新たなる人生の始まり
人生初めての二次創作作品の投稿になります。
つたない文章力ですが、お手柔らかにお願いします。
オリ主、オリキャラが沢山登場します。
勿論、北郷一刀くんも登場する予定ですが、だいぶ先になります。
また、独自解釈も多々あります。
そして、内容は原作の呉編以上にシリアスな展開になる予定です。
そのため、なけなしにハッピーエンドとはいきませんので注意して下さい。
追記・・・10/13 本編の雰囲気とだいぶ変わってしまいましたので、改定しました。お楽しみ下さい。
ある一人の男が暗闇の中を歩いていた。彼は遥か先に見える微かな光に向かって歩いていた。
彼の名前は沢尻要。
ほんの少し前まで、普通に会社に向かう途中であった。その彼が何故ここにいるかと言うと…ある現象が起因していた。
その現象とは空間の歪みだった。朝、家を出て会社に行こうとした時、目の前の地面に突如として穴が開き落ちてしまったのだ。そして、落ちた先は真っ暗な暗闇の中だったのだ。暗闇の中で意識を取り戻した要はパニックに陥っていた。人間は出口のない暗闇に閉じ込められると、僅かな時間で精神崩壊に陥る存在なのだ。だから、要のパニックは至極真っ当な結果だった。どのくらい経っただろうか、10秒、10分、1時間、10時間。そのどれもが正しくて、またどれもが違っていた。この空間には時間の概念など存在しないのだった。しかも、唯一時間を感じる存在だった要の精神は疲弊して崩壊しかけていた。
そんな時、要の目の前の空間にぼんやりとした光を纏った白髪の老人と金髪碧眼の女性が現れたのであった。地獄に仏、要にとってはまさにそれであった。その二人を見た要は我も忘れて二人の元に行き抱きつこうとした。もし、冷静ならば二人が浮かべている表情を怪訝に思っただろう。老人はとても厳しい顔をしていて、女性は要に同情的な顔をしていたからである。だが、要はそんなことを気にする余裕はなく二人に抱きついたのであった。しかし、要は二人の体を通り抜けてしまったのだった。
少し時間は遡る。
「南斗よ、まずいことになったぞ」
「まずいこと?何があったのですか、北斗?」
「わしが管理する世界で空間の歪みに人間が落ちてしもうた………」
「なんですって!」
老人の名は北斗、女の名は南斗と呼ばれていた。二人は輪廻の流れを管理する者達だった。分かりやすい言葉で例えるなら神に準ずる存在。しかし、二人は世界に何かをするのではなく、百年に一度起きる流れを調整するのが役目だった。二人が管理する世界は絶えず過去から未来の方向へ、川の流れの如く魂が揺らめいている。時折、その流れが変わることがあるのだ。その変わろうとしている流れを元に戻すのが二人の役目だった。そして、流れを元に戻す時に一時的に世界の何処かで空間に歪みが出来てしまうのだ。ただ、その歪みが発生してる時間は僅か一秒だった。だから、そこに落ちる者など今までいなかったのであった。そして、これからも落ちる者などでるはずはなかった。そんな穴に落ちた者・・・それが、沢尻要だった。
「まさか歪みに落ちるなんて………」
「幾年幾千、管理してる中で初めてのことじゃ。不運なのか、運がいいのか分からんわ」
あり得ないことが起きて驚愕している南斗に対して、北斗は冷静に感想を述べていた。
「そんなの不運に決まってます!………でも、どうしましょうか?」
「あぁ、それが問題なのじゃ」
要は空間の歪みに落ちたため、今は魂の流れの外にいるのだ。しかも、一度、流れの外に出てしまうと流れは要を異物だと判断してしまい、例え北斗と南斗が流れに戻しても反発力が働き、また要を放出してしまうのだった。つまり流れにとって要はもはや体外に排出されてゴミ同然だった。だから、二人は悩んでいたのだった。しばらく無言が続いたが、何か閃いたように南斗が重い口を開いて北斗に話しかけたのであった。
「ねぇ、北斗。私の管理する流れに定着させて見るのはどうかしら?」
「なんじゃと。お主、本気か!」
「ええ、私の管理する流れではまだ彼は異物だとは認識されてないから、たぶんいけると思うの……」
「しかし、失敗したら消滅するぞ」
北斗が指摘したこと。それは流れに上手く入ることが出来ない時のことだった。南斗の管理する流れに移し替えるときに、要は今までその流れの中に存在してないため、弾き飛ばされてしまうことがあるのだ。そうなれば人間の魂などは一瞬で消滅しまう。しかし、それは今の空間にいても同じであることに変わりはなかった。
考えを巡らした北斗が南斗に伝えたのだった。
「そうじゃな。わしの管理する世界の外に出てしまった以上、魂は消滅するじゃろ。だとしたら可能性がある方を試してみるのもいいかもしれんな。ただ、」
「ええ、本人にはそのことは内緒ですね。よけいな不安を与えても結果は変わりませんからね」
「あぁ、そうじゃ」
こうして、要を南斗が管理する流れに定着させることが決まったのだった。そして二人は要の前に現れたのだった。また、二人に抱きつこうとした要がすり抜けたのは、二人が流れの中の出来事まで干渉することが出来ないための現象だった。すり抜けて驚いてる要に、二人は要自身に起きたこと、この後のことを長い時間かけて説明したのだった。その話し方は丁寧だったが、内容には一切の選択の余地はないという感じの雰囲気であった。その雰囲気の中、一つだけ辛うじて要が質問できたのは南斗が管理する世界=転生先の世界のことだった。
「あの……、僕が生まれ変わることになる世界って、どんな世界なんですか?」
「そうね、貴方が生きてきた世界のもう一つの可能性みたいな世界よ。ただ、まだまだ未熟な世界だけどね」
「未熟?」
「ええ、絶えず争いが起こっている世界よ。貴方がいた世界よりもずっと人の命が軽いの、そして無慈悲にも殺されてるわ。ただね、その分だけ人々の繋がりは強い世界よ。ごめんなさい、あまり時間がないのよ。質問はもういいわね?」
「は、はいっ!わかりました」
実際、要に状況を説明するのにかなり時間がかかってしまい、あまり時間が残されてないのは事実であった。そのため、要はまだ質問したそうな雰囲気だったが、南斗がそれを察して質問を終わらしたのであった。そして、南斗が何かを呟くと暗闇の中に光り輝く、揺らめく川のような空間があらわれたのだった。要が不思議そうに見ていると南斗が横から説明した。
「これが流れです。飛び込んで頂けばあとは自然と私の管理する世界に着きます。勿論、溺ることはありませんよ。準備はいいですか?」
「ち、ちょっと待って下さい。えっと、最後にお二人の名前だけ聞いてもいいですか?」
「そうね、あまりにも話すことが多くて名乗り忘れていたわね。ごめんなさいね、私の名前は南斗よ」
「わしとしたことがすまなんだな。わしの名前は北斗じゃ」
駄目もとで聞いてみた要であったが、二人に会ってから一番優しい表情で答えてくたので少しだけ心が温かくなった。
「教えて頂き、ありがとうございました。僕の名は沢尻要です。では、行ってきます」
「おう、達者でな」
「ええ、お元気で……、いつも見守ってますよ」
そして、要は流に飛び込んだのだった。流れは特に要を弾くことなく飲み込んでいったのであった。それを見た北斗と南斗は要が新たな流れに受けいられたと感じ安堵した。すでに要の姿は目の前になく、切り取られた流が揺らめくのみであった。
「いいのか?あの者の記憶を消さなくて?」
「ええ、私の世界はまだまだ殺伐としています。そのため、彼のような存在が必要なのです」
「だが、所詮は泥水の中に真水を一滴垂らすのと同じじゃろうに」
「でも、その繰り返しで世界が良くなるなら私はそれでいいと思うわ。それに待ち受ける運命の前では転生前の記憶なんて、ほとんど意味をなさないわよ」
「それもそうじゃな。物作りをしていた訳でもあるまいにな。まぁ、だとしても所詮は数百年早まるだけじゃし。じゃが、歴史の記憶はさすがに不味くないか?」
「それも微々たるもので無意味ね。彼が運命に抗わないのなら意味はないし、本気で抗おうとしたらそれも意味をなさなくなるわよ。だって、彼が歴史を作るのだから」
「ふむ、我々はいつも通り見守るとするかのう。では、またのう」
そういうと北斗は何かを呟き暗闇の中から消えてしまったのである。暗闇には南斗だけになってしまった。だが、そんな南斗の体も徐々に闇に溶けていった。完全に闇と同化する前に、ふとあることが頭を過ぎったのだった。
(じきに現れる、北郷一刀との邂逅に彼はどう………)
口元に笑みを浮かべたまま南斗も闇に溶けていった。
流れの中に飛び込んだ要はその自分を包み込むような揺らめきに体の力を抜きその身を任せていた。それはとても心地よいからだった。どのくらいの時間が経過したのだろうか。突然、流れを体が感じなくなった瞬間、床が抜けたように真っ逆さまに足下に広がる暗闇に落ちていった。そして気が付いたら先程と同じような暗闇の中にいたのだった。ただ、遥か彼方に一筋の光が差しているのが分かったので、恐怖はなかった。そして、足は不思議と光の方へ向けて進みだしたのであった。
とある部屋での出来事
誰が見ても一目で広くて豪華な部屋だと思う部屋だった。その部屋の真ん中に天蓋つきの寝所があり、一人の女性が苦しそうに寝かされていた。その女性を囲むように侍女のような者達が心配そうに女性を見つめていた。ただ、不思議なことにこの部屋には男性が一人もいなかったのであった。
「うぅ……うぅぅ………」
あたり一面に断続的に女性の呻き声が響いた。傍で控えていた医者らしき女性が寝台で寝ている妙齢の女性に対して励ましの言葉をかけていた。
「頑張って下さい。もう、少しです」
ただ、寝台に寝ている女性はかなり苦しいためか、医者の言葉に何も反応出来ずに呻くだけであった。
「はぁ、はぁ……うぅぅ………」
その声が一際大きくなり、寝台の周りを囲んでいた侍女らの顔にも緊張が走った。
「…頭…み…まし…。王…人…あと……です」
実は寝台で寝ている妙齢な女性は出産の最中だったのだ。その身なりや控えている人数などでかなり身分の高い女性であることが伺える。そして、ついに女性の体から赤ん坊の頭が出てたのだ。それを見ていた周りの者達は思わず息をのむ。そして束の間して………
「おんぎゃあ〜」
その緊張で満たされた部屋の空気を破らんとするような、甲高い赤ん坊の声が部屋中に響き渡ったのだった。その声を聞いた者達は咄嗟に我に返って、部屋の中を慌しく動き始めたのであった。赤ん坊はすぐに用意されていた産湯につけられた後、柔らかい絹で包み込まれていた。そして、出産のため疲れはてて寝台で寝ている女性の顔の横に医師が優しく運んでそっと置いたのであった。
「おめでとうございます。男の子です。皇子がお産まれになりましたよ、王美人様」
王美人と呼ばれた女性は出産直後の意識が朦朧とするなかで、赤ん坊の方を向いて愛しそうに赤ん坊の顔に頬擦りをして掠れるぐらいの小さな声で呟いたのであった。
「私の坊や。生まれてきてくれてありがとう」
その直後、勢いよく部屋の扉が開かれた。そして部屋に入ってきた人物を見た瞬間に、王美人と呼ばれた女性以外の人間はその人物に方を向き、そして両膝を折り、頭を床に擦りつけて最上級の礼を尽くしたのだった。それを何気なく見た人物は医者に訊ねたたのであった。
「どうやら無事に産まれたようだな。して峯よ、産まれたのはどっちじゃ?」
峯と呼ばれた女医師………斉峯は顔のみ上げその人物に産まれた赤子の事を伝えてのであった。
「霊帝陛下、お喜び申し上げます。お産まれになられたのは皇子にてございます!」
霊帝と呼ばれた人物は医師からの報告を聞いて大層喜んだのであった。
「そうか、そうか、皇子であったか。弁に続いて二人目の皇子とは吉兆じゃ。これで漢も安泰じゃな。よくやってくれた王よ」
大きな声で一頻り喜び、寝所で寝ている王美人に労いの言葉をかけたのであった。霊帝の周りにいた臣下達もそれを聞いて、緊張を解いて霊帝と産まれてきたばかりの皇子を讃えて喜びあった。ただ、部屋の外でそれを聞いていたある女性は忌々しいぐらいの表情で部屋を睨んでいた。それは誰も知らないことであった。
皇子が産まれた場所・・・ここは漢の国の首都洛陽と呼ばれている場所であった。皇子誕生の報は瞬く間に街中を駆け抜けて大陸全土へと広がったのであった。そして、それを祝うように数日、洛陽の街は歓喜に包み込まれていたのであった。
産まれてきた皇子の名は
性は劉
名は協
字は伯和
と名付けられた。
北斗が管理する世界では後に献帝と呼ばれることになる人物だ。
ただ、南斗が管理する世界ではどうなるかは誰も知らなかった。
それでも、後漢末期に産まれたため数奇な運命を辿ることには変わりないだろう。