表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

基準の分からない常識。

明けましておめでとうございます。

今年も、ちまちまと更新していけたらなと思います。


年が明けても、何年経っても成長しないアリスちゃんたち(色んな意味で)を、どうぞよろしくお願いします。

「ふっ……ふふっ、は、はは……っ、ごほっ」


 ひとしきり……というか、声を上げて笑うのを抑えたせいで過呼吸寸前までなったあと、ズレた帽子を直して、彼は優雅に紅茶を飲んだ。

 カップを持つ手が震えていた気がするけれど、少し噎せていた気がするけれど、とりあえず飲みきった。……やっぱり優雅じゃなかったかも。


 チェシャはイスからずり落ちたのに、まだ笑い続けている。文字通り()()()()()せいで、気づけば彼の近くに移動していた。

 しかも彼と違って、少しも笑い声を押し殺すことなく、「あははははは」を繰り返している。……酸欠になればいいのに。ていうか、何でならないんだろう。


 そんなチャシャのせいで、何回かつられて吹き出しそうになりながらも、なんとかそれを堪えた彼が、今度こそ優雅に紅茶を注ぎながら、私に微笑んだ。


「えぇっと、なんでしたっけ……そうそう。耳でしたね」

「っ、あはははっ、ひぃ、アリス、犬耳って! くま耳って!! こいつに!? うわぁぁあはははっ! きもい!! ひぃ、最高だよ……っ!!」

「熱湯ぶっかけて欲しいですか」


 そう言いながら笑う姿は、女王様を思い出させた。

 だけど、どうしても笑いは収まらないらしく、持ち上げたカップが震え、まだ湯気の立っている紅茶がパタパタと零れて、彼自身にかかる。そこがまたチェシャのツボにはまったらしく、更に声を上げて笑い出した。それに誘発されて、彼も堪えられなくなり、カップを握ったままテーブルに突っ伏してしまった。


 ……いい加減、笑いすぎではないだろうか。というか、笑いすぎだ。うん、ムカつく。私が笑われていて、しかも理由が分からなくて、完全に蚊帳の外なところが特に!


「ねぇ」


 怒りで声が震えないように、そして低くならないよう、努めて明るくいつも通りの声で話す。

 だけど、その必要はなかった。笑いすぎて苦しいのだろう、二人とも体を折り曲げて見向きもしない。






「苦しいなら、私が止めてあげようか?」


 そう言いながら静かに席を立ち、紐の代わりに制服のスカーフを解いて、両手で引っ張る。何の音もしなかったはずなのに、同時に二人が顔を上げる。あんなに苦しそうに笑っていたのに、今は口を閉じて青ざめている。……笑いすぎて、気分が悪くなったのだろう。でも、大丈夫。それももうすぐ治るから。


 最善策を見つけた私は、今までで一番気分が良かった。鼻歌でも歌っていしまいそうなほどに。元々あまり遠い距離にいたわけでもないから、すぐに彼らとの距離が狭まる。

 暑くもないのに汗を流す二人の顔を交互に見ながら、優しく微笑む。何か言おうと口を動かしていた二人の動きが止まった。



「息の根を」



 そう言い終るのと、彼らの両手が顔の横まで上がるのは、ほぼ同時だった。

 本当なら勢いよく土下座でもしてもらいたいんだけれど、チェシャが正座を知らなかったんだから、どうせこれも知らないだろう。


 まぁ、いい。

 ――――とりあえず、これでコイツらは黙った。



~裏側、こそこそ話~


「……ねぇ、アリスなんか怖くなってません?」

「……やっぱ思う? 無邪気さが消えた分倍増しで怖いよね」


 スカーフで何をするか想像できた彼らも、なかなか怖いと思うんです。

 あと書いた後に気づいたんですけど、スカーフ一枚じゃ足りないですよね……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ