じじいの悪巧み
その後ダスの口からここではちょっと言えない様な悪事の数々の証言がわんさかと出て来おった
あまりにもあまりだったのでワシがキレる前に衛兵がキレて暴れだして抑えるのが大変じゃった
彼に関しては不問にしといた
彼が暴れなければワシが斬って捨てとった
それにこのダスにはもうほんの少し生きていて貰わんとならんからのぅ
「記録係の方、本当に無礼を承知でお願いしたいのですが、こちらに書いてある内容を写して調書として保管室に保管しておいて頂けませんでしょうか?すぐに本物の調書と差し替えますので」
ワシは取り調べの内容を記録していた男に深く頭を下げ一枚の紙を渡す
公明正大でなければならない記録係に対する最大の冒涜である事を承知の上でワシはそれを願い出た
記録係の男はワシが差し出した紙を一瞥すると顔色一つ代えずにその紙を調書に書き写すとワシが渡した紙を火にくべてしまう
「申し訳なくありません、何かお願いされた気もしましたが燃やしてしまいましたので何の事やら私には解り兼ねます」
そう言うと今まで書いていた調書をワシに手渡す
「こちら、ご確認の上後程サインしてご返却ください」
そうじゃな、この男とてダスのやった事に腹を立てていない訳では無かろう
じゃが、彼の仕事を汚してしまったのは間違いない
ワシは再び頭を下げ調書をカバンにしまった
翌晩になり取り調べのあった日の書類がごっそり消えるという事件が起きた
まあ、予定通りじゃ
下手な犠牲を出させない為に警備も手薄にしといたからのぅ
とは言え、また彼らの仕事を汚してしもうた
どう謝罪してもし足りんのぅ
取り敢えず上物の酒でも献上するかのぅ
元代官はダスが何と証言したのか気になって仕方が無かろう
だから盗まれても良い様に偽の調書を作りそこに置いといたのじゃ
本当にしょうもない男じゃ
後はハモンが上手く料理してくれるじゃろう
こっちも撒き餌は撒いたし活き餌もピンピンしとる
後は大物が釣れると良いのじゃがのぅ
「いやいや、行けませんカタナ様こんなところ…」
二日後、衛兵達の詰め所にワシは居た
この街で一番高い酒を何本も持参して
「おそらくは数日の内に再び賊がここに現れます、私はそれに対峙する必要があるんです」
ワシの言葉にひたすらあたふたし続ける衛兵の隊長
無理もなかろう、ワシはこの街で二番目に偉いし国で見ても五本の指に入るくらい偉い七歳児じゃからのぅ
「そうは申されましてもカタナ様に何かあれば我々の首だけでは済みませんですし、何よりカタナ様はまだ子供です、大人の我々が子供を危険と承知でここに置く訳には参りません」
隊長の態度はあわてふためいては居るものの毅然とした立派な物じゃ
ハモン同様彼らの働きにも相応の褒美が必要じゃのぅ
「そこを曲げてお願いします」
ワシは何度も頭を下げる
命令してしまうのは簡単じゃがこれ以上彼らの仕事を汚すのはワシも辛いのじゃ
「これこれ、こんなところで何を騒いどる」
押し問答が外まで聞こえたのか詰め所に一人の立派な白い髭を蓄えた老人が入ってきて声を掛けてきた
「あ…あなた…様は…」
隊長はその老人を一目見て言葉を失ってしもうた
有名人なのじゃろうか?
見た目はワシより少し年下くらいかのぅ
ローブをまとい、杖をつき丸く大きなつばのついたとんがり帽子
如何にも魔法使いという見た目じゃが腰はまっすぐしとるし意外と若いのかもしれんのぅ
「まったく、パーパスの街だと言うから久し振りにソーディアスに帰ってこればこの騒ぎよ」
謎のじい様は愉快そうに笑っておる
一体何者なのかのぅ




