案内をしてくれた女性は扉を閉めて戻っていった。
「これはレーヴさんお久しぶりです」
「商会長さんもお元気そうでなによりです」
「レーヴさんもお元気そうでなによりです。ところで旅に出ると伺いましたが?」
「はい。私の探していた方が見つかったので」
「そうですか。こちらの方ですね? 初めまして私は商会長をしている。トルコと申します」
「始めまして、私は冒険者のアキラといいます」
「アキラさんですか、なかなか腕が立ちそうな方ですね・・・」
俺と商会長は自己紹介をして握手を交わすが、商会長は何か考えているようだ。
「どうかしたんですか?」
「実は今、私共は冒険者ギルドに護衛依頼をしていまして、腕の立つ冒険者を探していたのです」
「護衛ですか?」
「はい。この町と西の港町を結ぶ道に強力なモンスターが現れて、商隊が通れないのです。まだ正体も掴めていないので、対策も打てていない状況です。なので、冒険者ギルドへモンスターの正体と討伐と商隊の護衛の依頼をしている所なのです」
俺の質問に商会長が答えたが、西の町への護衛か・・・。これから行く目的地なのだが、すぐに行っても船賃が無い。護衛のお金で乗れるのなら行ってもいいが、足りなかったらまた稼がなくてはならない。でも、3つの依頼を出したってことは報酬も3つ分だ。これなら多分大丈夫だな。
「俺たちはこれから西の港町へ向かうので、ついでに護衛もしておきます」
「そうですか! それはありがたい! ・・・そうだ!」
俺が依頼を受ける事を告げると、トルコは机の引き出しから袋を持ってきた。
「これを持っていってください」
「これは?」
「先行投資です。1万Mあります」
「お金ですか?」
「はい。あなたたちなら事件を好転させてくれそうな気がします。なので先行投資です」
「そうですか、お役に立てるかわかりませんが、ありがたく受け取っておきます」
「はい、よろしくお願いします。お金の事は気にせずに、無理をせず頑張ってください」
まあ俺たちなら間違いなく好転するだろう。並みのモンスターなら一撃だしな。先行投資をするこの人は見る目があるということだ。だが、これで船賃の問題は解決した。
「レーヴさん、良い人を見つけましたね」
「はい! 私の大切な人です!」
「いやいや これはこれは ハハハ・・・。では、お二人共お気を付けて旅をしてください」
「それでは、失礼します」
レイが元気よく俺を大切な人発言をしたので、トルコの方が照れてしまったようだ。リア充爆発しろ!とか言われないで良かったな。
商会を出てクエストを受けるために、隣にある冒険者ギルドへ入って行く。
ギルド内部には多くの冒険者がいた。ここらへんでは珍しい魔法使いの姿もあった。
まあ、全く居ないというわけでもないので、とりあえず依頼板を見てみる。
<緊急>
『西に出現するモンスターの正体を暴け』 Gランク以上
『謎のモンスター討伐』 Fランク以上
『西へ向かう商隊の護衛』 Fランク以上
正体を確かめるクエスト以外はFランク以上となっていた。俺は全て受注できるから大丈夫だな。
だが、ゲームをしていた時にこんなクエストは見たことがなかった。いつの間にかバージョンアップでもしたのか? まあ、序盤だし大したモンスターではないだろう。
緊急クエストです!
モン○ンみたい(笑)




