じじいモンスターと戦う
何事も無ければ四日の旅路
それは前回と同じである
筈じゃった
遠くから女性の悲鳴が聞こえてくる
普通の貴族なら見捨てるのじゃろうが、ウチの子爵様は冒険者上がりなのでそういう貧乏くじを好んで引く
「セバスチャン、カタナを任せる!」
短くそう告げるとパーパスは馬車を飛び出し声の方に走り去る
「心得ました」
セバスチャンは胸に手を当て短くそう返す
暴風のパーパス
国内のみならず近隣の国々にもその異名を轟かせるS級冒険者にして王国最強の剣士
それがパーパスである
戦ってみたい
などとは考えん事にしておる
戦神様の加護がどう働くか解った物ではないからのぅ
親子で斬り結ぶのは良くないからのぅ
じゃがワシもそろそろ戦ってみたい物じゃ
手頃なモンスターが襲って来ぬかのぅ
物騒な事を考えていると
『スキル戦紳の加護を発動させますか』
という久し振りに聞く無機質な女性の声
ガイダンスさんである
戦紳の加護は望む戦いを叶えてくれるという神様の特殊スキルじゃ
腕も鈍っとるとか言うレベルですら無いか取り敢えず何か実力が計れる相手と戦いたいわい
『スキル戦紳の加護を発動しました』
ガイダンスさんが淡々とスキルの発動を伝えてくれる
良かった、一応確認してくれるのじゃな
「お坊ちゃま、申し訳ありませんが身を低くして暫しも待ちを」
セバスチャンはそういうと馬車を降りていく
此方も襲撃を受けているよう
気配から感じるに数は五、六
盗賊か?
一応連携は取れてはいる物の実力も練度もまるでなっとらん
?
別動隊?
頭が回る奴が居るのじゃろうか、幾つかの気配が馬車に近付いてくる
「気付かないとでも思いましたかね?」
外からセバスチャンの声がする
こうも露骨に殺意が駄々漏れでは気付かない方が難しいという物である
しかし、激しい斬激音に馬車が微かに揺れる
新手?
馬車越しとは言えヤシの意思外から出てくるとはやりおるのぉ
これはセバスチャンでは荷が重いかも知れんのぅ
ワシも馬車を出てみる事にする
「いけませんお坊っちゃま、お戻りください!」
セバスチャンは此方に向かって叫ぶ
見たところまあまあ腕のたちそうな剣士と緑色の小鬼…
図鑑で見たゴブリンとかいう奴がそこにおった
しかし気になるのは何故ゴブリンと人間が一緒に行動しとるのかという事じゃが、まあええ
斬れば全部同じじゃ
ワシは腰の剣を抜く
誕生日プレゼントと言うてパーパスから貰った練習用に刃引きされたなまくらの諸刃の剣である
出来れば軍刀が良かったのぅ
「なんだこのガキ、そんなオモチャで俺様に挑もうってか」
その抜刀のぎこちなさにセバスチャンと戦っている剣士が笑う
年の頃はパーパスより若干年上か
歴戦ですと言わんばかりに顔が古傷だらけじゃ
拙いのは勘弁して欲しいのぅ
ワシも諸刃は初めてじゃから
「生け捕りだ、殺すんじゃ無ぇぞ」
男がゴブリンに命令すると二匹のゴブリンが襲い掛かる
が、武器をおとしキョロキョロと周囲を見回す
「遊んでんじゃねぇぞお前ら!」
男が怒号を挙げるがゴブリン達はワシの斬激をモロに受けてその場に崩れる
石つぶて
極めて原始的な武器である
威力はそれ程でも無いが魔力関知に引っ掛からないからこの世界では不意打ちに引っ掛かる奴も多かろうとは思っておったが案の定じゃったな
「よそ見とは余裕ですな」
セバスチャンの声に男がハッとするも時既に遅し、セバスチャンのレイピアの鋼鉄製の護拳で殴られ男はその場に崩れる
「私も舐められた物です」
セバスチャンがそう言って殺気を込めると生き残ったゴブリン達は一目散に街道脇の林の名かに逃げて行った
「申し訳ありませんお坊っちゃま、お怪我などありませんか?」
努めて冷静を装ってセバスチャンがワシに声を掛けてくる
それを聞いたワシはその場に座り込み大粒の涙を流して泣いた
「ごわがったよぉ」
ワシがこの四年を掛けて磨き上げた子供の振りという技術じゃ
課題は見えたがあの程度ならワシ一人でも問題無かろう
そうこうしていると縄で縛られた女を抱えてパーパスが戻って来る
成る程、女は囮で本命はワシといったところかのぅ
何のために?
「申し訳ありません、何者かの奇襲を受けました…」
セバスチャンがパーパスと何か話をしている
ワシはケロリと泣くのをやめて馬車に近付いて戻る
やはり諸刃は好みじゃない
当面の問題はこれじゃな
男三人は縛られた男と女を馬車に乗せ再び王都を目指すのじゃった




