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真・恋姫†無双〜後漢最後の皇帝   作者: フィフスエマナ
第一章 降りかかる運命
2/31

謀る者と謀られる者

ようやく完成しましたので投稿します。

まだまだ、つたない文章ですがよろしくお願いします。


あと、この話しの最後から次の話しにかけては鬱展開になります。

そのため、ご容赦をお願いします。


ちなみに登場する王美人ですが、この美人の部分は後宮入りしてる側室の号にあたります。


当時の号は皇后、貴人、美人、宮人、采女といった順になってます。


それでは、お楽しみに下さい。


追記…9/20 サブタイトル変更をしました。

「あれ?ここは何処だ…」


辺りをきょろきょろと見ると、見渡すかぎりの暗闇が広がっていた。


(真っ暗だけど全然怖くはないな。寧ろ包み込まれてる感じがしてすごく安心する。ここは何処だろう?)


そんなことを思いながら鮮明になっていく頭の中から記憶を手繰り寄せる。


(たしか空間の歪みに落ちて・。・・・・それで・・・あっ、そっか、別の流に転生したんだった)


そう思い、もう一度あたりを見渡そうとした瞬間に微かな人の話し声が聞こえた。


「王…人、あと…し…す」


その後に別の女性の息む声も聞こえてくる。


(どうやら出産中なのかな?)


断片的にしか聞こえてこないが転生という記憶からそう判断した。


(って、産まれるのオレ?)


自分で考えて少し驚いた要であったがすぐに冷静さを取り戻した。


(でも、どうやって産まれるんだ?)


と、疑問に思っていると遠くの暗闇に眩しいくらいの光りが射し込んだ。


(なんの光だ?とりあえず行ってみよう)


要が光の方に歩きはじめる。


光に近付く度に先程から断続的に聞こえている人の声が、


「王様あと少しです。頑張って下さい」


大きくより鮮明に聞こえている。


どうやら正解だったようだ。

そして光にだいぶ近付いた頃、突然要は光に吸い込まれた。


周りに大勢の人の息づかいや色々な音が耳に聞こえてくる


(さっきよりもはっきりと聞こえる)


しかし、目の前が相変わらず真っ暗だった。


(なんで真っ暗なの?)


それと同時に周りから息を飲む声が聞こえる。

要は思いきって、


「助けて目が見えない」


と叫んだ。



要が叫ぶ少し前、出産に立ち会ってる翡翠付きの女医師、斉峯の表情が曇る。


(死産なの?)


そう、先程産まれてきた赤子が全く産声をあげないのだ。


最悪を覚悟した時、ひときわ大きい声で、


「おんぎゃ〜(助けて目が見えない)」


と赤子が産声をあげた。


それを聞き斉峯は一安心してすぐに、


「王様、おめでとうございます。無事に赤子がお産まれになりました。男の子です。」


と女性の澄んだ声が要の耳に聞こえてきた。


「おんぎゃ〜、おんぎゃ〜(いや、だからですね)」

「皇子様、いま産湯におつけしますからね」


と、斉峯は周りに控えている侍女達に準備に取りかかるように指示をした。


出産を固唾を飲んで見守っていた侍女長は、ハッとして急ぎ自分と同様に固唾を飲んでいる侍女達に指示を出し仕事に取りかかる。

静かだった部屋が一気に人が動く音で騒がしさに包まれた。


「おんぎゃ〜(目が見えないんですよ)」


「おんぎゃ〜(ねぇ、聞いてますか?)」


「おんぎゃ〜(誰か聞いてます?答えて~)」


さっきから周りにいる人間に話しかけるが誰も答えてくれない。

しかも、要が話すたびに赤ん坊の鳴き声がして少し不思議に思っていた。


(もしかして)


「おんぎゃ〜(あの〜)」

「………」

「おんぎゃ〜(聞こえてます?)」

「………」


(やっぱりだ。さっきから聞こえいる赤ん坊の鳴き声は自分の声だったんだ)


(って、そうか!まだ赤ん坊だから言葉が話せないのか)


ちなみにもし赤ん坊が産まれてすぐ「目が見えないですけど?」なんて言ったら周りには悲劇にしかならないのは余談である(笑)


(でも、目が見えないのは困ったな)


と、考えていると体全体が気持ちのよい暖かさに包まれた。


(人肌温くて気持ちいな〜、産湯っていいかも)


産湯の準備が整った後に、侍女長が耳に水が入らないよう細心の注意をはらいながら恐る恐る赤子を産湯につける時、要は相反してそんなことを思っていた。

しばらくしてから赤子は絹で編まれた布で包まれた。


(この肌触りも気持ちいい♪)


などと絹の感触を堪能してると絹ごしに柔らかいなにかの上に置かれたのがわかった。


(微かに誰かの息づかいも聞こえる。誰だろう?)


「王様、いま赤子の産湯が終わりました。こちらにお置きしましたのでご覧下さい」


と、上の方から斉の澄んだ声が要の耳に聞こえた。

そして…、


「翡翠お疲れ様。やったわね、男の子よ。産まれたばかりだからまだ目は見えてないけど、きっと貴女にそっくりよ」


と、先程よりも小さいが弾んだ斉峯の声が要にも聞こえた。


(産まれてすぐは目は見えないのか。良かった〜)


ようやく目が見えない疑問がとけて要は落ち着きを取り戻しているよ。


「私の坊や、産まれてきてくれてありがとう」


と、とても優しい声に包まれた。


(この声の人がお母さんになる人なんだ。温かくて気持ちいいな)


と、要は心地よくしていると、


バンっと言う扉を開ける音が聞こえてきた。

その瞬間、周りで動いていた人々の動作の音はピタリと止んで、息を飲む音とともに床に服が擦れる音が響き渡った。


「どうやら無事に産まれたようだな。して峯よ、産まれたのはどっちじゃ?」


と、野太い声が聞こえてきた。

それに続き、


「霊帝陛下、お喜び申し上げます。お産まれになったのは皇子です」

と、峯と呼ばれた女性の声が続いた。


(陛下?霊帝?)


何処かで聞き覚えのある言葉に思考を巡らしていると


「そうか、そうか、皇子であったか。弁に続いて二人目の皇子とは吉兆じゃ」


(弁?誰だそれ?)


「これで漢も安泰じゃ。よくやってくれた翡翠よ」


(漢?霊帝?弁?もしかして)


先程の野太い声の主が嬉しさを噛み締めたような大きな声で喜んだ。

それと同時に周りにいた人々からも産まれてきた赤子や国の行く末を讃え喜びあう声が響き渡った。

それを聞いて要は確信した。


(間違いない、ここは漢帝国だ。しかも歴代霊帝と呼ばれたのはただ一人。となると後漢末期だな)


元々、某ゲーム会社の三国志シリーズを長い間プレイしていたため、周りから聞こえた人物の名前、国名からここが後漢末期だと結論づけた要だった。


(でも、後漢末期だとしたらなんで過去に転生したんだろう)


思案していた要だか、


(あれ?なんだか眠くなってきた)


と、ウトウトし始めた。

それはとても心地好い眠りへの誘いでもあったため、すぐに眠りに落ちていった。



「おんぎゃ〜(あれ、ここは?)」


どのくらい眠っていたのだろうか。

ふと目が覚めた要は見慣れぬ景色と見たこともない綺麗な女性に抱かれている自分に戸惑いを覚えつつも、自分に起こったことを思い出して落ち着きを取り戻した。


ただ、落ち着きを取り戻したのも束の間、要の目の前でその女性が突然着ていた服をはだけて形のよい胸をさらけ出したのだ。


「お、おんぎゃ〜(ち、ちょっと待って)」


軽くパニックになりながらも要は女性に待つように呼びかけるが、所詮赤ん坊のため女性には伝わらなかった。


「あらあら、ぐっすり眠ってたから沢山お腹が空いてたのね♪」


などど、要の胸中とは真逆に女性は笑顔でさらに胸を要の方に近づけてくる。

要としては勿論、赤ん坊だから母親の母乳をとは頭では理解出来たが、これでも中身は32歳のため感情的には無理だった。


しかし、そんな要の内面とは裏腹に赤ん坊としての肉体は生存本能に自然と従い母乳を求め、目の前まで近づいてきた胸に勝手にくいついた。

恥ずかしさのあまり最初こそ抵抗があったが母乳を飲みにつれて、体の中に広がる心地好い暖かさに酔い途中からは無我夢中で飲みだした。


ひとしりきり飲んでお腹も満腹になった所で胸から口を放した。

それを確認した女性は側で控えていた清楚な女性に要を渡して、また別の女性に服を直すのを手伝ってもらっているのが目端に写った。


「劉協皇子〜♪とんとんしましょうね」


と、要を抱いた清楚な女性が笑顔で話しかけながら要の背中を優しく叩いた。


「ゲッフ」


と、何度か叩かれている内にげっぷが込み上げて出てきた。


「劉協皇子、えらいですよ」


などと途中で女性が言うので要は恥ずかしくなりいたたまれなくなった。

その後、服装を直した女性に再度、要は渡され抱かれた。


「伯治〜♪」


などと、優しいその女性の声を聞きながら先程はパニックのあまり見られなかった女性を要はまじまじと見ていた。

その顔は綺麗でやさしそうではあるが、まだだいぶ幼さを残していて歳は15、16歳ぐらいだと推測した。


そして、産まれた直後に聞いた声と同じであるから自分を産んだ母親であるとも確信した。

そうこう考えてる内にまた眠りの淵に落ちていった。

それから数日間はこの繰返しだった。


ただ、いつも母親の母乳とではなく母親が何かの用事で不在の時は乳母が変わりに母乳を与えてくれていた。


そして赤ん坊は寝るのが仕事だと聞いていた通り、起きてもすぐ眠たくなる結果、寝てる時間の方が長かった。


それでも起きている時間を使って見聞きした結果、その女性の名が王伯李や稟香、侍女からはよく王美人様なんて呼ばれたりもしている。


清楚な女性が斉峯や杏里などと周りにから呼ばれていることが分かった。


そして、この二人の会話から王伯李と斉峯が後宮に入る前からの友人であり、実家お抱えの医者の一族で王伯李が後宮に入るときも一緒に召し抱えられたことも分かった。


だが、要が気になったのはこの二人は他に侍女がいるときは 王伯李様、斉峯などと主従の形で呼びあうのが侍女達がいなくなり二人っきりになると、王伯李のことを翡翠と呼び、斉峯のことを木蓮と呼びあっているのだ。


ゲームをやっていた記憶の中のゲーム画面でも姓、名(諱)、字はわかるがこの翡翠や木蓮というのが何にあたるかはさっぱりわからなかった。


勿論、この世界で生活している人間には要が疑問に思っているものが真名であること。

そして真名はその人の有り様を表す名であり、信頼したごく親しい者にしか教えず、教えてないものが呼んだ場合、死を意味することになるほど尊いものである名であるが、別の世界からやってきた要には知らぬことであった。


そのため、言葉が話せるようになったら呼んでみようと気軽に考えていた。

その結果、とんでもない悲劇に見回れることにはなるとも知らずに…


ただ、その機会が一生訪ることがないことをこの時の要は知らなかった。





とある部屋に呼び出された王伯李のお抱え医師斉峯は、緊張な面持ちで自分を呼び出した人物であり、この宮殿の主でもある人物と相対していた。


「斉峯、王稟香のその後はどうじゃ?」


と、その人物が感情のこもらない冷たい声で斉峯に聞いきた。


「はい、産後の王伯李様、回復は順調で劉協皇子共々、健康でございます。何皇后様」


と、背中に伝わる汗を感じながら恭しく何皇后と呼んだ女性に答えた。

それを聞いた何皇后はひどく不機嫌な顔になり、


「誰も劉協のことなど聞いておらぬ。わらわは側室の女のことだけを聞いたのじゃ。全く何を聞いているのか!下賤の者は聞いたことにも答えれぬのか!それともわらわとは言葉が通じぬと!側室が陛下の皇子を産んだからといって、さっそく皇后であるわらわを見下しておるのか!」


と、怒りを込めた冷たい声で喚き散らした。

それを聞いて斉峯は顔を青くしながら、


「何皇后様、申し訳ございません。どうかお許し下さい」


と、床に頭を擦り付けて謝罪の言葉を口にした。


勿論、端みれば言うに及ばず何皇后の逆ギレである。

しかし斉峯がここまでするのには理由があった。




元々、何皇后は河南地方の屠殺家という下賤の生まれだった。


ただ、成長するにつれて少々つり目だったがそれを引いてもかなりの美人になり街でも評判な娘に成長したのだった。


そしてその評判を聞き付けた県令や州牧の名家から相次いで縁談が持ち込まれたのである。


それにより何皇后の父親は少なからず野心を抱き始めたが、ある皇族から持ち込まれた縁談で一気に野心が燃え広がってしまったのだ。


その結果、自分の娘を皇帝に嫁がせるという無謀とも思えることを計画してしまったのだ。


しかし、誰が考えても下賤の娘が皇帝に嫁ぐなどは夢もまた夢の話しであったが、何皇后の父は狡猾だった。


そして、その狡猾さと野心は娘にも継承されていた結果、ついには庶民では接点もないような宦官とも面識をもつようになり、多額の賄賂を用いてその宦官の伝手で後宮に入ることに成功したのである。


そして後宮入りした何皇后が目指したのは皇帝からの寵愛を受けることだった。


ただ、その美貌も相まって何皇后が皇帝から寵愛を受けるまでに時間はあまり必要としなかったのである。

しかも、後宮に入りしてすぐに皇帝の子を身籠り翌年には皇子の劉弁を無事に出産することとなった。


そして、野心は劉弁を皇帝の座につけ何皇后自身が摂政になり政に仕切るということにまで膨れ上がった。


当時、皇帝の正室である宋皇后も寵愛を受けていたが、何皇后は宦官と協力して皇帝を籠絡した結果、宋皇后は寵愛を失い宦官の讒言により無実の罪を着せられ廃されたのである。


勿論、皇后のため極刑は免れ流刑となったが、その流刑地にいく一団が何皇后により裏で手を回した賊によって殺されたのは証拠はないが暗黙の話しであった。


そして宦官の弁もあり何皇后は側室から正室に格上げされ見事、皇后の座に収まったのである。

その後、皇后に収まった何皇后はなにかにつけて後宮の和を乱したのである。


少しでも皇帝の寵愛を受けそうな側室には人を使い襲わせ姦通の罪をきせ殺し、機嫌が悪いだけで侍女に難癖をつけ反逆罪をきせて死罪にしたりやりたい放題であった。


そのため、後宮で何皇后に擦り寄る人間以外は皆戦々恐々として、何皇后と関係を持ちたくなかったのである。


それは斉峯も同じであった。

本来なら接点はあまりなかったし持ちたくもなかった。


今朝、ようやく産後の体調が回復した翡翠が産まれたばかりの赤子の劉協をつれて、霊帝の生母の董太后が住む宮殿に産後のお見舞いのお礼を兼ねた挨拶出掛けていったのである。

勿論、回復したとはいえ産後間もないため、自分も付き添うと翡翠に話したが、


「ありがと木蓮。でも、同じ後宮内で董太后様のところだし、侍女も複数付き添うので大丈夫だよ。たまにはゆっくりしてて」


と返されたのである。


たしかに劉協が産まれて此の方、不測の事態に備え神経を尖らしていてゆっくり休めなかったのは事実であった。


そして、なにより昔からの友人でもある翡翠の気遣いや優しさが嬉しかった。


そのため、翡翠の言葉に甘えてゆっくりする旨を伝え、笑顔で見送ったのである。

ただ、木蓮も翡翠に話した通り単にゆっくりするつもりはなく、少しでも翡翠の体調が早く回復するようにと書物庫に煎じる薬草を調べに行くつもりだったのである。


自身の部屋で書物庫に行く準備が整うと、翡翠付きの侍女に書物庫で調べものをする旨を伝えて出かけてたのである。


書物庫で調べるものが一通り終ったのは昼過ぎだった。


一旦、部屋に戻って久々に街にでも食べに出掛けよう思い部屋に足を向けた途中で何皇后付きの侍女に出くわしたのである。


普段ならなにかと木蓮のことを見下して馬鹿にして絡んでくるので、急いで壁に避け道をあけ頭を下げ通りすぎるのをやり過ごそうとした瞬間に侍女から何皇后様がお呼びですと告げられたのである。


緊張した面持ちで何皇后の宮殿の部屋を訪ねて入室すると、その部屋にはいつも絡んでくる複数の侍女と何皇后がいたのである。


嫌な予感がした瞬間に先程の会話が始まったのである。


木蓮は頭を床に擦り付けながら先程のことを何皇后に謝罪していた。


そんな木蓮の姿を見た何皇后は悪意に満ちた笑みに顔を染め、


「なるほどのう。下賤の者にしてはなかなか動に入った姿じゃのう。医師などやめて街で乞食でもやったらどうじゃ?のう斉峯よ」


それを聞いても答えず、謝るばかりの斉峯の姿を見た何皇后と周りの侍女達は見下したように笑い続けた。

木蓮の内心は言われなきことを言われ怒り心頭だったが、翡翠の名誉のため此の場は我慢してやり過ごすことに徹していた。


そんな木蓮の姿を面白くなさそうに見下した何皇后はまるで興味を失ったような感じで、


「斉峯よ、もうよい顔をあげい」


と促したのである。


しかし木蓮はそれでも床に頭をつけたまま顔を上げなかった。


何度かそのやり取りをしていて、何皇后は根負けして苦笑しながら再度、からかって悪かった、頼むから顔を上げてくれという言葉でようやく木蓮は顔を上げたのである。


そして顔を上げて何皇后を見上げるとそこには先程の怒りはなく苦笑した顔があって内心ホッとした木蓮であった。


そして改めて何皇后は自分の非礼を詫び、お詫びに茶をご馳走すると申し出たのである。


その申し出に内心は早くこの場から辞したいため断りたかったが、皇后からお誘いなので断れず内心とは裏腹に快く応じたのであった。


失礼のないよう細心の注意を心がけていた木蓮であったが茶の席では予想した問題は起きず、寧ろ何皇后自身から医師になった経緯やどんな勉強をしたのかなどの質問を受け少し拍子抜けしながらも失礼のないように答えていった。


時間もそれなりに経ち、そろそろお暇する旨を申し出た木蓮に何皇后は頷き、侍女達に茶を片付けるように指示を出した。


すぐに指示を受けた侍女達は片付けの準備をして、全員部屋を出ていったのである。


本来なら、全員ではなく何人かの侍女は残るはずのため、少し怪訝に思った木蓮であったが改めて何皇后にお礼を告げて部屋を辞しようとした時に、


「すまぬが、ちと髪飾りを直すのを手伝ってくれぬか?」


と何皇后からお願いをされ、そのぐらいならとお茶のお礼を兼ねて木蓮は快く応じたのである。


座っている何皇后の後ろに周り、髪飾りを一旦髪から外ずす。

手に取った髪飾りを目にすると尖った針のような先の逆には、見たこともないぐらい繊細な細工が施された宝石が散りばめられていた。


元々、翡翠はあまり華美に着飾るのではなく質素を好むので木蓮も思わず豪華な髪飾りに見惚れてハッと息を飲む、


(庶民が一生働いても買えないだろうな)


などと思いながら壊さないよう気をつけて再度、髪に髪飾りを差し込もうとしてゆっくり手を動かそうとした瞬間、突然その手を何皇后に捕まれのだ。



「えっ!?」



と、驚いてると捕まれた手は何皇后の手に誘われて髪飾りの尖った方を下に何皇后の肩に勢いをつけて下ろされていった。


一瞬、捕まれたことに動揺した木蓮は咄嗟に反応できず、その目にはゆっくりと刺さる髪飾りと握られている自身の手の光景がゆっくりと流れるように映っていた。


すでに手を止めることは叶わず…、


そして髪飾りの先から肉に食い込む感触を感じた時に、


「きゃぁぁぁーーーーー」


あたり一面に何皇后の悲鳴が響き渡った。


その悲鳴で我にかえった木蓮は反射的に髪飾りを何皇后の肩から抜きとった。


その瞬間、部屋の扉があき悲鳴を聞きつけた侍女や衛兵達が雪崩れ込んできた。


それと同時に何皇后は肩を抑え床に倒れ込んだのである。


それを唖然と見ていた木蓮の手には血が滴る髪飾りが握られていた。


そして床に倒れ込んで肩を抑えてる何皇后の手には血が滲みだしている。


そう、誰が見ても木蓮が何皇后を殺そうとした思われる姿がそこにはあった。

それが例え嵌められたとしても…


(翡翠…ごめん…)


木蓮は心の中で叫んだ。

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