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神獣と花火  作者: 霧吹き
2/2

第二話 始まり

「ご主人様!!」


「…っ!?」



悠繕は突然の出来事にあまりに驚いたのか、声が出ず全身が竦んでしまった。

顔を上げると、何かの生き物がにこにこしながらこちらを見ている。悠繕はただその生物と目を合わせながら全身を震わせ、呼吸を乱していた。


しばらくして、大分落ち着いてきた頃に悠繕は大きく一息ついた。ここで一気に仕掛けてみよう、話しかけてみようと思ったのだ。しかしなかなか言葉が出ずに小さく口をぱくぱくさせてしまう。相変わらずその生物はこちらを見ながらにこにこしている。そしてついに勇気を出して一言、話しかけた。



「…な、なぁ。」


「はいっ!!」



悠繕は再び体が竦んだが、今度はすぐに体の震えはとまった。確かに言葉を話す生物など異常だ。だがよくよく見てみれば他の小型犬、例えばミニチュアダックスフント程の大きさの可愛い生き物だ。全身の白い毛は毛先1cmほどだけ橙色で染められていてとても綺麗だ。こちらを襲う気配もまったくない、何も問題などないではないのか──と勝手に思い込み始めたからである。



「お前はそのカードの中から出てきたのか? 俺にはそう見えたが…。」


「そうですよ、僕はこれの中で眠りについていたんです!」


「は、はぁ…。」


「ご主人様は、僕のこと忘れちゃったんですか?」



幼い女の子のような声を発するその生物の笑顔はとたんに消え去り、今にも涙が零れ落ちそうな悲しい顔になった。悠繕は何かヤバいような気がして別の話題に持ち込もう、と試みた。



「お、お前は俺の事知ってるのか?」


「あったりまえですよ! ビクター・デノーレ、ビクターご主人ですよね!!」


「び、ビクター?!」



話を切り替えるはずが、どんどんその生物の謎の世界観に引き込まれていってしまっている。このままでは何かまずい、と今度は自分を語ることにした。



「…いや、知らないね。 俺は悠繕、安田友繕だ。」


「え~…ウソだよ。 だって雰囲気はちょっと違うけど、昔のご主人様と一緒だもん! あ、そうか、ギガーナ王国から出たから名前も変えたんですね! 確かヒマシ国の方ではそんな感じの名前が一般的で…」


「あ~…うぅ」



まるで話は切り替わらない。この生物はどうしてもその"ご主人様"の話をしたい、いや、"ご主人様"と話をしたいのであろう。それほどこの生物にとって慕える存在だったのだろう。



「そういや、お前の名前を聞いてなかったね、何だったかな?」


「も~、僕の名前も忘れちゃったんですか!? 僕はロサ。思い出しましたか?」


「あ、あぁ。…しかし、どうすっかなぁ」



ここまで勘違いされて自分に執着されては放っておく分けにもいかないと悠繕は考えていたようだが、まず自分の母親がこのような喋る生き物を家におかせてくれるとはとても思えない。ましてや隠せる場所なんてこの家にはないし、その前にこいつが何を食べるのかすら分からない。というか、悠繕は普通の動物を飼ったことすらないのに、この不思議な生物の飼い方など分かるはずもないのだ。



「とりあえず今晩はもう遅いから、ひとまず寝ようか。」


「はい! ではおやすみなさい!」



そう言ってすぐに体を丸め始めて寝る体制に入った。悠繕は敷布団を敷き始めるがロサが動き始める様子はない。布団にもぐりこんだあとも畳の上で体を丸めたままだ。



「…なぁ、あんた。」


「はい?」


「別に布団で寝てもいいんだぞ。 いくら夏とは言ってもこの部屋は風通しが良くて夜中は冷えるから。」


「ありがとうございます! ではお言葉に甘えて!」



綺麗な白と橙の尻尾を振りながら布団に潜り込んで悠繕に擦り寄ってきた。やわらかい毛がくすぐったいので悠繕はほんの少しだけ距離を置いて目をつぶった。


あまりに驚き疲れたからなのか、悠繕はすぐに意識がなくなってすやすやと寝息を立てはじめた。















そして朝。目覚めてみるとやはり隣には昨日の生き物が幸せそうな寝顔で眠っていた。



(…夢じゃなかったのか)



昨日は悠繕も自分なりに正当化していたが、やはり未だにロサの存在が信じられない。朝になって落ち着いて考えてみれば、自分の頭がおかしくなったんじゃないかと疑いはじめるほどにだ。



「ゆうぜーん! ご飯できたよ!」



階段の下から母親の声が聞こえてきた。悠繕は学校の制服に着替え終わるとロサが寝ているせいで片付けることができない布団を見たが、まあいいかの一言で済ませた。



「よし、そんじゃ下降りるけどお前はそこにいろよ。」


「…………。」


「よく寝るやつなんだな…」














「ん…。」



その後ロサが目覚めたのは12時半頃。おきると周りをキョロキョロし始めて誰かを探しているようだ。



「…ご主人様?」



幸か不幸か、ドアが開きっぱなしだったのでロサはそのまま階段を下りてそのまま外へ出ることができた。 ロサはかなり鼻がきくようで、鼻をひくひくさせながら家の外に飛び出した。



「…こっちですね!」



そう言うと暑い日ざしがさしている中陽気な足どりで尻尾を左右に振りながら悠繕が通う学校の元へと歩き出した…















午後1時頃。悠繕の学校では既に昼休みが終わり、午後の授業が始められていた。

悠繕達2年生の生徒の数はたったの12人、学校全体でも50人ほどの1階建ての小さな中学校。小学校とは隣接しており、塀を乗り越えればグラウンドから小学校に侵入することも可能だ。その構造から休み時間には塀の向こう側からボールが飛んでくることも少なくない。




「それでは教科書の114ページを開いてください。今日は税金について──」


(…そういや朝は何にもエサやってなかったな。大丈夫かな…)



悠繕は相変わらずロサの事で頭がいっぱいで、先生の話はほとんど耳に入ってこない。午前の授業も同じように、ただなんとなく先生の話を聞き、ノートを書いて問題を解く。これの繰り返しだった。


ふと一瞬目線を窓の外のグラウンドの方に向けてみた。外は今日も日が照っていてグラウンドの上はとても暑そうだ。



とその時、窓越しに何かが目に入ってきた。 橙色と白色のグラデーションでできたもふもふしている毛を生やした生物──



ん?



悠繕は一瞬目を疑った。 そこには自分の部屋にいるはずのロサが、窓の外からにこにこしながら尻尾を振り、こちらを眺めている光景があった。



「うあっ!?」



悠繕が大声をあげたその瞬間、一斉にクラス中の視線が悠繕に集まった。幸いにも悠繕の席は中央寄りだったのでロサの存在はバレる事もなく、面倒ごとにもならなさそうだ。



「どしたの?」


「あぁその、シャーペンの芯が折れちゃって…ハハ」



隣の席に座っている代議員の大谷雫おおたにしずくが心配をかけてくるも、苦笑いとあまり理由にならない嘘をついてごまかした。



「リアクションでかすぎだろ悠繕~!」



席の後ろから風見のこちらを馬鹿にするような声が聞こえたが、悠繕はとにかくロサの事で頭がいっぱいだった。喋る犬がこのクラスの安田悠繕になついている、などと噂が広まれば普通に考えて周りの人々は皆気持ち悪がって悠繕に近寄ってこないだろう…いや、それだけで済めばまだマシだ。


悠繕の頭の中にはとても明るいとは言えない未来のイメージが覆っている。そしてどんどん頭の中を侵食していくのだ。



(たのむからおとなしくしててくれよ…)



悠繕はただロサに向けて見つかるな、見つかるなと祈るばかりだった。

何だかもう既にグダグダ感が否めませんが…大目に見てやってください。

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