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真・恋姫†無双〜後漢最後の皇帝   作者: フィフスエマナ
第一章 降りかかる運命
8/31

母の想い

連続投稿分です。

今話も鬱が続きます。

なので、次話と一緒に読んで頂ければ幸いです。

02/02 本文を改定しました。


お楽しみ下さい。





何皇后は親衛隊隊長から聞いた木蓮の行動に自身の感想を交えながら饒舌に語っていた。


(木蓮……ごめんね………)


その話しを翡翠は消えかけた意識の中で聞いていた。そして、時折全身を蝕んでいく激しい激痛の中、必死に木蓮に謝っていた。


(こんなにも私を想ってくれていたのに………、なぜ私は木蓮のことを信じてあげず、何皇后様の言葉に動揺したんだろう………)


激痛で苦悶の表情になっている翡翠の目にうっすらと涙が溢れていた。


(私が中庭に行く途中で、もう少ししっかり探してあげてたら見つけてあげれたかもしれないのに………本当にごめん、ごめんなさい、木蓮。)


そして、溢れ出た涙は翡翠の頬を伝ってとめどなく流れていた。


床にうつ伏せになって倒れている翡翠を見ながら、何皇后はさらに話を続けた。


「のう、王美人よ。実はな、わらわは裏切るのは好きじゃが、裏切られるの大嫌いなのじゃ………。だから、裏切ったあの女医師もさんざん苦しませて殺してやったわ。知っておるかあの女医師、しまいには殺してくれとわらわに懇願したのじゃよ」


思い出したように何皇后が笑うと、それにつられるように親衛隊も笑い出した。一頻り、笑い終えると親衛隊の隊長は胸元からある物を取り出して何皇后に渡した。それを何皇后は汚らしい物を触るかのように受け取り、倒れている翡翠の横に投げ捨てた。


翡翠は物音がした方に視線だけと動かし見た瞬間、重くなった瞼をありえないぐらいに見開いた。

それは後宮に入るよりもずっと前に、木蓮と二人だけでお金を貯めて買った翡翠細工の首飾りだったからだ。翡翠の宝石はかなり安物を使ったが、それでも値がはって、二人で貯めたお金では足りなくなってしまったのだ。二つ首飾りを作る予定だったが結局は一つしか首飾りを作れなかった。だから、無理を職人に言って翡翠細工で作った木蓮の花を半分にしてもらったのだ。


二つに分けた翡翠の首飾りを合わせると一枚の木蓮の花になる。


この世に一つしかない二人だけの宝物。


いつでも二人は一緒なのだ、という意味を込めている。



(………木蓮)



首飾りを作った当時のことを鮮明に思い出していた。見間違えるはずのない、その片割れは血が乾いてどす黒くなっていたが、木蓮が持っていた片割れの首飾りだった。


心の中で何度も木蓮に謝罪していた翡翠は、また、謝罪の言葉を心の中で呟こうとした瞬間、耳に入ってくる微かな物が擦れる音でハッとした。


(私にはまだ伯和がいる!)


何皇后の話を聞いた要はその酷すぎる内容に固まってしまていた。しかも、話しの内容に反して、何皇后は嬉々揚々と饒舌に話しているのだ。何故、そんな態度でいられるのかが、要には全く理解できなかった。


だが、そんな何皇后を見ていると、ふつふつと心の中に怒りが湧き出して、あっという間に心は怒りで満たされた。


(いい加減にしろ!無実の人を殺して、喜んでる話すなっ!!)


心の中の叫びに応じて、要は手足を大きく動かした。


(木蓮さんはすごく優しくて良い人だったんだぞ。それを………木蓮さんを返せよ!!)


更に大きく手足を動かして生地が擦れる音がたった。それを聞いて何皇后は不機嫌そうな顔をして要を見た。


「昼も思ったが、ちと煩い赤子じゃのう~、母を亡くすのはそんなに辛いか?ならば慈悲をかけて母親と一緒にあの世に送ってやろうかのう」


妖しく瞳を光らせながら、何皇后が近付いて来るのが見えた。きっと、寝台まで来れば赤子の自分など簡単に殺されてしまうだろう。そんな死の恐怖よりも要の心は木蓮を殺め、翡翠まで殺めた何皇后への怒りの方が大きかった。だから、近付いているのに構わず手足をばたばたと大きく動かしていた。


そして、要の目の前まで来た。ゆっくり小さな要の首に手をかけようとした時。


「……だ……だめ………」


(そう、何があっても)


要の耳に微かな翡翠の声が聞こえてきた。


(翡翠お母さん!)


それに応じるかのように要は手足を激しく動かした。


(そう、私に何があっても伯和だけは………)


「……伯……和……だ…けは……守…」


(そう、私に何があっても伯和だけは守らなきゃ!じゃなきゃ、あんなのも私を想ってくれた木蓮の想いに………私は……、私は顔向けできない!!)


部屋にいた全員がその声のした方を見てぎょっとした。何故なら、そこには瀕死の状態であった翡翠がうつ伏せのままゆっくりと這いずりながら、少しずつ寝台に近付いているからだった。しかも、要以外には微かに漏れる掠れた声が酷く不気味に聞こえていた。さすがの何皇后も親衛隊の兵たちも、すでに翡翠が動ける状態ではないと思っていたので驚いて翡翠を凝視していた。だが、そんな状態でいち早く気を取り直したのはやはり何皇后であった。


「さすがに母親じゃのう」


馬鹿にしたような声で翡翠に話しかけていた。


(翡翠お母さん!翡翠お母さん!)


要は目の端に映る翡翠の姿がゆっくり近付くのを見ながら大声で叫んだが、相変わらず喉は空気が抜ける音しかしなかく、辺りには生地が擦れる音が微かに響いていた。


「…伯……和………伯……和………」


何度も要の名を呼びながら翡翠はゆっくりだが、確実に寝台に近付いていた。


「ほれほれ、もう少しじゃぞ、王美人」


翡翠と要のやり取りを見て何皇后は更に大きな声で嘲け笑った。



(翡翠お母さん、あともう少しだから)

「……伯………和……」


だが、何皇后の声など要と翡翠の耳には聞こえてなかった。ただ、愛おしい互いの存在しか親子には見えていなかった。


(翡翠お母さんあと少しだよ)

「………伯……………和…………」



ようやく翡翠が寝台の下までたどり着いた時には動作はかなり緩慢で声の掠れきっていた。もう、その命が風前の灯であることは誰の目から見てもあきらかだった。だが、翡翠は最後の力を振り絞ってゆっくりと寝台にいる要の元に手を伸ばした。


(お母さん、お母さん)


自分に近付く翡翠の手を掴もうと、要は自らの小さな手を精一杯伸ばした。


(あと、少し………)


徐々にだが、ゆっくりと近付いた要と翡翠の手はついに触れようとした。が、その前に翡翠の手は一瞬で要の目の前から消えてしまった。


「………あ…(えっ!?)」


そして、鈍い音が辺りに響き、翡翠の手があるであろう場所には何皇后が立っていた。そう、翡翠と要の手が触れかけた時、何皇后は翡翠の手を踏みつけたのだった。


「…………」


要の頭は訳が分からなく真っ白になっていた。


「…………」


だが、徐々にだが頭は目の前の事態を理解しだした。そして、すべてを理解した時、


「ああぁぁぁぁーーーー」


今まで出なかった声が堰を切ったように喉から一斉に出て、要は大声で絶叫していた。




その声に答えるかのように、扉がけたたましい音をたてながら蹴り破られた。その音を聞き反射的に何皇后や親衛隊の者たちが振り返って扉のほうを見ると、


「貴様らーーーー!!なにをしてるかぁぁぁーーーーーーーっ!!!」


そこには真っ赤な目を光らせて鬼の形相をした義真が立っていた。





扉を蹴破った義真は部屋の中を見て唖然とした。部屋の中心には大きなどす黒い血だまりがあったのだ。そこから血を引き摺った後が伸びるように寝台付近まで続き、寝台の下には倒れてる王美人がいた。そして、それを取り囲むように立っている親衛隊。それを理解した一目で異常なことが起きているのが理解できた。それと同時に義真の中に一気に怒りが膨れ上がった。


そして、義真は気付いてしまった。倒れている王美人の横にいる何皇后がその足で王美人の手を踏んでいることを。その瞬間、普段は冷静な義真は一気に怒りが突き抜けてキレて叫んでいた。


「貴様らーーーー!!なにをしてるかぁぁぁーーーーーーーっ!!!」


突然、乱入してきた義真の鬼の形相と共に発せられた怒声を聞いた親衛隊たちと何皇后は恐怖の余り無意識に後ずさった。 そして、義真はぎろりと何皇后を睨みつけた。


「ひ、」


義真と目が合った何皇后は恐怖のあまり短い悲鳴をあげた。


「王美人様の手からその足をどけろ」


怒気を込めて義真は言い放った。

本来、皇后に対して使う言葉ではなかったが、怒りが頂点まで達していた義真はこの事態を招いた元凶の何皇后に礼を尽くすつもりは毛頭なかった。


「……ひ、ひっ!!」


そんな義真の言葉を聞いた何皇后も言葉を咎めるよりも、義真から発せられる威圧感に恐怖して反射的に足を退けたのである。それを確認した義真は今度は見覚えのある親衛隊の隊長をぎろろと睨みつけた。


「貴様、ここで何をしていたか答えろ!」

「…え………?」


義真に問われた隊長は威圧感とその怒気に気圧されて質問の意味がわからなくて、すっとんきょうな顔をして答えた。


「答えろと聞いている!!」

「ふ、ぶざけるな!わ、われわれは何皇后様付きの親衛隊だ…ぞ。そ、それにわ、わたしは……」


さらに怒気を込めた義真の質問に親衛隊の隊長は何とか言い返そうとしたが、恐怖から声が上手くでなかった。


「私は答えろと聞いているっ!!!」


だが、親衛隊の隊長が言い終わる前に義真がそれを一蹴した。義真の眼光は鋭く、気の弱い人間なら目が合った瞬間に意識を失うほどすさまじかった。それほどまでに義真の目には怒りが込められていたのだ。

義真に睨まれた隊長は恐怖のあまりたじろうだ。だが、たじろぐ瞬間、目に入った人影を見て自分たちが優位なことに気付いたのだった。そう、いまこの部屋には自分以外に九人の部下の兵士がいることを………そして、乱入してきた義真が一人であることを。そのことに気付いた隊長は恐怖で傾いていた心の天秤を幾分か取り戻しいた。必死に相手は一人、こちらは自分を含め十人いると心に呼びかけながら………。


「お、おい、おまえら怯むな相手は一人だぞ!」


心が戻ってきた隊長は周りにいる部下たち何とか激を飛ばした。それを聞いた義真は目を細めて隊長を見つめた。


「それが貴様の答えか………よかろう、ならば叩き潰してでも答えさせてやる!!」


そう言い放ちながら、義真は真っ先に親衛隊隊長の元に跳躍した。


この時、親衛隊の隊長は気付いていなかった。すでに自分と同様に部下たちすべてが義真の威圧感に気圧され恐慌状態になっていることを。皇后の親衛隊として好き放題、全員で周囲に横暴な振る舞いをすることに明け暮れ、鍛練を怠っていたことを。そんな生活を送っていた親衛隊の兵たちの体が、この状況下ではまともに動かないことを隊長は気付いてなかった。

そして、その怠けた親衛隊の相手は禁軍内でも指折りの実力者である義真だった。しかも、その身には怒りを内包しているのだ。


勝負は一瞬だった。


義真が跳躍したのを見た親衛隊の兵たちは、その恐怖から逃れるように少しでも遠くと部屋の隅に一目散に逃げていったのだった。それに取り残された親衛隊の隊長は真っ直ぐに向かってくる義真の速さに全く反応できなかった。そして、次に隊長の目に映ったのは抜き身を晒したトンファーの刃が交差して自らの首を刈り取る寸前で止まっているところだった。その事実を頭で理解した隊長はがたがたと震え、恐慌で喉から悲鳴が子も上げてきた。


そして……


「ひぃぃーーーーー!よ、よるなっ!!」


部屋に何皇后の恐怖の悲鳴が響き渡った。部屋の隅にいた親衛隊の兵たちはと隊長は反射的に何皇后の方を見て、恐怖で顔が引きつっていた。その目は零れ落ちるぐらい大きく見開かれていた。


義真は目に見える範囲にいる者たちが、皆一様に同じ表情になっているのを訝しんで、隊長を警戒しながらゆっくりを皆が見ている何皇后の方を見た。そして、義真も皆と同じように目を大きく見開いた。




そこにはあり得ない光景が広がっていたからだ。






酷い作者で申し訳ないです。

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