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真・恋姫†無双〜後漢最後の皇帝   作者: フィフスエマナ
第二章 伝えられなかった真名
14/31

嫌われた者と好かれた者

昨日に引き続き完成しましたので投稿します。さて、前話の話しを冬史はどうやって伝えるのでしょうか?それではお楽しみ下さい。


前話同様訂正です。襄陽は荊南ではなく荊北でした。

冬史は落ち込んで自分の部屋に向かい歩いていた。


朝起きた時はそこまで落ち込んではなかった。昨日、董太后の部屋から自分の部屋に戻る途中は皇子にどう伝えようかとさんざん悩んでいた。しかし、部屋に戻る頃には皇子の現状が好転するかもしれない、この機会のことを考え腹を括っていた。そのため、目覚めはここ最近では珍しいくらいすっきりとしていた。また、気力も久々に充実していたのだった。


「よし、皇子に伝よう」


そんな気力が漲った状態で自分の部屋を出て皇子の部屋に向かいだしたのであった。そして、皇子の部屋に控えている侍女に来訪を伝え、すぐ侍女は冬史を皇子の部屋へ通してくれたのだった。部屋に入ると昨日の一件のため皇子は複雑そうな表情をして冬史を見てきた。それを見た冬史も少し気まずそうな表情になりかけて、部屋に不穏な空気が漂いはじめたが、冬史は極力それを感じさせないように話しかけたのだった。


「伯和皇子、おはようございます」

「……コク…」


冬史はよく通る声で挨拶をして、それを聞いた皇子は普段通りの表情に戻り頷いたのだった。


「………昨日は…」

「はい、昨日は臣下としてあるまじき無礼な振舞いをしてしまい、申し訳ございませんでした」

「……!」


皇子が昨日のことを切り出したため、冬史はそれを遮るかたちで先に昨日の振舞いを正式に謝罪したのだった。ただ、冬史の謝罪を聞いた皇子はひどく不機嫌な表情になってしまった。そんな皇子を見て冬史は、まだ昨日ことは許されていないと内心で感じていたが、本題を切り出すことにしたのであった。


「皇子、本日は大事なお話しがあるのですが、聞いて頂けますか?」


「……?……コク」

「ありがとうございます」


冬史の問いに皇子は少しだけ首を横に傾げ怪訝な表情をしたが、僅かな沈黙の後に頷いたのだった。先程の皇子の表情から昨日の一件が許されてないと思った冬史は、皇子が話を聞いてくれないのでは、と考えていた。だが、それに反して皇子は頷いてくれたため、冬史は心の中で「よし」と小さく拳を握り締めたのだった。


「お話しなのですが…。昨日、董太后様から皇子の見識を広げるために一度、都の外に出て勉強してみてはどうだろうかとお話がありました」

「………」

「私も皇子の見識を広げるために、このお話しには賛成でございます。もし、皇子さえ問題なければぜひにとお答えしました。行き先は皇子と同じ高祖様の血を引く劉表様が治める荊北州は襄陽の街です」

「………」

「きっと、皇子のためになるはずです。如何でしょうか?」

「………」


冬史は一通りの話しを皇子に伝えたのだった。しかし、その結果如何では養子になるかもしれない話しは伏せて話していた。そして皇子の返事を待っていた。しかし、皇子の顔は先程同様に不機嫌のままであった。しばらく待っていても返事がなかったため、冬史の心の中には不安が広がっていった。それを振り払うように意を決して再度、皇子に返事を促したのだった。ただ、口から出たその声は先程のよく通る声ではなく少しだけ不安が入り混じったような声だった。


「皇子、如何で…」

「…………いや…だ…」


その冬史の問いに皇子は搾り出すような声で拒絶したのであった。その返事を聞き、少しだけ顔が強張るのを感じた冬史だったが、皇子に理由を確認しようとした。だが、皇子はだんまりを決め込んでしまったのだった。そのやり取りがしばらく続いた後、思わず昨日の一件が口から出てしまったのだ。普段の冬史ならそんなことは絶対に口に出さなかったが、昨日の負い目があるために焦ってしまったのだ。


「皇子…やはり昨日の…ッ!」


びゅん


それを口に出した瞬間、顔の横を皇子が投げた物が通り抜けて、後ろの床にぶつかる音が聞こえてきた。すぐに皇子をなだめようとしたが、


「申し訳…」


びゅん


「おやめ…」


びゅん


「皇子…」


びゅん


しかし、冬史が言葉をすべて発するよりも早く皇子は手当たり次第物を投げてきた。冬史は次々と自分に向かって飛んでくる物を避けているため、上手くなだめることが出来ないでいた。そんな、冬史を見て皇子の顔は更に真っ赤になっていた。


「……うごくな…!」

「わかりました」


咄嗟に口を開いた皇子が冬史に命令したのだ。それを聞いた冬史は、返事をして避けるのをやめたのだった。


次の瞬間・・・


ごん!


冬史の肩には皇子が投げた物がぶつかって軽い衝撃が走った。だが、投げた皇子は手に握った物を床に落として驚愕した顔で冬史のことを見ていた。まるで、冬史が避けることを信じて疑わなかったような顔であった。そんな、皇子を見て冬史は落ち着いて言葉を紡いだのだった。


「伯和皇子、お気はすみましたか?」


それを聞いた瞬間、皇子の顔はまたみるみる内に真っ赤に戻っていった。


「…………きら…」

「皇子?」

「やっぱり、おまえなんか大嫌いだ!でてけー!」

「……な…」


そして、昨日と同様に冬史のことを拒絶したのだった。しかも、それは皇子が生まれて初めて出した大声であった。そのため冬史が受けた精神的な衝撃はすさまじく、そのまま皇子に挨拶をするのも忘れて、うな垂れた状態で皇子の部屋から退出したのだった。さすがに部屋にいた侍女も何か慰めの言葉をかけようとしたが、その姿を見たら何も言葉が見つからず、うな垂れた冬史の後ろ姿を見送ったのだった。


これが冬史の落ち込んでいる理由だった。そこに武人として見る姿はなく後宮で働いている侍女達も遠巻きに見ていた。そんな、冬史に後宮で話しかける者は・・・


「あれれ〜。姐さん、どうしたんすっか?」


ここにいた。


今の自分とは真逆で、陽気な雰囲気を持つ聞き覚えのある声を聞いて、冬史は項垂れていた顔を上げたのだ。そこには黒目、黒髪の人懐っこい表情をした女の顔があった。つい先日、董太后付きの警護に抜擢され、新たに配属された朱儁こと澪がいた。


彼女の姓は朱、名は儁、字は公偉、真名は澪だ。


冬史が澪と出会ったのは禁軍に入隊してから一年が経った頃だった。ちょうど宮中の警邏をしていた時に、突然後ろから声をかけられて振り向くと場違いな奴がいたのだ。そして、そいつは「はじめまして、朱儁っす!」と、いきなり挨拶をしてきたのであった。


背は冬史より少し低く、前髪はすべて眉毛のところで長さをそろえていた。後ろ髪は肩の下まで伸びていて綺麗なストレートだった。また、目はパッチリとしていて興味津々って感じの幼さを残した印象を受けたが、なかなか美人な顔立ちをしていた。服は両肩をはだけさせた着物を着ていたのである。また、目を引いたのは腰にある普通よりも大きな帯であった。その帯には刃の長い剣が備わっていて、背中には弓が背負われていた。その武器がなければ宮中に呼ばれた芸子か何かだと完全に思っただろう。いや、両袖を手に持って人懐っこく笑う姿はまさに芸子のそれだった。


そんな芸子みたいな服装を見て、唖然としている冬史のことをお構いなしに澪は話し出したのだった。内容は禁軍に配属されたばかりで隊長に挨拶に行ったら、隊長から冬史の下につけと命令され、親切にも冬史が警邏してそうな場所まで案内してくれたとのことだった。それを聞き、冬史は一瞬目眩がして辺りにいるであろう直属の隊長を目で探したが、すで遥か遠くにその背中が見えるだけであった。その背中に冬史は思いっきり怨みの視線を投げつけたのであった。


それから数日一緒に行動した結果、澪は誰に対してもあんな感じの話し方をすることが分かった。そのため、冬史は先任として幾度となく改めるように注意をしたが、その度に「姐さん、厳しっすね〜」などと、言って全く聞く素振りを見せなかった。また、いつのまにか冬史は姐さんと呼ばれていたのである。


その後、しばらくして洛陽の街を揺るがす大事件が起きたのだった。しかし、大きな事件の割に目撃情報が圧倒的に少なく、事件の解決は難航していたのである。そんな時、澪が「ちょっと、聞いてきますね〜♪」と、冬史や他の同僚が止めるのも聞かずに意気揚々と詰め所から出て行き、帰ってきた翌日、事件は見事解決したのであった。あんなになかった情報を澪は一日で集めて来たのである。


どうやら、あの人懐っこい雰囲気と砕けた話し方でかなり洛陽の街でも顔が広かったらしい。そして、禁軍には話さなかった情報を澪には話した人々が沢山いたということを、解決後に本人から直接聞いて知ったのだった。しかも、この大事件解決により禁軍の面子も保たれたのだった。この一件以来、冬史は澪のことを認め、その人懐っこい言動に何も言わなくなったのである。ちなみにその時、何故か澪から真名の交換の申し出があり冬史もそれを受け入れて自分の真名を預けたのであった。それからしばらくして、冬史は董太后付きの警護に抜擢されたのだった。


そして、一月前に澪も董太后付きの警護になり二人は再会したのだ。久々に再開した澪は昔と全く変わらず、人懐っこい雰囲気と砕けた話し方の芸子のままであった。年は冬史の2つか、3つぐらい下だ。


「相変わらずだな」

「あたしはいつもこんな感じっすからね〜」


冬史は澪の返事を聞いて、その変わらない姿や話し方に少しだけ心が軽くなっていった。


「それよか姐さん、何かあったんっすか?」

「なんで、そう思う?」


澪が冬史の顔を覗き込むように見ながら聞いてきたため、冬史は少しだけ憮然とした感じで答えたのだ。


「いや〜、遠目から見てても、哀愁が漂ってましたからね〜」


憮然とした冬史の姿など全く気にする素振りなど見せずに澪は、アハハと笑いながら答えていた。


(人の気も知らないで・・・まったく)


そんな澪を見て、冬史は心の中で皮肉を呟いていた。


「姐さん、皮肉は良くないっすよ〜。あたしで良かったら話しを聞きますよ〜♪」


内心を見透かされたと思った冬史は一瞬、目を大きく見開いた、それを見た澪は「にしし、やっぱりっすか〜」と、笑いながら冬史に話しかけてきたのだ。さすがに恥ずかしくなった冬史は顔を真っ赤にしてしまったのだった。


「さあさあ、姐さん~」

「……仕方ない、他言無用だぞ?」

「は〜い、了解っす!」


同じ董太后付きの警護であながち部外者でもないため、念を押して冬史は周りに聞こえないように小さな声で話したのだった。聞いてる最中に澪は「なるほど〜、聞いていた以上っすね」とか「いやはや、姐さんすごいっすね」などと相槌を打ちながら聞いていた。冬史の話しを聞き終えた澪は少しだけ何かを考えた後、おもむろに手をポンっと叩いて冬史の方を向いたのだった。


「姐さん、あたしに任せてくれないっすか?」

「ちょっと待て、私の話を聞いてなかったのか?」

「いや、聞いてたっすよ〜」

「だったら…」

「たぶん、大丈夫っすよ〜」


冬史が落ち込む原因になったことを澪は簡単に言ってのけたのである。そんなお気楽な反応の澪に冬史は怒りかけたが、皇子に対しての妙案がなかったのも事実であったため、澪の話しに乗ってみることにしたのだった。そして、澪はすぐに皇子の部屋へ行くと言い出して、止める冬史を引きずって皇子の部屋に向かったのであった。


皇子の部屋に着くと、侍女は先程項垂れて出て行ったばかりの冬史の姿を見て少し驚ろいた。それを見た冬史も気まずくなったが、とりあえず皇子への取次ぎをお願いしたのだった。そして、断られることなく再度、皇子の部屋に入室を果たしたのである。部屋に入って皇子を見ると、先程とは違いだいぶ落ち着きを取り戻していた。だが、冬史の入室を確認すると嫌そうな顔をして、それを見た冬史もまた項垂れそうになってしまった。しかし、そんな冬史と皇子を余所に澪はいつも通りに話しだしたのである。


「劉協皇子、はじめましてっす!一月前に董太后様付きの警護に任官しました、姓は朱、名は儁、字は公偉って言います。ちなみに真名は秘密っすよ♪ よろしくお願いしまっすね」

(真名は秘密って、そんなこといきなり言うな澪!)


「………ッ……、コク」


突然の澪の挨拶を聞いた皇子は一瞬目を見張って唖然としていたが、すぐに頷いた。そんな皇子を確認して澪は話を切り出したのだった。


「皇子に少しお願いがあるんですけど……、いいっすか?」

(って、慣れなれしいぞ澪!)


「………コク」


いくら澪でも皇子に対してなれなれし過ぎる態度に冬史の心中は穏やかではなかった。そして、皇子がいなければ澪に拳骨をお見舞いしただろと思って拳が震えていた。 皇子も初対面の人間からいきなりお願いされて、かなり面食らった様子だったがとりあえず頷いたのだった。


「ありがとうっす〜」

(語尾を延ばすな馬鹿者ー!)


冬史の内心の叱責など知らないといった感じで澪は話しを続けた。


「皇子〜、一緒に襄陽の街に行きましょうよ〜♪」

「………フルフル」


(当たり前だ、そんなので上手くいくのなら私だって悩んだりしてない)


澪の直球過ぎる話しに皇子は顔を横に振った。


「実は襄陽にはそれは美味しいお団子屋さんがあるんっすよ♪一緒に行ってあたし達と食べましょうよ~」

「……!!、フルフル」


その後も、しばらく澪は魚が美味しいとか、果物が美味しいとか名物などで皇子を釣ろうとしたが駄目だった。そのやり取りを聞いていて、冬史はさすがに澪を頼ったことを後悔しはじめていた。また時折、皇子は困った顔で冬史のことを、ちらちらと見ていたが、冬史がそれに気づき皇子を見るとすぐ目を反らしてしまったのであった。


「皇子~、そんなに嫌っすか?」

「………コク」


(そろそろ、いいだろう)


さっきからの同じやり取りが何度も続いているため、潮時だと思った冬史は澪を止めようと動きだした。その瞬間、澪は皇子の方に近づいていき、腰を落としてその顔を皇子の耳に近づけていったのである。


「皇子、ちょっとお耳を拝借するっすね〜」

(なっ!)


冬史の驚愕を知ってか知らずか、澪はそう言うと皇子の小さな耳に顔をくっつけて内緒話を始めたのだった。突然の行動に、部屋にいる澪以外の人間はすべて驚いて固まってしまったのであった。そんな澪の話を聞きながら皇子は冬史の方を再度見て冬史と目が合ったが、今度は逸らさなかったのである。


そして澪にコクりと皇子は頷いたのだった。それを見た澪は満足そうな顔をして皇子の耳から顔を外して、少し下がって笑顔で皇子を見て周りの者達にも十分聞こえる声で皇子に聞いたのだった。


「皇子〜、最後にご確認っすけど、あたし達と一緒に襄陽に行ってくれるっすね?」


少しの沈黙のあと、


「………コク」


と、皇子は頷いたのである。この瞬間、皇子の襄陽行きが決まったのであった。


その後、冬史はことあるごとに澪にどうやって説得したのかを聞いたが、冬史の方を見て「秘密っすよ〜、姐さん大事にされていますね♪」と、訳の分からないことを言って、冬史に教えることはなかったのである。また、不思議なことに何故か澪が一緒にいる時だけ皇子の癇癪は起きなくなり侍女達の噂の種になっていったのだった。





そして、三ヶ月が過ぎて出発の日を迎えた。


冬史と澪は二人で一緒に皇子を迎えに行ったのである。皇子は冬史と澪の姿を見ていると、澪は皇子に手を差し伸べたのだった。そんな澪の行動を見て冬史が驚いていると、皇子は澪の方に歩いていき、澪が着ている着物の袖を掴んだのだった。


「なッ…」


その皇子の行動を見て更に冬史は驚いていた。


「皇子は照れ屋さんっすね〜」


澪は皇子に笑いかけて袖を掴んだ皇子の手を、自分の手で優しく包みこみ歩きはじめたのだった。その二人の姿にはどこか入り込めない雰囲気があったのだった。


その後、侍女達の間では澪と皇子の後ろを肩を落としとぼとぼと歩く冬史の姿が目撃されていた。


その姿はまるで子供を取り上げられて母親のようだったとか・・・


読んで頂きましてありがとうございます。オルジナルキャラの登場です。

少しネタバレを申しますと最初、このキャラの真名は違う名になる予定でした。しかし、その名が原作キャラの真名と同じだったため変更することにしました。ただ、続きを執筆している中でいい感じにこのキャラと名の相性が良くて良かったと思っています。


一応、この章であと一人だけ新キャラを登場させますが、その後はしばらく新キャラを登場させるつもりはありませんのでよろしくお願いします。

次話はいよいよ主人公に焦点をあてた話になります。

楽しみにしていてください。

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