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じじい尻尾の先っちょを掴む

話を聞くに本当にギリギリの状態じゃった

既に売約済みだった者を破格値で買い取りすらしておったそうな

こりゃハモンには勲章の一つでも出さんと恩が返せんかも知れんのぅ

「我々を救い出してくれたのは現領主様だと伺っております、もしそのせいで現領主様にご迷惑の掛かる様な事が有れば…」

若い男が言う

まあ、可能性は無くもないのじゃが杞憂じゃろう

「大丈夫、皆さんを奴隷として売るのは国の法に触れますからあなた方を売った連中も大事には出来ません」

彼らも被害者じゃろうに不平不満より先にパーパスの心配をしてくれるとは、これはワシらも救い甲斐があるという物じゃ

「それにこの村は現領主の直轄地、今は息子の私が管理していますし何より同じ村に住むオニ達相手に無理をして皆さんを危険な目に遇わせられる様な連中もいません、この村の中にいる限り皆さんは安全です」

安心させる為の嘘ではなく本当に

彼らは強い

それも近隣から次々と隠れ住んで居たオニ達が集まってきていて、おそらくは国内の戦力としては第一王立騎士団、第一王立魔法隊と並べても遜色はないじゃろう

むしろ泥臭い戦争をやらせるなら国内最強まであるのじゃからのぅ

ただ、脳筋揃いで搦め手にはちょっぴり弱いから他の部隊とは仲良くやっていきたい物じゃが

「皆さんの安全は現領主ならびに現国王の名において保証します、ですので安心して犯人の確保の為に些細な事でも構いませんので何かあればお聞かせください」

ワシは深々と頭を下げる

贖罪の意識からではない

彼らを共に戦う中間だと信じればこそじゃ

「頭をあげてください、現領主様もご子息様も何も悪くないのですから」

若い娘に促されワシは頭をあげる

「そう言えば、私たちを売り飛ばした男には覚えがあります」

別の若い娘が言う

「前の代官の時代に時々領事館に出入りしていた業者です、街に村の作物を売りに行っていた時に時々見掛けました」

娘の反応にガイを含め何人かが同じ様な証言をする

掴んだぞ、尻尾

その商人の名はダス

元代官に取り入って短期間で財をなした成金商人じゃったかのぅ

確かパーパスが着任して早々取り入ろうとして失敗した連中の中にそんな名前もあった気がするのぅ

お貴族様の流儀を知らなんパーパスを少しだけバカにした物じゃが、内面を見透かして居たのやもしれん

ちょっと反省じゃ

で、甘い汁を吸えなくなったから元サヤに戻ったと

なる程のぅ

「解りました、皆さんに再び辛い思いをさせてしまい本当に申し訳ありません、ですが彼らをもう二度と野放しにはしないと約束します」

ワシはそう言うと再び頭をさげる

その晩、彼らや合流したオニ達の心労や村の再建に従事していた者達の労を労うささやかな宴を開いた

と言うても以前にも言ったが、この国では質素倹約が美徳じゃが羽目を外す時は全力で羽目を出すのもまた美徳じゃ

当然それなりのもんは用意させて貰った

「人とこの様な平和で楽しい夜が過ごせるとは夢にも思っておりませんでした」

オニ達を取り仕切るソンがワシに声を掛けてきた

「アカには感謝しなきゃですね」

ワシは笑って言う

アカが人間不信を拗らせてワシに襲い掛かって来たのが全ての始まりじゃからのぅ

「あのボケはあの後きっちり解らせましたのでご容赦を」

そんな気なんて更々無いのを承知でソンは笑って言う

「それにしても平和で良いですね」

人に怯えて隠れて逃げながら生きていたオニ達と魔物に村を焼かれ、元代官の迫害から逃げてきたこの村の住人達が肩を組んで酒を酌み交わす姿を見てワシは言葉を漏らす

平和は大事じゃ、一度失うと取り戻すにはとんでもなく時間が掛かる

じゃから守らねばならん

掴んだ尻尾、離してはやらんからのぅ

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