じじいの風
「カタナ様は確か…」
私の名前はメイ、カタナ様のお付きのメイドをしております
メイドだからメイ
名付けの神様は割りといい加減に名前を付けているのかも知れませんね
私は今、お父様…執事長のアル様の言い付けで手紙を届けに衛兵の詰所に向かっています
なんで説明してるのかですか?
ふふふ、なんでですかね
「よう、嬢ちゃん、ツラぁ貸してくれねぇか?帰さねぇけどな」
という声を聞いたのを最後に私の意識はどこかに消えて行きました
「ああ、カタナ様…」
「ふぅ…」
これで何人の話を聞いたのじゃろうか?
キレずに斬らなかったワシを褒めてやりたい
そんなゴミ処理ばかりさせられたわい…
『スキル風神より風の知らせを発動します』
頭の中でガイダンスさんの声が響く
何時もの様にスキルの発動の確認がなく強制されるのは珍しいのぅ
等と思っておると周囲の景色が徐々に色を失い灰色になっていく
こりゃ神様案件じゃな?
経験からワシはそれを察した
はてさて、次は誰がお出ましやら
「私よショタセン」
ショタセン…ショタセンチュリーの略称らしい
見た目がぷりちーな百越えたじじいの事らしいのぅ
「どうかなされましたかな、ワルド様?」
声の主はワルド様、この世界で一番偉い子供が大好きな女神様じゃ
「奴隷にされかけた子供を助けてくれてありがとう、礼を言うわ」
ワルド様が頭を下げて礼を言う
畏れ多くてワシがワタワタしているとワルド様は話を続ける
「ショタセンに借り作るのもシャクだからあんたに良いことおしえてあけるわ」
言い方はアレじゃが顔は笑っていない
むしろ切っ掛けがあれば世界の一つでも滅ぼし兼ねない、そんな目をしておる
「あんたのとこのメイドのメイちゃんが拐われたわ」
ワルド様の言葉にワシの中でもう一人のワシが現れる
『お前さん、ワシが居ないとぶちギレて何するかわからんからのぅ、一つ話し合おう』
もう一人のワシの言葉にかろうじて目の前の貴族を斬らずに済んだ
これだけの人数の金持ち貴族をまとめて捉えれば身内が危険に晒される可能性は解っておったハズじゃ…
『そう自分をせめるでない、ワシよ』
もう一人のワシがワシを宥める
「私が加護でチャチャっと解決しても良いんだけどソイツらあんたが今調べてる事の役に立つから殺さないでおいてやってるのよ…」
こっちはこっちで理性保つのに必死らしい
フウゲツ様は性ワルドと言っておったがやはり子供に対する無償の愛は本物じゃのぅ
「何?フウゲツの奴そんな事言ってたの?」
ワルド様が別の方向に怒り出す
じゃからワシの心の声を勝手に覗かないで欲しいのじゃが…
「何にしろあんたにメイちゃんを助ける権利をあげるわ、そして犯人はあんたに必要な情報を沢山持ってるから殺さない事ね」
本当はどうにかしてやりたいという気持ちを抑えてワルド様がワシに無理に笑ってみせる
これで斬ったりしたら流石に男としての沽券に関わるのぅ
「吐かせた後は必ずや相応の罰を与えると誓います」
ワシは目の前に居る最高神に跪き宣誓をする
「当たり前よ、悪い様にはならないようにしとくから急ぐのよ」
そう言うとワルド様はスッと消えていった
『スキル並列思考Lv1を取得しました』
ガイダンスさんのメッセージが頭に響く
要はさっきのもう一人のワシじゃな
気が付けばワシは手にしていた金属製のペンを握り潰していたらしく目の前に居る貴族は泡を吹いて気を失っていたのじゃった




