三角関係-IV
玲菜の気持ちを打ち明けられそれを受け入れた次の日、
俺は朝早くから孝明の家の前に居た。
ドアの前に立ちインターホンを押す。
孝明を呼び出すのに緊張したのは初めてだ。
なんとなく不思議な気持ちに浸っていると孝明が出てきた。
「来ると思ったよ」
孝明は静かな声でそう言った。
俺はなんとなく孝明がそう言うのではないかと予想していた。
「公園に行かないか?」
俺がそう提案すると、
「あぁ、俺もそう思ったところだ。準備してくるから待っててくれ」
「分かった」
俺の返事を聞いて孝明はドアを閉めた。
なんとなくそのドアが孝明と俺の間に立ちはだかる壁に見えた。
20分ほどして孝明は出てきた。
「悪い、またせたな」
「いや、たいした事ないよ」
「じゃあ行くか」
「あぁ」
俺の返事を合図に俺達は歩き出した。
無言のまま。どちらも口を開こうともせず。
公園について孝明がすぐに口を開いた。
「玲菜かな聞いたのか?」
「うん。昨日聞いた」
「そうか、受け入れたのか?」
孝明のストレートな質問に少し虚を突かれながらも
「あぁ」
俺は落ち着いてそう言った。
「やっぱりな」
「え?」
孝明の突然の発言に俺を驚いた。
「やっぱりそうだと思ったよ」
「何が?」
「お前が玲菜の事を好きっていう事」
「いつから分かってたんだ?」
「そこまでは覚えてないけど」
「けど?」
「お前がいつ好きになったかなら分かるぜ」
「え?」
俺は素直に驚いた。
俺だってよく分かっていない事なのだから。
「多分、玲菜に出会ったときだよ」
「どうして?」
「俺はその時、玲菜に惚れたからさ」
「そうか」
孝明らしい答えだなと思った。
それと同時に納得している自分がいた。
「あ〜あ、でも残念だな」
「え?何が?」
「玲菜の好きな相手が俺じゃないって事」
「あ、悪い」
「どうしてお前が謝るんだよ」
「え?」
「俺は玲菜が好きだ。だから何よりも玲菜に幸せで居てほしい」
「うん、それは分かるよ」
「そして玲菜を幸せに出来るのは俺かお前だけだと思ってる」
「・・・・」
俺は黙って聞くことにした。
そうでもしてないと涙が出そうになった。
「お前以外の奴に玲菜が惚れていたら奪い取るのも考える」
「・・・・」
「でも、玲菜が惚れたのはお前だ。それが俺のせめてもの救いかな」
「・・・・・」
「何黙ってんだよ。俺は玲菜が幸せになれるから嬉しいんだぜ」
そう言った後、孝明は涙を流した。
それはたった一滴だったけど何よりも意味のある涙だったと思う。
俺達はその後、玲菜のお別れ会を開く話をした。
決まったのは3日後という事と3人でやる事。
そして俺の家でやる事になった事だった。
俺の家で開くのは俺と玲菜を2人っきりにしやすいかららしい。
「じゃあ、残り3日は各々で準備だ」
孝明がさっきの涙は嘘のように明るい声で言った。
「OK、分かった」
俺はそう言って、空を見つめた。
孝明の強さに心を打たれ自分の小ささに悔しくなっていた。