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落ちた先は、おかしなものばかりで溢れていたわ!!
何もかもがひっくり返ったみたいな、へんてこな世界。
だけど、今までよりもずっとずっと幸せだったの。
気が弱い白兎も、
怒りっぽい女王様も、
自由なチェシャ猫も、
なぞなぞが好きな帽子屋も、
騒いでばかりの三月兎も、
のんびりとした眠りネズミも、
私だけを見てくれる。
私の側にいてくれる。
私に微笑んでくれる。
だから、みんなみんな大好き!!
……でも、たまぁに、嫌いなのがいるの。
黒いインクを零したみたいに、ソレはじわりと世界を汚していく。
でもね!
この物語は、何もかも主人公の思い通りに進むもの。
アリスが望まないものは、要らないものは、全て消してしまえばいいの。
例えば、粉々に壊してしまったり、ぐちゃぐちゃに塗り潰してしまったりして。
そうしても、誰も私の邪魔をしたりしない。否定したりしない。嗤ったりしない。
昨日までのことだって、全部びりびりに破って捨ててしまえるの。
まるで、私じゃなくなったみたいだけど、それじゃあだめよね。
――――だって、ここはアリスの世界なんだから。