じじいとネズミ
居るのが解っとるスパイなんそ御すのは容易い
既にネズミはマナの術中にハマっておってあやつらにはワシらが健やかに寝てる用に見えとるじゃろう
おそらくは情報収集が目的じゃろうから放置しても問題無かろう
壊れてしまった刺客は薬によって眠らされた衛兵に、間違って殺された金持ちはダスに見える様にして貰った
つまり、ダスの暗殺は成功した
という風にネズミには見えとるハズじゃ
「それで、どうすんだ?」
マナがワシに聞く
そうじやなぁ、正直ダスか必要かと言えば要らんし相手を撹乱する意味もあまり無いのじゃがのぅ
「出し抜けたら楽しいですよね」
ワシはマナに笑顔で答える
小賢しく悪巧みをする奴がグヌヌオノレする顔は見たいからのぅ
ワシを怒らせたのじゃから当然の話じゃ
「で、具体的に何をするつもりだ?」
マナはそんなワシの愛らしい笑顔を呆れた様な顔で見ながら言う
「取り敢えず泳がせます、多分黒幕さんの手下なのでネズミを見付けたハモンさんが美味しく調理してくれますよ」
そう言ってワシは無責任に丸投げする
「おいおい、大丈夫なんだろうなぁ…」
心底呆れたと言いたげにマナが肩を竦める
「ハモンさんは優秀な方です、それにあの人も今回の件ては相当怒ってましたからね」
じゃからハモンにも活躍の場をしっかりと与えてやらんとならん
「貴族ってのも楽じゃねえな」
何かを察したかマナは同情を込めて言う
それもあるのじゃが今回はハモンの活躍が大きいからのぅ、美味しいところだけ持ってく訳にもいかんのじゃ
「という事ですのでメインディッシュには呼んでくださいね?」
ワシは誰もいないはずの場所に向かって言う
「メインディッシュ?」
何を言っているのか解らないと言いたげにマナが言う
しかしその刹那、誰もいないハズの空間から黒装束の男が現れる
「私はコッパー男爵の手の者にございます、この様な形での挨拶大変ご無礼を致しました…」
黒装束の男はワシの前に近付き跪いて言う
コッパーはハモンさんのセカンドネームじゃな
「敵のスパイが居ないのか警戒してのことですから気にしなくても良いですよ」
ワシは跪く男に優しく声を掛ける
この手のは下手な事を言うと責任とか言って腹を切りかねんからのぅ
それに…
「俺の探知の網を抜けてくるとは中々やるじゃねえか」
マナは楽しそうに笑う
おそらくは本気の探知などしていなかったのじゃろう
じゃが、それでも黒幕のスパイも暗殺者も悉く引っ掛かった網をあっさりと抜けてくる優秀な男をくだらん理由で失うのは惜しいからのぅ
「ご配慮感謝致します」
男は短くそう言うと跪いたまま書簡を差し出してくる
ハモンの印の入った封を破り中を見る
テケスが黒幕とおぼしき人物と接触
暗殺のおそれかあった為テケスを確保致しました
とだけ綴られていた
一々やる事が裏目に出る連中じゃのぅ
ダスといい要らないと言えば要らないのじゃが
そう考えながらワシもペンを取り手紙を記した
ワシも七歳じゃからこの世界の文字もしっかり覚えたのじゃ、えっへん
こちらでもダスとその客を捉えました
暗殺者がきましたので大賢人マナ・ライ様と共に撃退
大賢人マナ・ライ様の幻影により暗殺は成功したという偽定法を掴ませています
追伸
必ずディナーへはうかがいます
と記し封印をする
「これをハモン男爵にお願いします」
ワシの書簡を浮けとると男は一礼し、そのまま風景の中に溶けて消えた
瞬間移動の類いじゃろうか、もうワシでも気配を探る事は出来なかった




