三角関係-II
「・・・・それでよ・・・」
孝明が楽しそうに玲菜に何か話している。
玲菜はそれを楽しそうに聞き、俺は二人の少し後ろを歩いていた。
ここ最近、見慣れたようなものだと思う。
「優、お前はどう思う?」
突然、孝明が俺に話を振ってきた。
「悪い、聞いてなかった」
聞いとけば良かったと思いつつ正直に言った。
「お前最近どうしたんだよ?何かあったのか?」
孝明の顔は真剣だった。
だからこそ俺の胸は痛んだ。
本当のことが言えるはずないから。
「別に何でもない。ボーっとしてただけだよ」
「そうか?ならいいんだけどな」
「あぁ、心配かけて悪かったな」
「別にいいって」
少しだけ照れたように孝明は言った。
本当にいい奴だなと思う。
まぁ、だからこそ長い間親でいられたのだけど。
学校につくといつもの顔ぶれがそろっていた。
適当に挨拶を交わし自分の席に着く。
孝明と玲菜は孝明の席のほうで話しこんでいる。
それを横目で見ながら小さくため息をつく。
「おい、どうしたんだよ?」
俺がため息をつくのを見てたのか友達の智也が話しかけてきた。
孝明たちを除けば俺はこいつと一番仲がいいだろう。
「いや、別に・・・」
「ってか、お前最近、孝明達と仲悪いの?」
「え、どうして?」
「だって。あいつらと一緒に居る時間減ったろ」
「あぁ、それはあいつらが付き合い始めたからだよ」
「それで、邪魔しないように距離を置いてるのか」
「まぁ、そんな所だよ」
「ふ〜ん。ってか意外だよな」
「何が?」
「孝明と玲菜ちゃんさ」
「そうか?納得できると思うけど」
そう・・・納得できるはずなんだ・・・
「でもよ、噂では玲菜ちゃんお前の事が好きだったらしいぜ」
「は?」
こいつはいきなり何を言い出すんだろう。
「お前、これは結構有名な話だぜ」
「ふ〜ん」
「お前信じてないな。相談された女子だっているんだぞ」
「それは確実に嘘だろ。だったら孝明と付き合うはずがない」
「そうだよなぁ。何かあったのかな?」
「あったもなにもその噂がでたらめなんだよ」
「そうかな?」
「あぁ」
仮に本当だとしても・・・もう遅い・・・
午前中の授業が終わり昼休みになった。
俺は最近では当たり前になった智也たちと弁当を食っていた。
そこに孝明と弁当を食べていたはずの玲菜がやってきた。
「優、今日帰りってなんか用事ある?」
「いや、ないけど」
「じゃあ、今日二人で一緒に帰らない?」
「いいけど。孝明は」
「大丈夫。優ならオッケーだって言ってるから」
「そう、じゃあ構わないけど」
「じゃあ約束ね。じゃ、また後でね」
「うん」
俺の返事を確認して玲菜は戻っていった。
「三角関係の始まりか?」
そう言ってきたのは智也の隣に座る信也だった。
「そんな訳ないだろ」
俺が強く否定すると、
「ちぇ、つまんないの・・・」
何を期待していたのだろうか・・・
多分、孝明に渡す誕生日プレゼントの相談だろう。
一週間後に孝明の誕生日があるのだから。