じじいの取り調べ
この国にも遺憾ながら奴隷制度は存在する
という話は以前にもしたのじゃが、そういう世界でしか生きられんもんも少なからず居るからワシはワシの倫理を目の前の男に押し付ける気はない
目の前の男はダス
貴族や金持ちを相手に商売をしていた成り上がりもんじゃ
「ダスさん、未成年の奴隷売買が違法ってご存知ありませんでしたか?」
ワシの一言にダスはビクッとし肩をすくめる
押収したもんの中に居ったのじゃ、子供が
この国…というかこの世界での共通認識として子供の売買は禁止されておる
まあ、性悪ロリショ…もとい、母神様の意向が強いからのぅ、この世界
それ故に高く売れる…という事なのじゃろうか?
「大体、母神様の加護がある子供を売り払おうとしてどうして上手く行くと思えたのですか?」
これが一番の疑問じゃ
おそらくワシが踏み込んだタイミングで子供がそこに居ったのも加護によるところじゃろう
それでもダスは無言を貫く
「拷問…」
ワシは呟く
その言葉にダスは酷く動揺して震える
「奴隷を拷問していましたよね、これもこの国では違法なのご存知ありませんでしたか?」
この国の奴隷制度は身分として一応の人権というか権利の様なもんも認められとる
給料は出さにゃならんし暴力もご法度になっとる
その辺りが他国より制度としてはぬるいという所以じゃ
「僕もね、好きなんですよ。カエルのお尻に麦の茎挿して空気入れてパンって」
ワシは公の場では私、プライベートでは僕という言葉を使い分けておるのじゃが、この男には今は子供の無邪気な残酷さの方が怖かろう
「人間でやったらどうなるんでしょうね?」
無邪気に笑って見せる
おそらくは様々な拷問を奴隷に行って来たのじゃろうこの男は過去の自分の行いで創造力をフル回転させ恐怖にガタガタと震え出す
「僕、無口な人嫌いなんです」
それを聞いたダスは傍目に見て素人にも分かる程激しく動揺して震えが止まらなくなる
「…テゲス様…」
ダスがようやっと絞り出したその名前は元代官の名前じゃな
テゲス・メイス男爵
三流貴族じゃ
どこぞの貴族から身分を買ったとかいう噂のあるしょうもやい男じゃとハモンが言うとったのぅ
「テゲス様を呼んでください、私はあの方からちゃんと商売の許可を…」
そこまで言うがワシはその言葉を遮る
「テゲス殿はあなたの事はよく覚えていないと言ってましたよ」
この男は何故この期に及んで自分が捨てられないと思えるのか不思議でならんのぅ
「そんな…」
ワシの言葉の意味をようやっと理解したのかダスは力無くうなだれる
「捨てられちゃいましたね、どうしましょう」
ワシはぷりちースマイル100点満点でダスの顔を覗き込む
ねえねえ今どんな気持ち?
捨てられてどんな気持ち?
と言ったところかのぅ
「ダスさんの選択肢はあまり多くはありません、男爵に義理立てして僕のお遊びに付き合うか…」
この言葉にダスは過剰に反応する
そうやって奴隷を脅して楽しんでおったのじゃろう
ワシの倫理観をこの世界に押し付ける気もないのじゃが,取り調べを見守っていた衛兵からも記録係からも分かりやすい怒気を感じるのでこの国の倫理観でもこの男が助けるに足りん男なのは見て取れる
「男爵、売っちゃいましょう」
ワシはダスに優しく囁く様に呟く
アメとムチ、鞭は確実に地獄の入り口じゃからのぅ、この男には実質的に選択肢なんぞない
「私もも…商人ですので、お望みとあらばなんでも売らせて頂きます」
観念したのか捨てられた腹いせか先ほどまで無口だった男は途端に饒舌になる




