じじいの朝メシ
新しさ朝が来たのぅ、希望の朝かは知らんが
喜びに胸を広げ…
そろそろ怒られそうじゃからやめとくかのぅ
ソーディアスの貴族の朝は早い
大体日の出と共に起きて剣の稽古から始まる
ワシは稽古の時はパーパスが四歳の時にくれた剣を愛用しておる
義理ではなく子供の身体には丁度良い重さなのじゃ
…流石に四歳児には重過ぎたがのぅ
国一番の戦士というのは伊達ではないと言ったころかのぅ
もっとも、成長期の子供が過度に筋肉を付けても良いことは何もないから殆ど柔軟に費やすのじゃが
「お疲れ様です、カタナ様」
タオルと着替えを持った幼いメイドが声を掛ける
親子で我が家に仕えるワシや姉のシスの幼なじみでもあるメイじゃ
「ありがとうございます」
そう言ってタオルを受け取ろうとすると手を引っ込められてしまう
「ダメですよカタナ様、お父様が言っていました、こういう雑事は下々の者にやらせるのが一流の貴族です」
指を立ててメイはしたり顔で説明する
また変な事を吹き込まれとる…
しかしのぅ
「叔父の国王陛下もご自身の事はご自身でしていますので…」
一応の抵抗を試みる
辺境の騎士団で揉まれていた騎士上がりの国王を普通の貴族と同列に扱って良いものかは議論の別れるところじゃ
「ダメです」
一瞬考えた結果一言で終らせられてしもうた
「国王陛下は王族で貴族ではありません!」
今日一番のどや顔を見せてメイはふんすする
「メイ…ぼくも一応王族でまだ貴族号盛ってません…」
一般的に貴族の跡取りは父親の爵位の一つ下の扱いをされる
じゃから辺境伯であるパーパスの息子のワシは伯爵待遇で扱われるのじゃが、それはそれとしてワシはまだ爵位を拝しておらんぷりちー七歳児なのも事実じゃ
「…では、お姉さんとしてカタナ様を拭き拭きします」
少し考えた末の結論がこれである
シスやメイには中々に抗えんのぅ
恐るべし…
「ぬぅ、くすぐったいです」
観念したワシは遺憾ながらメイに拭き拭きされておる
ワシも齢111歳じゃ、小娘に拭き拭きされたところで今更情動は動かんが、恥ずかしくてクラクラしそうじゃ
最後まで介護士さんやヘルパーさんのお世話にはならんかったのじゃが、みんなこんな気持ちじゃったのかのぅ
不意にメイの頭がワシよ顔に近付く
石鹸の良い香りがするのぅ、シャンプーみたいなもんが無いから何処と無く死んだ婆さんの若い頃を思い出す匂いじゃ
「すみません、顔近すぎますね」
その状態でメイはワシの方に顔を向け恥ずかしそうに照れ笑いする
物凄く顔が近いのぅ
ワシがあと95歳若ければ放っておかんかったろうか?
「構いませんが少しだけ恥ずかしいです…」
ワシはせめて精一杯の抗議をする
やっとの事解放されワシは朝食をとる
何時もの芋のスープとパンじゃがな
芋のスープか豆のスープか日によって変わるくらいかのぅ
貴族であっても質素倹約質実剛健がこの国の作法
ぶっ飛んだ羽目の外し方もするのじゃが基本的に質素なもんじゃ
肉なんて最後に食べたの何時かのぅ
贅沢は言わんから米が食いたいのぅ
などと不平不満を思いながら何時もの朝食を終らせる
「さて、朝食も済みましたしモーニングバイキングでも楽しみますか」
ワシの言葉を不思議そうに見ている従者達を他所にワシは衛兵の詰所へ向かうのじゃった




