じじいの居ぬところ
カタナ様がダスの尋問をしていた頃、私は部下から動きが有ったという報告を受ける
「そうですか、やはり黒幕は彼でしたか」
私は込み上げる怒りを制御するのを忘れ手にしていた鉄製のカップを握り潰してしまう
「おっと、これで今月いくつ目でしたかね」
子供の頃から筋力がおかしく腕力だけで今の地位を得ましたが、皆さん私を頼ってくださり仕事も大変やり甲斐があります
「このまま動向を見ていてください、ただし深追いは不要てす」
感付かれて逃げられるのも優秀な部下を失うのも嫌ですからね
部下は一礼すると気配諸とも消えていった
ああなると私でもちょっと見付けるのは面倒です
「大変です旦那様」
執事が血相を変えて走ってくる
執事という物はパーパス辺境伯のところのセバスチャン殿の様にもう少しどっしりと構えていて欲しい物ですね
「何がありましたか?」
私は努めて冷静に執事に尋ねた
「大賢人マナ・ライ様が辺境伯様の街に御到着なさいまして…」
大賢人マナ・ライ様…
仙人の杜を束ねる首魁でその影響力は一国の王にも比肩する勇者パーティーの知恵袋…でしたね
「来られるという話は伺っています、何を慌てて居るのですか?」
国王陛下の結婚式に招待されていると聞いている
ついでに立ち寄る事は不自然では無いはずですが…
「それが…カタナ様と合流され賊の襲来を予見して待機されているとの報告です…」
その報告を聞いた私は既に潰してい鉄製のカップを更に握り潰して鉄塊に変えてしまった
「な…」
言葉にならなかった
国王陛下や辺境伯とは懇意とは言え相手は一国の主に相当する立場の要人、国の恥を晒してしまって大丈夫なのだろうか?
相手は暗黒のダーマすら倒す大魔法使い、万が一は無いとは思いますが傷の一つでも負わせたら国際問題に発展する可能性も…
とは言え考えても仕形がありません
「状況は逐一報告してください、干渉も無用に願います」
私は執事に指示を出す
相手は大賢人、それに幼いとは言え伯爵扱いの領主の子息
カタナ様の行動には父である辺境伯から任されているとは言え二人が揃うと私では最早口出し出来る状況ではない
私に出来る事は二人の無事を祈る事しか出来ません
「或いはあの男の方が面倒かもしれませんね…」
私は黒幕と目される男の子とを考え先日カタナ様が懇意にされてる薬師に調合して頂いた胃薬を流し込む
「しかしこれは効きますね、王都でも売れるのではないでしょうか?」
スッと消えていく痛みに一瞬現実を忘れる
「我が子もカタナ様とまでは行かずとももう少し成長して欲しい物です…」
薬箱を見詰めながらこれを渡してくれたカタナ様と我が子を比べてしまう
「流石によその子供と我が子を比較するのは親として良くないですね
」
多くの事が一度に起きた為に冷静さを欠いたのかもしれません
反省せねばなりませんね…
学校での学びが我が子の成長の一助とならん事を願わずには居られません




