じじい尋問をする
ディナーのメインディッシュが黒幕のぐぬぬなら、目の前に居る金持ちや貴族達は朝めしにパンの添え物として出てくる木の実のジャムじゃろうか?
普段は偉そうにふんぞり返って居るのじゃろうがワシが王族に連なる上級貴族の端くれなので勝手の違いに戸惑っておる様じゃな
「あの…早く出して貰えませんかね…」
一人目の尋問は男爵
ハモンやテケスと同格じゃがどうにも貴族らしくないのが気になるのぅ
「ダス商会は違法取引をしていました、あなたにもその容疑が掛けられているという自覚を持って頂きます」
ワシは男の目を見据えて言う
「いや、俺…私はただ紹介されて偶然あの場に…」
両手を握々しながら愛想を振り撒く
じゃがのぅ…
「帳簿上あなたが購入した物は明らかな盗品の様ですが、子供の私でもアレが盗まれたと大騒ぎになった事は知っていますよ?」
男が購入したのは数日前水の女神の礼拝堂から盗まれた小さな金のメイスイの像である
…本物より威厳に満ちておるがのぅ
神への信仰心の強いこの世界で教会で盗みを働くとは大胆と言うか、騒ぎにならない方がおかしい
「それが全く存じあげず…」
そんな訳あるかい
男は苦悶の表情をしながらどうにかこ場のを切り抜けようと、そんな顔をしておる
「王国法において盗品の売買は禁止されています、それは盗品であるか知っていたか知らなかったは問われません」
ワシの言葉に男は口ごもる
「あなたも貴族ならば怪しい品に手を出すべきでは無かったのではないですか?」
ワシは続けて問いかける
「そ…そうだ、取り引きしましょうお坊っちゃま…俺は…いや、私はあんたのお役に立てますぜ?」
質問の答えになっとらんのぅ
それと言葉遣い
ずっと気になっておったのじゃが本当に貴族なのじゃろうか?
「質問の答えになっていませんが、何を取り引きしたら私の役に立つのかお聞かせ願いますか?」
ワシが提案に乗ったと勘違いしたか男は下卑た笑みを浮かべる
「私に任せて頂けたら一大派閥を作りあなた様を次の王に…グヘッ」
男の言葉をワシの拳が止める
「そのまま続けるなら殺すぞ…」
ワシは帝国軍人じゃった頃敵兵相手にも見せた事の無い剥き出しの殺意を男に向ける
そこにぷりちーさは微塵もない
「ヒィッ」
男は短く悲鳴を挙げる
そんな男の髪を掴みワシは言い放つ
「勘違いするなよ小僧?ワシは貴様を拷問に掛けて有ること無いこと吐かせても良いのじゃぞ?」
人様に向けてじじい言葉を使うのは初めてじゃのぅ
少なからず七年この国を見て来たが政治はマトモで民は豊かで平和で
なんだかんだでワシはこの国を好いておる
「貴様、まさか覚悟もなく今の言葉を吐いたのではあるまいな?」
ワシは畳み掛ける
男は何とか切り抜けようと次の言葉を探しておるのが見て取れる
「お…」
お?
目を白黒させながらようやっと言葉を紡ぎ出す
「俺に何かあればゼン様…ゼン・ソーディアスが黙ってないぞ!」
男が髪を掴むワシの手を払いのけ仁王立ちする
面白いから様子を見るかのぅ
「ゼン…大叔父は公爵で確かメイスでは?」
王でないどころかソードですら無い王位継承権を剥奪された今回の黒幕の名前が早々に出て来るとは思わなんだが様子がおかしいのぅ
「余裕を
咬まして居られるのも今の内だ、今すぐ俺を解放したら悪い様にはしないぞ?」
急に強気な態度になり男がこちらに取り引きを持ちかける
「あなた程度の下級貴族が公爵と繋がりがあるとは思えませんが?」
ワシは痛くもない払われた手を庇う振りをして男に訪ねる
「フン、俺はゼン様に巨額の融資をしている、この身分もその礼にと贈られた物だ」
黒幕は買官行為もしておったか
どこまでも業の深い話じゃのぅ
「その俺を怒らせたらお前らなんて一溜まりも無い、理解出来たか?」
男は腕を痛がり苦しそうにしている子供に得意気に語る
まあ、語るに落ちる先は地獄なのじゃが
「記録係」
ワシの言葉に取調官は短く首を縦にふる
「なっ?」
何事もなく立ち上がり取調官とやり取りをするワシを見て男はやっと口を滑らせた事に気付く
「楽に逝けるとは思わぬ事じゃな」
男はその場に崩れ落ち声にならない悲鳴を挙げるのじゃった




