表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

三角関係-III

「二人で帰るのって久しぶりね」

「あぁそうだな」

学校からの帰り道、久しぶりに俺は玲菜と歩いている。

少し孝明に悪い気がしながらもうれしく感じていた。

俺達は他愛もない話をしながら歩いた。

この瞬間だけ俺は昔どおりに関係に戻った気がする。

そして同時にまたこれを失う虚しさを感じていた。

「そういえば、今日何の用なんだ?」

話が一段落したところで玲菜に聞いてみた。

「・・・ちょっといいにくいんだけどね・・・」

玲菜はそう言ってから公園に行かないかと提案した。

俺は黙って頷き二人で公園の方へ歩いた。


「懐かしいね・・・この公園」

この公園は俺達が小さい頃良く遊んだ公園だった。

俺達の原点がここにあると言っても過言ではないかもしれない。

「あぁ、そうだな」

「うん」

そう言って玲菜は黙ってしまった。

俺も何も言わないでいたが沈黙に耐えられなくなり口を開いた。

「そういえばさ・・・」

そう言いながら俺は玲菜の顔を見た。

驚く事に玲菜は泣いていた。

何が起こったのか良く分からないまま、

「どうしたんだ?」

と、俺は何度も言った。

しばらく経って玲菜はようやく泣き止み口を開いた。

「ごめんね、いきなり泣いちゃって・・・」

「いや、それよりどうしたんだ?」

「・・・うん」

突然、泣き出したから相当な事なのだろう。

何故だか俺はドキドキしていた。

そしてゆっくりと玲菜の口が開いた。

「私ね・・・アメリカに引越しするの」

「・・・・え?」

「お父さんの転勤で家族でアメリカに・・・」

「・・・いつ、決まったの?」

やっとの事で声を絞り出し聞いた。

「孝明と付き合う3日前に・・・」

「・・・そんな・・・どうして、いきなり・・・」

俺の言葉は言葉になっているか分からなかった。

「本当はねもっと早く伝えるつもりだったの。

優には他にも伝えたいことがあったから」

「他にも・・・伝えたいこと?」

「うん・・・」

「・・・・・・」

俺は黙って聞くことにした。

というよりも声を出せる状態じゃなかった。

「私ね・・・私・・・」

「・・・・・」

「ずっと優の事が好きだった。そして今も」

「・・・・・」

俺は何も言うことが出来なかった。

嬉しさと悲しみが同時に俺の口を塞いでいた。

そして玲菜は俺の返事を待たずに話し出した。


「引越しが決まってから3日後に孝明に話をしたの。

優の事でも相談したかったから。

でも、引越しの事を話したら突然孝明に告白されたの。

『ずっと、好きだった』って、

でも私は優の事が好きだったから断ったの」

「・・・・・・・・」

俺は黙って聞いていた。

断ったはずの玲菜はどうして孝明と付き合っているのかを

考えながら耳を傾けていた。

「孝明は『やっぱりな』って言ったわ。

私が優の事が好きだったのを知ってたみたい。

そして『協力してやるよ』と言ったわ。

孝明は私に付き合ってる振りをしろと言ったの。

優は自分の本当の気持ちに気付いてないから。

それを気付かせてやるために。

だから私は孝明と付き合っている振りをしたの。

優をどうしても振り向かせたかったから」

俺は心を打たれていた。

玲菜の言葉に、そして孝明の優しさに。

俺が孝明の立場だったら協力なんて出来なかった。

・・・なんて小さな男なんだろう・・・俺は・・・

「優」

突然、玲菜が力強い声で俺を呼んだ。

「ちゃんと自分の想いを言うね。

私は優の事が好き。誰よりも優の事が好き」

彼女の言葉に涙が出そうになった。

その涙を堪え強がりながら

「孝明の作戦にはまっちまったよ。

俺も玲菜の事が好きだ。誰よりもね」

俺がそう言った瞬間玲菜は涙を流した。

そして俺に胸に飛び込んできた。

俺は、俺の胸で泣く玲菜の頭を撫でながら、

孝明に会わなければと思った。

でも、今はこの幸せを感じていることにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ