じじとい医療
と言っておいて何じゃがこの世界には医者はいない
怪我は魔法で治るし魔素をたっぷり含んだ薬草は大概の病気を治すのじやから医療が発達する要素はあまり無いのじゃ
目の前の男、名はクスイというのじゃが、薬師と言うて生薬なんぞに精通しとる玄人じゃ
調合師というのは多分複数の薬を掛け合わせる人の事なのじゃろう
「嘆きの森、一度見てみたいもんだねぇ、どんなお宝が自生しているやら」
クスイにとってはワシらには雑草にしか見えん様なもんでも価値のある物に変わるんじゃろうな
「開拓が進んである程度の安全が確保出来たら喜んで招待しますよ」
そこらの雑草が富を生むなら願ったり叶ったりじゃわい
「そいつはありがたい是非頼むぜ」
そう言うとクスイはワシに木箱を渡す
「サンプルの角の礼じゃないがこっちもサンプルだ、自慢の調薬が幾つか入ってるから参考にしてくれ」
富山の薬売りみたいじゃのぅ、これも日本人の入れ知恵かのぅ
「では遠慮無く頂いていきます」
嘆きの森の木材で装飾を施せばこの薬箱、貴族の間で流行るやも知れんのぅ
というのが一瞬脳裏に浮かぶ
どうにも最近商売っ気が出てしまっていかんのぅ
まあ、預かった村が発展するのは良いことじゃという事にしておくとするかのぅ
「ところでこの薬って大量生産とか出来たりとかしますか?」
少々欲張りかのぅ
「大量生産ねぇ、質が落ちるから好きじゃないんだよな」
眉間にシワを寄せたクスイが言う
職人街で質より量を求めるのはやはりダメじゃったか
「値段下げられるから俺ら庶民にも使わせてくれるってんなら考えなくも無いがな」
クスイは困った様に言う
「村の特産にしたかったので最初からそのつもりだったのですが、何か不都合がありましたか?」
薬は何処かが独占、なんて話は聞いた事も無いのじゃがのぅ
「あんたには関係ない話だが前のクソ忌々しい代官が勝手に薬を独占してやがったんだ」
私腹を肥やしたか何か事情があるのか、これはこれで調べんといかんかのう
「法で許されて居るのでしたら此方で独占する気は無いですよ」
民の評判が良ければ領主もニッコリというヤツじゃ
「そいつはありがてぇが、やっぱりあんたらの村に工場作らせて貰えるとありがてぇんだけどな」
クスイの言う事も尤もではある
「解りました、検討してみます」
非戦闘員の安全を確保するにはまだまだ不安が残るのじゃがのぅ…
材木商のウドにも営業所を作りたいと前から言われて居ったし村に帰ったらソンとハモンに相談してみるかのぅ
ワシはクスイと何とも言えぬ約束を交わすと薬屋を後にした
後は細工師の所とパーパスのところに顔を出せば終わりかのぅ




