じじい異世界人と邂逅する
「王位…領主…?」
自己紹介を聞いたジュウゾウが絶句して思考停止する
「はい、貴族です」
ワシはぷりちーな笑顔で追い討ちを掛ける
最近ジョンの悪趣味なイタズラの気持ちが理解出来る気がする様なきがして来たのぅ
「宜しければ王宮にも販路を広げるなら紹介しますよ」
実際彼の作る皮製品がこんなところで埋もれているのが不思議でならんくらいじゃ
ワシにこの店を紹介してくれた兄ちゃんには感謝しかないのぅ
「ですが…」
ジュウゾウが二の足を踏む
何か訳ありかのぅ
「俺、異世界人なんです…俺の作るもんがスキルで作ったインチキな物だって相手にされなくて…」
成る程のぅ、持たざる者の嫉妬とでも言うのかのぅ
「インチキなのですか?」
ワシは敢えて傷口に触る
インチキかどうかなんぞ一目見れば解るという物じゃがのぅ
「とんでもない、日本…俺の居た世界ですが、そこで俺ずっと修行してたんです」
で、こっちに来てしまったから自分の腕で身を立てたいと
ワシと同じじゃな
「信じて貰えないですよね…」
力無く笑うジュウゾウの態度からこれまでの苦労と諦めを感じる
ワシは加護が有ったとは言え恵まれとったんじゃと再度確認させて貰ったわい
「信じますよ?」
ワシは近くにある革製のカバンを手に取り言う
「インチキがどの様な物かは私には解りませんが立場上良い道具は沢山見てきましたが、こんなにいい物が簡単に作れるとは私には思えません」
軽くて使う人の事を考え方て作られているのが容易に解るそのカハンはその良さを解る人に使って欲しい
孫くらいの年齢の若者の苦労は報われて欲しいって物じゃ
「もう一度挑戦して…良いんですか…俺…」
ジュウゾウの身体がかすかに震える
「挑戦?ダメですよ」
ワシは言う
その言葉を聞いたジュウゾウは呆気に取られる
「ソーディアスの王族は約束された勝利以外認めません、当然私の為に働いてくださる方にその道を整備するのは私の責務です、あなたはその道を迷わず走れば良いだけです」
それが一番大変なのじゃがのぅ
師匠と独立の事でまだはやいと言われた事で喧嘩になり工房を飛び出したところで時空転送転移に巻き込まれ飛び出した時に偶持っていた革細工の道具だけでここまで来て、異世界人であるというだけで迫害され続けた男は縁によってやっと陽の目を見る事になる
「ところで、鹿の角…買ってくれる人知りませんか?」
ワシの言葉にジュウゾウは現実に引き戻される
「あ…そ、そうですね、ウチでも使いますがボタンとかナイフの柄なんかに加工してくれる場所があるので、あと薬として珍重されてるんでそちらもまとめて紹介しますよ」
ジュウゾウは言う
使い方はワシらの世界と同じという事かのぅ
「ありがとうございます」
ワシはジュウゾウに例を言う
「あ、このカバンください」
ワシは手に持ったカバンをジュウゾウに差し出しそう言う
いや、普通に欲しくなったんじゃ
「あ、差し上げますのでそのままお持ち帰りください」
ジュウゾウは恐縮して言う
解っとらんのぅ
「ダメですよイシカワさん、ソーディアスの男なら胸を張って対価を取らなきゃですよ」
ワシはぷりちーな笑顔で笑って言うのじゃった




